アフターコロナに生き残る外食の形態とは?


コロナ禍による飲食店の変化について考える記事シリーズ、第4回目となる今回は、アフターコロナで生き残って行く外食はどんなものになるか、考えていきたいと思います。

これまでの記事でも述べてきましたが、今回のコロナ禍によって日本の外食産業は変化して行きます。飲食店全体の数は減り、そして居酒屋をはじめとする一部の業種業態は緩やかに衰退して行くことになるでしょう。生活様式の変化などから席数が多く、低単価で、多くのお客様を迎えて回転させるような業態は難しくなって行くと考えています。 そもそも、歓送迎会などの需要がここ数年減っており、居酒屋業態はコロナ禍前の時点で最多の倒産数となっていました。大人数での食事や宴会の機会が減っていたことが要因の一つとして挙げられます。コロナ禍によってそうした変化が加速された側面があります。

また、今回のコロナ禍による自粛期間において、自炊や中食の良さに気づいて習慣化された人たちも多いでしょう。そんな中で、私は、アフターコロナの日本の飲食店の業態は大きく3つに集約されると考えています。それは、

①インフラ的な食を提供する低価格メガチェーン

②寿司、天ぷら、うなぎなどの単一の料理に特化した専門店

③高付加価値かつコミュニティ化/ファン化ができているファインダイニング

の3つです。それぞれ解説していきます。

まず、①について。これには例えば松屋や吉野家、サイゼリヤなどをはじめとした低価格のメガチェーンが該当します。圧倒的な仕入れ力、オペレーションコストの削減などによって、自分で同じ材料を仕入れて作るよりも安いと感じるほどの低価格で食を提供しているこうしたメガチェーンは、労働力の代替、時間と手間の節約という文脈において、一部の人たちにとってのインフラ的役割を果たしています。なくなっては困る、というレベルまで人々の生活に食い込んでいるこうしたメガチェーンは、電力会社や水道会社に等しいインフラの一部として見ることができます。また、こうしたメガチェーンはその規模に応じて多くの雇用も抱えているため、産業全体の中でも果たしている役割が大きいと言えます。

次に②の専門店について。寿司、天ぷら、うなぎ、そば、うどん、ラーメン、カレー、焼肉、焼き鳥、お好み焼き、トンカツなど、単一の料理に特化した専門店系は、家庭での再現が困難であることや、それぞれの分野におけるコアなファン客層によって、比較的生き残りやすいと考えられます。もちろん、競合と比べて明確な差別化ができている店舗に限りますが、多様な料理を提供して差別化がされにくい居酒屋業態などよりは、各店舗の特色が出しやすく、それによる集客の戦略が考えやすいと言えます。

最後に③高付加価値のファインダイニングについて。高単価で客席数が少ないようなファインダイニングは、固定のファンが付いていることが多く、そうした固定のファンによるリピートで店舗の運営が成り立ちます。つまり、店舗継続に必要な必要顧客数が少ない業態であると言えます。不特定多数のお客様を集客して行くことが難しくなるシチュエーションにおいて、こうした高単価でファンづくりに成功しているようなファインダイニングは生き残りやすいと考えられます。ただ、ここ数年の東京はファインダイニングバブルとも言える状況が続いており、高単価のレストランが乱立している印象がありました。真にファンのコミュニティを作れているお店以外は淘汰されていくでしょう。その中で生き残ったファインダイニングは、ますます強固なコミュニティを形成していくことが考えられます。

また、上記①〜③には含まれていませんが、スナックのような「人」を中心としたコミュニティを形成できているお店も生き残りやすいと言えるでしょう。スナックなどで提供されるお酒やおつまみは、下手をすればコンビニで買える程度のものがほとんどです。それでもそういったお店に人が集まるのは、安らげる、所属できるコミュニティを求めているからです。そうしたコミュニティ化ができている業態は生き残って行くでしょう。

もちろん、ここに挙げたような業態だけになることはないでしょうが、集約が進むのは確実であると思います。外食産業における変化は、今後も注視していきたいと思います。

次回記事では、飲食店が生き残るための様々な方策について考察していきたいと思います。


文=周栄行(しゅうえい あきら) 1990年、大阪生まれ。上海復旦大学、NY大学への留学を経て早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行へ就職。独立後は、 飲食店の経営・プロデュースをはじめとして、ホテル、地方創生など、食を中心に幅広いプロジェクトに関わっている。


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