自宅がまるでレストランに!照明家が語る居心地のいい色と光3つのポイント


「料理の光は、どのようにプレゼンテーションするか、また、その場を囲む人が楽しめて、くつろげるかが重要です」と、建築と光のエキスパート、照明家の角舘まさひでさんは言う。独立開業を目指すシェフたちに、店作りの前に知っておきたい「料理をおいしく見せる照明の基本」を聞いた。

<POINT 1>
素材の色を引き出し、活き活きと見せる「色温度」に注目して照明を選びましょう

・白っぽい光は、色温度が高い。野菜や魚をみずみずしく見せ、表面のツヤを引き出す
・赤っぽい光(ろうそくの炎に近い色)は、色温度が低い。肉の赤身を強調し、おいしそうに見せる

照明に詳しくなくても、蛍光灯やLED照明など、光源によって光の色味に違いがあることはご存じでしょう。照明を選ぶときに注目してもらいたいのはK︵ケルビン︶という表示。光の色味は温度と密接に関係しており、照明の世界では、光の色味を表す「色温度」という指標で表しています。これがKで、数値が低いほど温かな色味で、数値が高いほど白く、さらに青白い色になります。電球のように温かな色味の光は、日本人にとって落ち着いた雰囲気を作り出し、蛍光灯のような白っぽい光は、人の動きが活き活きとして見えます。

食材にも、実は最適な光の色味があります。精肉のような赤い食材には、赤い光を当てると鮮度が良く見えます。色温度で言うと約2700K。野菜や魚には、3500K程度の白い光を当てると、食材の質感が引き立ちます。レストランの照明を選ぶ際は、どんな空間で、どんな食材を使い、どんな皿を使うのか、最適な色味を知ることが大切です。

<POINT 2>
快適な空間を作る適切な光源を知り、照明を配置しましょう

・点光源は料理の表面をきらめかせ食欲を増進させる
・面光源は食器など流体形を美しく映しだす

さまざまな企業のCMを見てみても、おいしそうな料理は表面がキラキラと輝いています。水分を含んだものに、スポットライトのような発光部の小さい光線を当てると、光の映りこみでツヤが出ます。こうした光は「点光源」と呼ばれ、レストランでよく使われる照明の技法です。点光源は料理をおいしそうに見せる効果がありますが、それだけだと、コントラストが強調されてしまうので、ある程度広い範囲を照らす照明と併用して、色を見せてあげると良いでしょう。

面全体から発光する光源は「面光源」と呼ばれ、面光源の光は食器など流体形を美しく映し出しますが、全体がマイルドな印象になります。

レストランで点光源の吊り下げ式照明を使う時は、頭上に光源を置くと、光が皿に当たり、座った目線から料理が美しく見えます。また、点光源を一直線に並べて使うと、明るさを出しながら、スポットライトと同様の効果を得ることができます。

<POINT 3>
モノの色を正確に美しく見せるには「演色性(色の再現性)」がレストランでは特に重要です

・演色性を高くすると、モノの色が自然に美しく見える
・演色性の単位は Ra。Ra=85 以上の空間が理想

色温度と同様に、モノを綺麗に見せる上で大事にしたいのが、「演色性」という概念です。色の再現性を評価する値で、演色性が高いということは、モノを自然光の下で見るのに近い環境が構築できているということです。演色性は、太陽光や電球の光などの自然光の下で見た時と同じ色に再現する光源を満点の100に設定したRa(アールエー)という単位で表されます。色の見え方が重要な場所、たとえば美術館では90以上の演色性が望ましいとされ、一般的な照明器具でもRa80以上の商品が発売されています。レストランでも、演色性に気を使って照明を選べば、料理の色が美しく見えます。人の顔やインテリアも自然と見栄えが良くなり、料理を楽しむ居心地の良い空間が創りだせるでしょう。

イラスト:吾妻しょう

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東原じゅり=取材、文 パナソニック㈱=取材協力

本記事は雑誌料理王国2019年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2019年1月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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