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「レストラン ラッセ」村山太一さんの冬の魚の使い方~関さば編~


サバの旨みを生かしつつ
ひと皿トータルで味わいを導き出す

調理学校卒業後、日本料理の世界で修業。25歳でイタリアへ渡った。それから7年半。最後にはロンバルディア州マントヴァ近くにある名店「ダル・ペスカトーレ」の副料理長を務めるまでになった。シェフ村山太一の技と味は、その頃に決定づけられたと言っても過言ではない。

【関さば】 標準和名サバ(鯖)
豊予海峡で漁獲され、大分県大分市の佐賀関で水あげされるサバで、高級ブランドとして知られる。生け締めにされるため、鮮度が落ちにくいという特徴がある。
写真提供:大分市観光協会

日本とイタリアの〝酢の文化〞を融合させて

今回のサバの料理も、当時の経験を生かした一品である。「もともとイタリアは、酢漬けや塩漬け、オイル漬けなど保存食の文化が発達している土地柄です。僕が修業をしていた『ダル・ペスカトーレ』のシェフ、ナディア・サンティーニも、よくウナギの酢漬けを作っていました。それに、酢はアミノ酸と素材の旨みを引き出してくれる働きもあります。今日のサバ料理は、イタリアの保存食文化と日本の寿司文化を融合させた感じかな」と村山さんは言う。さらに、酢には殺菌効果がある。サバは細菌がつきやすく傷みやすいので、酢漬けにして安全性を高める意味もあるのだ。サバは三枚に下ろして、2~4時間、たっぷりの塩に漬け込んだら、流水で塩分を取り、アップルビネガーに漬ける。「アップルビネガーに漬ける時間は、サバの状態によって調節します。脂がのっていれば少し長めに、それほど脂がのっていなければ時間を短めにしたり……。臨機応変です」
この段階で、漬け終わったサバを食べてみた。アップルビネガーのフルーティな風味とサバの味が口中に広がる。しかし、なんとなく味がぼんやりした感じ。その〝ぼんやり〟が、ひと皿になったときにモノを言う。酢漬けのサバに合わせたのは、イタリアンパセリ、ケッパー、ニンニク、アンチョビを合わせたサルサマントヴァーナ(マントヴァ風ソース)。アンチョビの塩辛さとケッパーの酸味が利いている。〝土台〟となっているのは、白パンを模した水ナスのバターソテーだ。バターは、村山さんが毎朝、1リットルの生クリームを攪拌し、手で成形して作るオリジナルだ。


「そのすましバターを使って、四角に切った水ナスをソテーします。バターはオリーブオイルよりも融点が高いので、素材への火の入り方がゆっくりなんです。だから、焦げずに火入れすることができる」バターソテーした水ナスの上に、酢漬けのサバとサルサマントヴァーナを乗せ、オクサリスやアマランサスなどのハーブと、バターでローストしたハスの種を飾る。「このハスの種、じつは僕の故郷・新潟のハス畑で採れたもの。レンコン栽培の副産物なんですけれど、これが生のアーモンドそっくりの味なんです。生のアーモンドに比べたらすごく格安なので、僕の回りのシェフたちにも人気なんですよ」鮮やかなブルーの皿に盛られた「サバの地中海風イタリアと日本の技術を融合させて」は、一見するとカナッペのようだ。


「手づかみで、ひと口でパクッと食べてください」と村山さん。お言葉に甘えて食べてみると、サバとサルサマントヴァーナの味がぴったりマッチして、みごとなハーモニーを奏でている。「それぞれがしっかり味を主張してしまったら、ひと皿になったときにまとまりがなくなってしまいます。そこが料理のさじ加減」と村山さんはニヤリ。「料理は、ひと皿になってテーブルに出たときが勝負」とでも言われているかのような構成力だった。

サバの地中海風 イタリアと日本の技術を融合させて
四角く切った水ナスを白パンに見立て、カナッペ風に仕上げた美しいひと皿。アップルビネガーでマリネしたサバのやさしい味わいが、アンチョビやケッパーを使ったサルサマントヴァーナと合わせることでグンと引き立つ。まさに、組み合わせの妙である。

text 山内章子 photo 依田佳子

本記事は雑誌料理王国第232号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第232号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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