食の未来が見えるウェブマガジン「料理王国」

Restaurant×Tech 「IMA cafe×ポアステディ」


お湯の量や温度、手さばきなどの職人技を忠実に再現

「見逃さないでください、この動きを。たまらなくかわいいでしょう?無くてはならない僕の相棒なんですよ」 天王洲アイル駅近くにあるアマナ本社内のIMA cafeで、専属のコーヒークリエイターとしてカフェを監修する中川亮太氏は、彼の相棒を目の前にして、目尻を下げながらこう話した。この相棒の正体とは、「ポアステディ」という名のコーヒードリップマシンだ。 シンプルな造形が美しいこのマシンは、ニューヨークのブルックリンで生まれた。開発したのは、コーヒーをこの上なく愛する、元NASAのエンジニアとロボット技術者の二人組。彼らがある人気コーヒー店を訪れた際、バリスタが3杯ずつ同時にコーヒーを淹れていたが、客の行列は長くなる一方。これをどうにか解決できないかと、お湯の量や温度、回し方、抽出回数などバリスタによって異なるドリップ技術を覚えて、忠実に再現できるマシンを作り出した。

IMA cafeの誕生は2017年10月。「ポアステディ」はオープン時から導入され、中川氏を支え続けている。「マシンの導入を決めたのはオープンの7ケ月前。カウンターの寸法や壁の色などはマシンに合わせてデザインしました。当時は日本での代理店がまだ決まっておらず、米国のメーカーと直接やり取りをしていましたね。これは日本で導入された第1号です」と中川氏。現在、日本では全国で25台が稼働している。 カフェにポアステディを導入した一番の理由は、ドリップ技術の高い再現性にあるという。「コーヒーを淹れながら、お客様とコミュニケーションを取るのは難しいんですね。マシンが自分のドリップを完全にコピーして再現してくれれば、同時に僕はお客様へコーヒーの情報を伝えることができます。コーヒーを飲む前に、味や香りの特徴や産地などをインプットしておくと、 おいしさや記憶への残り方が変わってくるんです」。

実際に使い方を見せてもらった。まずは中川氏自身がコーヒー豆を挽く。マシンにペーパーとドリッパ ー 、サーバーをセットして、一度ボタンを押すと、ノズルからペーパーリンス(紙の匂いを取る)のためのお湯が出る。サーバーを綺麗にして、ペーパーに豆の粉を入れて、もう一度ボタンを押すと、今度はドリップへ。ここで中川氏が覚え込ませたお湯の回し方や量、温度、抽出回数などドリップのレシピが再現される。

人とテクノロジーの共存が新たな価値を生み出す

「自分が10杯淹れると全て同じコーヒーにはなりませんが、このマシンが淹れると完璧に同じ。僕がいない時も同じクオリティのコーヒーを再現し、お客様へおいしさを伝えることができます。 ただ、 レシピを作り出すのは人です。フルオートマチックではなくて、あくまで人のサポート、相棒なんですね。このカフェでは、人とテクノロジーが共存することで、新たな価値が生まれています」

「ポアステディ」の抽出スポットは5つあるが、お湯を注ぐドリップ口は1つしかなく、瞬間的に横移動する。「この動きがかわいいんですよ」と中川氏。

text 笹木菜々子

本記事は雑誌料理王国2020年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年12月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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