【スペイン】三ツ星を獲得直後に閉店を発表「ダニ・ガルシア」最終章


三ツ星を獲得直後に閉店を発表「ダニ・ガルシア」最終章

海の向こうにアフリカ大陸を望むアンダルシア・マルベーリャ。ミシュラン三ツ星を獲得してすぐさま、閉店を発表した「ダニ・ガルシア」を訪れた。テーブルの上に置かれていたのは、黒い箱。開くと内扉に三つの星が輝く、ミシュランのプレートのレプリカが入り、右には年表のように、その年のシグネチャー料理の名前が書かれていた。閉店発表後から提供されているのは、これまでのクリエイションを集約した特別コースで、作られた年が料理名の横に記載され、これまでの料理人人生の集大成、という気概が見て取れた。弱冠24歳で初の一ツ星を獲得し、あの「エル・ブリ」のフェラン・アドリアに液体窒素を使った料理を教えたダニ・ガルシアシェフは、初めて星を獲ってからの約20年を振り返る。

「三ツ星は自分の人生の目標だったが、それを保つには、毎日厨房にいなくてはならない。閉店すれば、三ツ星は永遠に自分たちのものになる。これからは14歳の娘や家族と、もっといっしょに時間を過ごしたい」。10月22日の閉店を間近に控えた今、「後悔や寂しさはなく、幸せに満たされている」という。ここはステーキハウスに改装し、その他のカジュアル店の運営も続ける。そして、閉店は三ツ星を達成した後の新たな挑戦である、と位置付けた。「人生は一度きり、もっと新しい料理の研究もしていきたい」。最近、40代でファインダイニングを引退するシェフが少なくない。それは、終わりではなく、新たな変革の時代への序章なのだろうか。


仲山今日子
元テレビ山梨、テレビ神奈川ニュースキャスター。World Restaurant Awards審査員。シンガポールに6年間在住、現地グルメ誌にも執筆中。


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