料理王国厳選!また行きたくなる情熱のピッツェリア【関東編】


【東京・神谷町】ピッツェリア ダ ペッペ ナポリ スタ カ

ナポリ生まれの自負と心意気を唯一無二の星型ピッツァに込める

「ピッツァ職人はアーティスト」とオーナーのペッペさんは胸を張る。本場ナポリで培った経験と感性で自分にしか創れないピッツァを生み出す。焼き上げたのは、星型のピッツァ。これにはペッペさんの特別な思いが込められている。

 ナポリで伯父の店を手伝ううちにピッツァの魅力に目覚めた。10代半ばにはピッツァ職人になろうと決めていた。独立に際しては、「海外でナポリピッツァを広めたい」。その希望が叶えられたのは、同じナポリ出身で日本にナポリピッツァを根付かせたサルヴァトーレ・クオモ氏の情熱と努力があったから。

 星型のピッツァは、そんなサルヴァトーレ氏への感謝と尊敬の証。「ドン・サルヴォ(偉大なるサルヴァトーレ)」と名付け、これを氏に告げると、破顔して喜んでくれた。

日本人の好みを活かしたペッペ特製のナポリピッツァ

「ピッツェリアダペッペナポリスタカ」は、3年前の開店後すぐに繁盛店になった。1枚でマルゲリータとカルツォーネが楽しめる「ドン・サルヴォ」も、店の人気メニューに成長した。ただし、日本での成功には試行錯誤が必要だった。ナポリピッツァのもっちりした食感はそのままに、日本人の好みに合わせることも重要。生地の発酵時間を長くして少し軽めに仕上げたり︑塩を少なめにしたり︑食べやすい大きさにもこだわった。小麦粉は日本産のものとイタリアカプート社の2種をブレンド。モッツァレッラやトマト缶はイタリア各地を回って吟味し、輸入業者に頼んで仕入れている。

 アーティストとして作品を完成させるには、納得のいく素材が重要。モッツァレッラもトマト缶も、日本でペッペさんと同じものを使っている職人は誰もいないという。

「日本人は生地もチーズも、すべて完璧でないと納得しない。わがままね」と言いながらも、自らその課題に挑戦しようと闘志を燃やす。ソムリエでマネージャーの津田秋人さんは、そんなペッペさんのガッツに惚れ込んだひとりだ。「ペッペはしっかり者だから老けて見えるかもしれないけど、まだ30歳なんですよ」と笑う。

 そんな若きオーナーが、第二の「ドン」と呼ばれる日は必ず訪れることだろう。

ドン・サルヴォ
中央の丸い部分はマルゲリータで、周囲を取り囲む8個の三角部分はカルツォーネとして楽しめる。カルツォーネとは、ピザ生地にチーズやサラミ、トマトなどを挟み、折りたたんで焼いたもの。「ピッツァとカルツォーネを一体化させて、同時にほどよく火を入れるのは難しいんですよ」とペッペさん。

ピッツェリア ダ ペッペ ナポリ スタ カ
東京都港区麻布台1-11-4いんなあとりっぷビル1F
03-6459-1846

上村久留美=取材、文 富貴塚悠太=撮影


【東京・恵比寿】アンティーカ ピッツェリア ダ ミケーレ

マルゲリータ
一般的な生地よりも水分量が多いと言われるダ・ミケーレの生地。長時間発酵から生まれた生地のやわらかさ、モチモチの歯ごたえ、薪の香りが秀逸だ。マルゲリータは不動の人気ナンバーワン。チーズは本店指定のナポリから空輸した乳牛のモッツァレラを使用。

ピッツァは現地そのままに、他でアレンジ
ナポリの超人気店が日本でも成功した理由

恵比寿にあるナポリピッツァの専門店「アンティーカ・ピッツェリア・ダ・ミケーレ」は、東京で行列ができるピッツェリアとして、まず名の挙がる店だろう。2012年1月のオープン以来、ただでさえピッツァ激戦区の恵比寿をさらに盛り上げてきた。途絶えることのない人気の秘密は、ナポリそのものの味と雰囲気を堪能できる点。ピッツァ1枚の価格をナポリにある本店の価格に近づけるため、商社を介さず自分たちで食材を輸入するというコストへの努力も実を結んでいる。

日本の食スタイルに、どの程度合わせていくかを見極める

ダ・ミケーレを運営するのは、日本全国で飲食店の企画・経営を手がける「バルニバービ」。同社が手掛けるピッツェリアの成功例を知ったダ・ミケーレ側が、3年に渡るリサーチの末、直接コンタクトしてきたという。ピッツァイオーロとして料理長を務める疋田将也さんは話す「。本店には140年の歴史がありますから、小麦粉やトマトソース、塩、乾燥オレガノに至るまで、これでなければ同じ味にはならないというものが決まっています」

日本の湿度や気候に合わせた生地の微調整などは当たり前のこと。ここでは水の硬度も本店に近づけ、薪も同じブナ類でサイズも同じものを使い、本店と違わない味を目指す。もうひとつの課題は、ピッツァを食べるスタイルをどう考えていくかだという。ナポリではひとりでピッツァ1枚を食べてさっと帰る人が多い。一方恵比寿店では、前菜も頼みたいし、ワインも楽しみたいというゲストが多い。

「本店と話し合いながら、新たなメニューなども考えはじめました。ピッツァの種類も期間限定で増やしたりもしています。結果、お客様に好評で、日本のスタイルに合わせたのは成功でした」

とは言っても、ダ・ミケーレを支えているのは、マルゲリータとマリナーラである。「ですからあくまでも伝統を核に、他でアレンジすること。その判断力が店の個性につながる」と疋田さんは考えている。

マリナーラ
マルゲリータはモッツァレッラの自然な塩分を活かすため塩を加えないが、こちらの「マリナーラ」のソースには、ごく薄くスライスしたニンニクと海塩をよく効かせる。マリナーラが一番好き!というファンも多い。

アンティーカ ピッツェリア ダ ミケーレ
東京都渋谷区恵比寿4-4-7
03-5447-3800
www.damichele.jp

横田典子=取材、文 星野泰孝=撮影


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