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【ベトナム】庶民が暮らす市場の雑踏に佇むモダンベトナム料理店&バー


「ここで本当に合っているのだろうか?」スマホの地図が示すのは、ホーチミン中心街からほど近い市場の只中。地面に置かれた盥には生きた蟹が置かれ、中年の女性が立て膝をして巨大な牛肉の塊をさばいている。行き交うオートバイをかいくぐり、露天の隙間の看板にやっと「Anan」のロゴを見つけた。ベトナム人オーナーシェフ、ピーター・フランクリン氏に「なぜこの場所に?」と尋ねると、「ここにはリアルな生活がある。人々が生き、暮らす市場ほど、自分にインスピレーションを与えるものはない」という答えが返ってきた。

現在50歳、子どもの頃から料理好きだったフランクリン氏。母はかつて、中部ベトナムの自宅の居間を使って小さな食堂を営んでいた。フランクリン氏はベトナム難民としてアメリカに渡り、投資銀行に勤務する中で、世界の美食を食べ歩き、コルドン・ブルーで料理を学ぶ。銀行業務で十分な資金を蓄えた後、 2年前にこの場所にレストランとバーをオープン。フォーのスープはフランス料理のコンソメの手法で取り、サイドに添えられた鹿児島和牛のサーロインをしゃぶしゃぶのようにして食べたりと、 7種の牛肉の部位を異なった手法で調理して具にするなど、細部に至るまでこだわる。ベトナムの人々の日常食をモダンにアレンジしたお任せコースは140万ドン(約6536円)、目の前の市場のフォーの値段は100円~と考えると決して安くないが、外国人のみならず、ベトナム人の若者でも溢れる。

市場を眺めつつ、フォーに使うハーブ、さらにスモーキーさを出すためシナモンに火をつけてからマドラー代わりにするジンベースのカクテル等が飲めるバーエリア。

Anan Saigon
http://anansaigon.com/


仲山今日子
元テレビ山梨、テレビ神奈川ニュースキャスター。World Restaurant Awards審査員。シンガポールに6年間在住、現地グルメ誌にも執筆中。

本記事は雑誌料理王国第305号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第305号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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