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【世界のレストラン事情】終日ノンストップで食事ができるアーバン・ガストロノミー(ミラノ)


ミラノはヨーロッパの食都になった
早朝から深夜まで、上質な料理が食べられる
都会型ガストロノミーがミラノの最新トレンド

山田美知世 (ミラノ在住)=取材、写真

バカンス明けの9月6日、スターバックスの創業者で会長兼最高経営責任者のハワード・シュルツ氏が、イタリア初のミラノ店オープニングに登場し、この街への思い入れについて語った。さらに今秋、元国際見本市会場を改装した商業施設シティライフに、ハインツ・ベックのバール&ビストロ「アッティミ ATTIMI」、ガリバルディ地区にチプリアーニの名店ハリス・バー、ブレラのコルソ・コモ通りにはヴェネトのスターシェフ・アライモ兄弟がフィリップ・スタルクのデザインによるレストランをオープンさせるなど、ミラノは大物の出店が続いている。

2017年の統計によると、ミラノ圏の経済は、イタリアのGDP(国内総生産)をはるかに超え、経済成長に加えて失業率の低下など、実質的にイタリアを牽引している。なかでも飲食業界の経済は、就業率を含めてヨーロッパ全体でみても、ミラノが独り勝ちしているのである。

新聞スタンドを改装した新店

大物たちがオープンするミラノ店に共通することは何か--。

本店は、クラシックでラグジュアリーでも、ミラノではコンセプトや素材のクオリティを守るビストロスタイルで、価格も含めてカジュアルで入りやすい店となっている。

ビジネスミーティングや会食の多いミラノだが、ランチに長い時間はかけない。だが夕方、仕事帰りのアペリティーボ(食前酒)は「マスト」といった独特のライフスタイルがある。また、外食が多いミラノ人は、高級レストランに時々行くよりも、週に何度も外食することを選ぶ。目も舌も肥えたミラノ人は、カジュアルなスタイルであってもおいしくなければ通わないので、オープンラッシュの一方で、潰れる店が一定数あるのも事実である。

ミラノの一ツ星レストラン「コントラステ」の3人組マティアス・ペルドモ、シモン・プレスとトーマス・ピラスが、今春、ドゥオモ広場にほど近いエルクレア広場にあった古い新聞スタンドをリノベーションして、新しいスタイルの店「エグジット・ミラノ」をオープンさせた。終日ノンストップで食事ができるアーバン(都会的)・ガストロノミーというコンセプトは、瞬く間にミラノ人たちのハートをつかみ、注目の新スポットとなった。

30平方メートルの小さなオープンキッチンから、屋内30席、屋外20席のテーブルに料理が運ばれる。料理のヴァリエーションとオペレーションからは、キッチンが小さいなどとは感じられない。本店での実績を買われたクラウディオ・ロバイがキッチンを指揮。ヒゲが特徴的なオノフリオ・ビションテがホールを担い、店長でもある。さらに、食材は、本店がまとめて仕入れたものを使っているので、こだわりやクオリティは一ツ星と同じなのだ。

朝から上質なステーキも

ファッションショー、インテリアのサローネなど、年間を通してさまざまな国際見本市やイベントが開催されるミラノには外国人ビジネスマンも多く、ジェットラグ(時差ボケ)で、レストランの営業時間外に空腹を感じる人たちも少なくない。

彼らにとって、朝9時からおいしいオムレツや上質なステーキが食べられる店はありがたい。規模は小さくても、ワインはイタリア中心に、フランスのボルドー産やシャンパンを含めて、つねに200ラベルほどそろっている。早朝から深夜まで、いつでも好きな時にレストランの本格的料理を味わえることは、イージーでなくアーバンなスタイルだと言えよう。エグジット・ミラノは、新しい食のスタイルや楽しみ方を提案し、この店の成功を通して飲食の世界が新たな時代へ変わりつつあることを実感させる。(敬称略)

EXIT-MILANO
エグジット・ミラノ

Piazza Erculea 2 Milano
+39 02 35 99 90 80
●9:00~24:00(土のみ11:00~)
●日、祝休
https://exit-milano.com/


Michiyo Yamada
日本人で初めてイタリアの国家試験であるオリーブオイル鑑定士資格を取得。イタリア各地、ニューヨーク、東京の国際オリーブオイルコンテストの審査員を務める。


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