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【世界のレストラン事情】「和の鉄人」森本正治氏がオープンさせたドバイのレストラン(ドバイ)


オーナーシェフ、森本正治氏。彼の新店の準備は仕入れルートの確保からスタートする。

3代目「和の達人」から「NOBU NYC」の総料理長へ

2001年に独立してフィラデルフィアに自身のレストラン「モリモト」をオープンさせ、現在はニューヨーク、ラスベガス、ワイキキ、ムンバイ、東京など、世界に16店舗を展開している森本正治氏は、日本では1990年代に人気を博した料理番組『料理の鉄人』での3代目「和の鉄人」として、アメリカではこの番組の米国版である『アイアン・シェフ・アメリカ』に出演する「アイアン・シェフ」として知られる、世界的に活躍するセレブリティ・シェフである。18歳の時、子供の頃から目指していたプロ野球選手になる夢を断念して料理人としての道を歩み始め、1985年、30歳の時にロサンゼルスに移住する。

渡米後は複数のレストランを掛け持ちして働きながら修業を続け、現在もウエスト・ハリウッドで営業を続ける和食の老舗「マツヒサ」のオーナーシェフ、松久信幸氏と出会った。当時、松久氏は店の常連客で俳優のロバート・デ・ニーロ氏と共同経営でオープンする「NOBU NYC」の準備中で、森本氏はこの店の総料理長に就任する。1993年にニューヨークにオープンしたこのレストランは大成功を収め、のちに続く「NOBU」の世界展開の大きな原動力となった。森本氏の斬新な和食のアプローチはニューヨークのグルメたちの間で有名になり、この評判がきっかけとなって、前述の『料理の鉄人』への出演となったのである。

ロブスター、ムール貝、キングクラブなど海の幸をふんだんに盛り込み、じっくりとスパイシーな赤味噌で煮込んだ「シーフード・トーバン・ヤキ」。ブイヤベース風の人気メニューだ。

フィラデルフィアに進出現在は世界に16店舗を展開中

今年3月にはドバイのルネッサンス・ホテルに、2フロアを使った500席を擁する「モリモト」の新店舗がオープン。ホテルのシグネチャー・レストランとなっている。ドバイでも有数の素晴らしい夜景が満喫できる屋外席は大人気で、週末にはかなり混み合う。「スシバーがあるから日本食レストランにカテゴライズされるけど、カテゴリーに入らない料理が多いよ」と言う森本氏のコメントどおり、和をコンセプトにしつつも独創的なメニューが並んでいる。

料理はスタンダードとスペシャルに分けられ、後者はその土地の風土を反映した斬新な創作料理である。ドバイでは当然アラビックな要素が入る。森本氏は仕入れた食材や味付けを考慮して、和のコンセプトを用いながら、現地の人にとっても最高の料理をプロデュースするのだ。まず米は玄米で保存し、炊く前に精米する。そして食材には徹底的にこだわる。そのうえで、根底に「和風」というテイストがあるにせよ、これをどう提供するのか、煮るのか、焼くのか、たたくのか、既存の調理法には一切こだわらないという。料理に国境は「ある」と森本氏は話す。ある国ではご馳走でも、ほかの国では受け入れられないことも多い。サシミ・プレートにも、その土地に受け入れられるアレンジが必要になる。グローバルにレストランを展開する「モリモト」の強みは、まさにこの点に対する努力である。

シグネチャーデザートは、食べる直前に火をつけたラム酒をかける「チョコレートトラット」。
23階にある同店のテラス席から望むドバイの夜景。世界一高いビル「バージュ・カリファ」が望める。

Morimoto Dubai
RENAISSANCE DOWNTOWN HOTEL
23F&24F Marasi Drive, Business Bay,
Dubai, United Arab Emirates
+971-4-512-5577

19:00~24:00(土~水)
19:00~26:00(木~金)
www.morimotodubai.com

桑田英彦 (ライター/フォトグラファー)=取材、文
Hidehiko Kuwata
音楽雑誌の編集者を経て渡米。1980年代をアメリカで過ごす。帰国後は雑誌、機内誌や会員誌などの海外取材を中心に活動。海外のワイナリーを数多く取材し、著書に『ワインで旅する カリフォルニア』等がある。

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