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日本が誇るハーブでバジリコに革新を。伝統の上に成り立つ新しい一皿


伝統の上に成り立つ革新を日本古来のハーブで実現する

不変のレシピで味を守り続ける大変さは、長年、伝統料理に携わる料理人たちから多く耳にするところだ。しかし逆に、誰もが知るメニューに革新を生み出すのは、極めて高度な挑戦であり、難しい。その行為を “ペスト・ジェノヴェーゼ”でやってのけたのが、「Rossi」の岡谷文雄シェフだ。

 岡谷シェフがバジリコに代わってメイン食材に据えたのは、なんと木の芽。春先から初夏を代表する、日本が誇るハーブだ。「初めは“ばっけ味噌”(ふき味噌)のイタリア版を作ろうと思い、ふきのとうとグリーンオリーブのペーストを作ったんです。では次に木の芽では? と思い、やってみたのがきっかけです」と岡谷シェフ。そして同じ時季に旬を迎える鮎を加え、さらに冷製パスタ仕立てで季節感を際立たせた。

 余談だが、このパスタにはトピックがある。その昔、「リストランテ アモーレ」の故・澤口知之シェフは、岡谷シェフの手による“木の芽ジェノヴェーゼ”を食べたことがある。その際、「かつてイタリア海軍が日本駐留時代、バジリコの代わりに木の芽を使っていたという記事を何かで読んだ」とコメントしたというのだ。奇しくも、原点回帰。秀でたセンスは国境を越える証のような話である。

【レシピ】鮎のカルパッチョと木の芽のペーストの冷製パスタ 鮎のだしのジュレ 鮎ワタのパテ添え

口中に爽やかな風が通るような、見るからに清涼感漂う美しいパスタ。1人前のパスタ分量が少なめなのは、「量よりも香りに集中して楽しんでもらいたいから」と、岡谷シェフは語る。盛り皿もあらかじめしっかり冷やして用意したい。

材料(1人分)

フェデリーニ(乾麺1.3mm)……30g
鮎……半身
レモン……適量
塩……少々
木の芽のペースト……約30g
鮎だしのジュレ、鮎ワタのパテ……各適量

作り方

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  1. 鮎は三枚に下ろし皮を剥いで、身をキッチンペーパーなどでくるみ、半日ほど冷蔵庫に入れておく。
  2. 鍋に湯を沸かし、約1%の塩(分量外)を入れてパスタを茹で始める。製品袋の表示時間よりやや長めにタイマーを設定する。
  3. 1の鮎を冷蔵庫から取り出し、軽く塩をふってレモン少々を搾り、1cmほどのそぎ切りにして木の芽のペーストに加える。E.V.オリーブ油少々(分量外)とレモンを少々搾り入れ、和えておく。
  4. 茹で上がったパスタを氷水で締め、しっかり水気を切って 3 に加えて和える。あらかじめ冷やしておいた皿に盛り、鮎だしのジュレ(※)と鮎ワタのパテ(※)を添える。

※ 鮎だしのジュレ:三枚に下ろした際にはずした鮎の骨と頭でだしを取り、ゼラチンで寄せておく。
※ 鮎ワタのパテ:鮎ワタと叩いた鮎の身少々を、白ワイン、白胡椒を加えてオイル煮にし、冷蔵庫で冷やしておく。

下ごしらえ [木の芽のペースト]
※作りやすい分量
木の芽 …… 120g
グリーンオリーブ …… 150g
ケイパー …… 30g
実山椒 …… 20g
E.V.オリーブ油 …… 180ml

作り方
ミキサーに木の芽ペーストの材料をすべて入れ、撹拌する。

ロッシ岡谷文雄

岡谷文雄
1966年、岐阜県生まれ。89年に渡伊、2年の修業後帰国。「アクアパッツア」などを経て、93年六本木に「Rossi」を開業。99年より表参道「フェリチタ」総料理長に就任。 2011年、新生「Rossi」を麹町に開店。日本の素材を巧みに使う繊細なイタリア料理を生み出す。

Rossi (ロッシ)
東京都千代田区六番町1-2 B1F
TEL 03-5212-3215
火~木11:45~13:30 LO、平日18:00~23:00(土は~22:00)
日・祝休


text 中川節子 photo 鵜澤昭彦

本記事は雑誌料理王国2020年8・9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年8・9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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