【飲食店の法律相談所#1】寿司ネタだけを食べる客を出入り禁止にできる?


Q. 寿司のネタだけ食べる客を出入り禁止にできる?

寿司屋を経営していますが、最近、マナーの悪いお客さまが増えています。職人として一番許せないのは、ネタだけ食べて、シャリを残すお客さまです。うちはすし酢にも特徴がありますので、シャリも召し上がってほしいのですが、「どう食べようが客の勝手だ」と言われてしまいました。このようなお客さまを注意したり、今後の来店を禁止にしたりすることはできるのでしょうか。(60代 寿司屋大将)

A. お客さまは神様ではありません!法律上は対等の関係です

食事中のマナーは難しいところがありますね。ただ、法律的な立場でみてみると、そう複雑ではありません。飲食店での飲食も、法律上は、飲食店とお客さまの間で成立する立派な契約です。店は、お客さまに食事やサービスを提供し、お客さまはこれに対して代金を支払う、というのが、基本的な契約内容と言ってよいと思います。
そして、法律は、お客さまもお店も対等に扱います。決してお客さまを神様にしません。ですから、契約の内容は、お互いに自由に決めることができます。例えば、高級店はドレスコードを定め、店の雰囲気にあったお客さまだけを入店させることもできますし、食べ放題の店で頼みすぎて残したお客さまに、追加費用を請求することもできます。お店側としての対応は次の2つが考えられるでしょう。

❶ 食べ方などにこだわりがある場合、張り紙や入店時の説明で、お客さまにしっかりと了解してもらう。
❷納得してもらえない場合は入店をお断りする。


お店側としては、どのような契約を結ぶか、そもそも契約自体を結ぶかどうかを自由に決められますから、マナーの悪いお客さま、店の雰囲気に合わないお客さまに今後のご来店をお断りするのもひとつの方法でしょう。

飲食店専門弁護士 石﨑冬貴
1984年、東京都生まれ。神奈川県弁護士会会員。横浜パートナー法律事務所所属。飲食店法務を専門的に取り扱うほぼ唯一の弁護士。著書に『なぜ、飲食店は一年でつぶれるのか?』(旭屋出版、2018年)がある。

本記事は雑誌料理王国2018年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2018年9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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