あのレストランのパンがおいしい理由「メゾン・ド・タカ芦屋」


美食家たちが何度も通いたくなる
ブリオッシュで叶えるガストロノミー

日本人だからできる
フランス料理を表現

2007年に「メゾン・ド・ジル芦屋」がオープンして9年目。フランス・ノルマンディー地方のルーアンにある二ツ星レストラン「ジル」の唯一の海外支店のシェフとして腕を振るった髙山さんは、自身の名を冠したレストラン「メゾン・ド・タカ 芦屋」をオープンした。そのポリシーは、これまで本場フランスで修業を積んだ数々の経験がもたらした「日本人だからできるフランス料理」の表現だ。髙山さんのこだわりが、インテリアから食器にいたるまで散りばめられ、フランス料理でありながら和の温かみのある空間が演出されている。「私たちが提供するのは、おいしい料理はもちろんですが、非日常的な雰囲気が味わえる時間の提案をつねに意識しています」と髙山さん。そのためには、食通が何度も通いたくなる新しいメニューの提案や、ここでしか食べられないものがなければならないと考える。

細部にこだわってこそ、
料理×料理のマリアージュ

そのひとつに、レストランでありながらすべて自家製で提供しているパンが挙げられる。毎朝キッチンで焼き上げるバゲットと、丸パン、ブドウの天然酵母を使った風味豊かなカンパーニュ、そして常連客からも人気の高いブリオッシュ。通常、パンは好きなものを選んでもらうスタイルで提供しているが、たっぷりのバターと選りすぐりの卵を使ったリッチな味わいのブリオッシュは、フォワグラ料理とともに食べてもらうことを勧めているという。「濃厚なフォワグラソースに合うように、バターや卵の配分、軽くトーストした時の食感などこだわり抜いたブリオッシュです。料理そのものに感動してもらいながら、+αで楽しんでいただくためのひとつのメニューといっても過言ではありません」

食べるシーンにもこだわり
進化し続ける食への提案

レストランで食事をするということに限らず、日常的に食べることの感動を味わってもらいたいと考える髙山さんは、2016年2月に「たかやマルシェ」をオープン。サンドイッチやキッシュなど厳選した旬の食材を使ったお弁当から、焼き菓子、レストランでも人気のブリオッシュも1日6本限定で販売。さらには、今後ケータリングや料理教室などでレストランの味を食卓に届けていきたいという。さまざまな角度から食べることへの感動を与え、スタイルを提案することこそが、髙山さんの考えるガストロノミーなのだ。

髙山さんが考える「レストラン」のパンとは?

パンは付け合せではなく、ひとつの料理として考える
レストランが自家製でパンを作ることのメリットは、やはり料理との相性にぴったりと合わせられること。料理で使う食材やソースに、あと何が加わると新しい味や風味が楽しめるのか、パンは単なる料理の付け合せではなく、ひとつの料理として位置づけられている。

ソースにも馴染むスポンジのようなきめ細やかさ
濃厚な卵とバターをたっぷり使ったブリオッシュは、重たくなりすぎないよう、スポンジのようにふっくら焼き上げられている。風味がしっかりと感じられるよう、生地はしっとりしつつ、気泡を多くすることでトーストした時にサクッとした食感が残るよう計算されている。

「メゾン・ド・タカ 芦屋」の「ブリオッシュ」をポイント解説

全国からシェフが選び抜いた濃厚な厳選食材を使用
北海道のフレッシュバターと、東京のみどりショップの卵を使用。パプリカを食べて育った鶏の卵は黄身が濃く、色みは赤色に近い。

サックリ&フワッとが共存する厚さに切り分ける
1台6山の型で焼き上げるブリオッシュ。サーブする直前に軽くトーストし、表面
はサックリ、中はフワっとした食感にするため厚めに切り分けている。

コース料理の場合にはバゲット、カンパーニュ、丸パンの中から好きなパンを選んでもらうスタイルでパンをサーブ。フォワグラ料理をオーダーした人には、厚めに切ったブリオッシュを軽くトーストしてサーブしている。

たっぷりバターの風味としっとり感を徹底した温度管理で実現
1本に卵を19個使用しているブリオッシュは、中が黄色く、一見ケーキのスポンジのよう。かなり細やかな温度管理を徹底することでバターをたっぷり含ませ、風味としっとり感を実現しつつも、大きな気泡がサックリした食感も残している。

季節や湿度で変化するパンと毎日対話すること

「メゾン・ド・タカ 芦屋」パティシエ
江頭めぐみさん

「メゾン・ド・タカ 芦屋」パティシエ6 年目、コースのデセールやミニャルディーズを担当。髙山さんの発案で、自家製のブリオッシュを作ることになり、試作を重ね現在の完成形へと導いたのが江頭さんだ。「パンを作る環境が専門店のキッチンと違うので、今でもその日の湿度や気温に細心の注意を払い、毎日パンと対話しながら生地をこね焼いています」。パンの味が違うだけでコース料理が完全なものでなくなってしまうと考える江頭さんは、コースにおける重要なディテールをしっかりと支えている。

左上からカンパーニュ、ブリオッシュ、丸パン、バケット。パン目当ての常連客も多い。

Hideki Takayama

1977年福岡県生まれ。18歳からフランス料理の世界に入り2004年に渡仏。数々の名店で修業した後、2007年フランス・ルーアン
の二ツ星「レストラン・ジル」の提携店として、「メゾン・ド・ジル 芦屋」のシェフに就任。2016年1月、「メゾン・ド・タカ 芦屋」をオープン。

メゾン・ド・タカ 芦屋
Maison de Taka Ashiya
兵庫県芦屋市平田町1-3
☎0797-35-1919
●11:30〜13:00 LO、18:00〜20:30 LO
●月休(祝日の場合は営業)
●コース 昼4500円〜、夜8300円〜(税込・サービス料別)
●40席
http://maisondetaka.jp/

白石亜矢子=取材、文 瀧本峰子=撮影

本記事は雑誌料理王国268号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は268号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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