おいしい日本再発見 in Ibaraki

東京から120キロ。知らなかった食材の国!発見

東京から120キロのほど近いこの土地に受け継がれてきた食材を求め、旅をするのは、水戸市出身の「ピアットスズキ」オーナーシェフ鈴木弥平さんと、「ビストロホリテツ」オーナーシェフ堀岡徹也さん、「サルヴァトーレクオモ表参道ヒルズ」統括シェフ藤崎亮平さん。
古代の人にとっても豊かな別天地気候風土を育む食材が点在する“おいしい発見”の期待を胸に出発した。

笠間の栗
日本一の栽培面積と生産量を誇る茨城県の中でも笠間市は、品質においても良質な産地として知られる。栗の出荷では普通、多品種を栽培して混ぜて出荷していたが、10年前から品種別に出荷。丸ごと使う、ペーストにするなど、品種ごとにどんな用途に向くかをアピールしている。

大洗まいわい市場
茨城県大洗町の「大洗まいわい市場」は、大洗周辺の生産者から自信たっぷりの優秀な茨城の味が集まる直売所。紫色の小ナス「パールクララ」に興味を示す藤崎さんに、「初めての素材は味を想像するのが 楽しいよね」と鈴木さん。

古代の人にとっても豊かな別天地 気候風土を育む食材が点在する

まず訪れたのは県中部にある笠間市。いたるところに栗畑が広がる。 「茨城県の栗の作付面積と生産量は 全国第1位。なかでも笠間はその中心地です」と、JA常陸笠間地区栗部会長の金子祥一さんが迎えてくれた。

金子さんは、代々続く栗農家の7代目。2ヘクタールの畑に800本、約10品種の栗を栽培している。「栗にはこんなに品種があるんですか」とシェフたちは驚きを隠せない。

奥久慈しゃも
純血のシャモ特有の闘争心を抑さえ、繁殖力と食味をつけるべく、名古屋コーチンとアメリカのロードアイランドレッドを組み合わせた。「冷凍ではなく生で調理してほしい」と伊澤さん。オスは歯応えが強く、かすかにスモーキー。メスは産卵のために脂肪を蓄えるのでオスよりも脂がのっている。

常陸牛
歩留A又はB等級かつ肉質が5等級と4等級で、茨城県常陸牛振興協会が認定したものを「常陸牛」と呼び、脂をしっかり蓄えた霜降りが特徴だ。まず導入牛舎で3カ月、肥育室で約20カ月。ストレスを軽減し、ムラなく餌を与え、5つの部位にきれいにサシが入るよう、ゆったりと肥育する。

古代の人にとっても豊かな別最北山間部の奥久慈しゃもと県が誇る常陸牛
ブランドに誇りを抱く生産者の心意気を知る天地 気候風土を育む食材が点在する

次に県北部ヘ向かい、辿り着いたのは茨城県最北端にある大子(だいご)町。なかでも栃木との県境に近く、秘境のムードすら漂う集落、上金沢が「奥久慈しゃも」の産地だ。イーシャモ農園の代表、伊澤孝文さんは、6年前、奥久慈しゃもの味に惚れ込み移住した若き生産者だ。

県が誇るもうひとつの食肉銘柄「常陸牛」は県全域で育つ。一貫して霜降りにこだわり、脂をしっかり蓄えた4、5ランクのみを出荷している。「赤身人気でA4のオーダーが増えていますが、A5を目指すからこそA4が出来るのです」と川井牧場の川井一浩さん。前夜、水戸市のフランス料理店「オーボン・ヴィヴェール」で初めて常陸牛を口にした藤崎シェフは、「牛の脂ってやっぱりおいしい」と、霜降りの魅力を再発見。新しいひと皿へのイメージを膨らませた。

魅力ある食材の産地がこんな近くにある。 ソバ、完熟リンゴ、ハーブが育つ土地へ

筑波山を望む平野部から山間の秘境まで、茨城県を縦断した今回の旅。シェフたちは、「近いのに知らなかった」と、茨城県の新たな魅力を発見していた。「もっと産地に目を向けて、料理人に出来ることを考えたい」と再訪を誓い、それぞれのキッチンに戻った。茨城県での体験を皿の上で表現するために。

常陸国の恵みをいただく 茨城県食材フェア開催!

今回の旅で知ったさまざまな食材の魅力と、真摯に取り組む生産者の思いを、3人のシェフがそれぞれ3品の料理に表現しました。各店をめぐり、フェア限定のメニューをぜひ体験してください。(2015年11月1日〜30日)

「食材の個性を活かして奏でた茨城満載のコースを」
ピアット スズキ 鈴木弥平さん

常陸秋そば粉のラヴィオリ
常陸牛フィレ肉の網焼き ヴィンコットソース 笠間栗のラスケーラチーズ添え
奥久慈しゃものテリーヌ リンゴのコンポート添え

「茨城産同士が味を引き立て合う 相乗効果を味わう」
ビストロ ホリテツ 堀岡徹也さん

常陸牛 シモタファーム たくさんのハーブの塩パイ包み 人丸のモンブラン 七会きのことぽろたんのグランメール
奥久慈しゃもムネ肉の低温キュイ
奥久慈しゃも砂肝とぽろたんのコンフィ 温かいガランティーヌ

「素材の魅力をシンプルに丸ごといただいてほしい」
サルヴァトーレクオモ 表参道ヒルズ 藤崎亮平さん

奥久慈しゃものアッロースト 有機ハーブの香るフォカッチャの上に
常陸牛のビステッカ
“秋映りんご” 〜トルタ・ディ・メーラ〜

「ピアット スズキ」
Yahei Suzuki 鈴木 弥平
ピアット スズキ オーナーシェフ
1967年茨城県水戸市生まれ。16歳より水戸市のフランス料理店で修行を積み、19歳で上京。4年間ホールを経験した後、料理人として「クチーナ・ヒラタ」に入社。92年に1年間のイタリア留学を経て、「ヴィノ・ヒラタ」のシェフに就任。 2002年に独立し「ピアットスズキ」を開く。

「ビストロ ホリテツ」
Tetsuya Horioka 堀岡徹也

ビストロ ホリテツ オーナーシェフ
1975年東京都生まれ。19歳で「東京會舘」に入社し、以来、都内有名ホテルで研鑽を積み、2009年「ザ・テラス高輪」のエグゼクティブシェフに就任。11年に渡仏し、一ツ星のレストラン「ラグルヌイエール」で修業し帰国。13年に独立し「ビストロホリテツ」を開く。休日は提携する自然栽培の畑へ通う。


「サルヴァトーレクオモ 表参道ヒルズ」
Ryohei Fujisaki 藤崎 亮平

サルヴァトーレクオモ 統括シェフ
1980年佐賀県佐賀市生まれ。イタリア料理店で食べたトマトソースのパスタに感動し、料理人を志す。居酒屋やカフェで飲食業を経験した後、上京。「ワイズテーブル」に入社し、「XEX代官山」などを経て、イタリアへ留学。帰国後は「サルヴァトーレ クオモ」銀座店、新宿店を経験し、表参道ヒルズ店を拠点に統括シェフになる。