食の未来が見えるウェブマガジン

今、のりにのってる!焼き鳥屋10選 (前編)


東京・大塚 蒼天 南口店

焼き鳥と日本酒を徹底追及、職人の想いが随所にあふれる

大きな引き戸をガラリと開けると「いらっしゃい」と威勢のいい職人たちの声、あっという間に活気ある粋な空間に誘い込まれる。焼き鳥好きにはつとに有名な人気店だ。

どっしりと分厚いカウンターに落ち着くと、最初に出されるのが季節の素材を使った先付け2点と鳥団子汁、これが丁寧な味。焼き上がるまで、軽いつまみと温かい汁で酒を飲みながら焼き上がりを待ってほしいという心配り。一本ずつ出される絶妙な焼き加減の串は、食欲をそそる美しさ。「この一本に、俺たち職人の思いがこもっているんです」とは、店主の中俣照昭さん。「職人は肉を串に打つときに、焼き上がったときの脂や食感のバランスを計算しています。たとえば京鴨とミョウガの串は、鴨のうまい脂をミョウガが吸収しますから、ばらさずにそのまま頬張ってほしい」。日本酒は中俣さんが蔵元を訪ねるなどして厳選、焼酎も水で割ってある「前割り」を用意。ワインやおすすめのチーズまで揃い、焼き鳥を中心に楽しみ方が尽きない。

蒼天

「蒼天コース」内の焼きものから。単品などでもオーダー可能。手前右から時計回りに、京鴨とミョウガ、ほろほろ鳥のモモ、ほろほろ鳥の燻製手羽先、スカルモッツァチーズ焼き、金針菜(百合の花のつぼみ)、クランベリーとクルミのオリジナルパン(チーズ用)、レバー、ビッグマッシュルームの肉詰め。鶏は常に6種前後を用意し、この日の鶏は岩手ほろほろ鳥、高知土佐はちきん地鶏、大分豊のしゃも、名古屋コーチン、若鳥。通が好む希少部位の種類も豊富。

店主 中俣照昭さん
Teruaki Nakamata
1973年東京都生まれ。居酒屋や焼き鳥店で修業後、2004年に大塚駅南口側に「蒼天」を独立開店。翌年北口側に「蒼天北口店」を開き、 09年には南口店を拡大。和食店、やきとり店主などで結成された日本酒勉強会「酒狂會」のメンバー。

蒼天 南口店
東京都豊島区南大塚3-39-13
03-5944-8105
● 17:30~23:00LO
● 月休
● おまかせ5本セット1600円~、コース3150円~、串210円~。日本酒1合700円~

東京・飯田橋 金太郎

厳選の地鶏・銘柄鶏を正肉でじっくり食べ比べ

「鶏肉のうまさは、まずは正肉にあり」と話す店主の馬詰拓さん。店に男性ファンが多いのは、味はもちろん、この豪快な串ゆえだろう。「大ぶりの正肉に広島の藻塩をふり、高知の炭で微細に火を加減して焼きます。肉が大きいと肉汁もたっぷり味わえ、食感もはっきりわかるので、数種類食べ比べると、同じ鶏でもこんなに違うのかと驚かれる方も多いです」と馬詰さんは話す。1本の串も、先から順にモモ、ムネ、スネと3つの部位を打っているので、個々の食感の違いも比べられる。「出会える鶏は可能なかぎり味わってきた」という馬詰さんが、年間で扱う鶏は実に約30種。その中から毎日4〜5種ほど厳選して店に出す。また、中国料理出身でイタリア料理の経験もある馬詰さんらしく、鶏を使ったサイドメニューもおもしろい。「レバーパテや、鶏のスープを使ったパスタ、チキンライスなど、どれも鶏の旨味を味わえます」。

 ボリューム満点の店だから、しっかりおなかをすかせて訪ねたい。

金太郎

左から順に、旨味とコクが際立つ比内地鶏、しっかりした旨味の静岡一黒シ ャモ、適度な歯応えでジューシーな丹波黒鶏、食べ応えのある肉質で味わい深い東京しゃも、やわらかくてジューシー、店で人気の高い水郷赤鶏、旨味強め、脂が控えめでさっぱりした印象の京地鶏。焼いて皿に置いた瞬間から、たちまちジワジワと鶏の旨味たっぷりの脂がにじみ出てくるので、ばらしたりせず、焼きたてを串のままガブリといってほしいという。

店主 馬詰 拓さん
Taku Umazume
1968年高知県生まれ。調理師学校卒業後、中国料理、イタリア料理など経験後、和食店で焼き鳥に出会う。鍋などを介さず、炭火でじかに鶏を焼くおもしろさに開眼。 2005年「金太郎」を独立開店。故郷高知の食材も多く扱う。

金太郎
東京都新宿区津久戸町3-20
03-5228-2989
● 18:00~22:00LO
● 日休(祝日の場合、月休)
● 銘柄鶏串400円~、地鶏串600円~

東京・上野広小路 鳥恵

鶏への愛と情熱は、串に、酒選びに、器にも表れる

店主の小澤俊正さんは2店舗目を開くにあたり、まだ扱ったことのない、理想に近い鶏を探し回った。そしてやっと出会ったのが、滋賀県の淡海地鶏だ。「肉も脂も味が濃く、しっかりした肉質で、とくに肝などの内臓は味に力があります。でも数が非常に少なくて。一定数扱えるように、生産者になんとかお願いしました」。こだわりは鶏探しだけではない。「うちは焼き鳥と同じくらい、酒も主役」という小澤さんは日本酒の勉強会にも参加。毎年各地の蔵元を訪ねて仕込みを手伝いつつ、さまざまな造り手から酒を学ぶ。ワインは知人のソムリエ2名と厳選。焼き鳥をのせる皿は、若女将の里恵さんと一緒に自らの手で作った。自身の焼き鳥職人としてのモットーは、「修業した店の師匠に言われた﹃とにかく一生懸命、心を込めて焼け﹄のひと言に尽きます。でも、ときどき焼きに集中しすぎて、お出しするタイミングが早まって若女将に怒られてます(笑)」。こんな明るい雰囲気が、店全体に広がっている。

おまかせの5本セット。内容は日替わりだが、淡海地鶏と京鴨が入る。左から、ささみ、ねっとりした旨味の淡海地鶏の肝、淡海地鶏の正肉、京鴨、だんご。だんごのたれは、九州の甘味のある醤油に和三盆の原料である白下糖、ワインなどを使用し、コクはあるがしつこ過ぎない仕上がり。塩はミネラル豊富なモンゴルの岩塩を使用。ほかに希少部位のふりそで(手羽先の付け根)、さえずり(食道)、背肝(腎臓)などもあるが、早い者勝ちだ。

おまかせの5本セット。内容は日替わりだが、淡海地鶏と京鴨が入る。左から、ささみ、ねっとりした旨味の淡海地鶏の肝、淡海地鶏の正肉、京鴨、だんご。だんごのたれは、九州の甘味のある醤油に和三盆の原料である白下糖、ワインなどを使用し、コクはあるがしつこ過ぎない仕上がり。塩はミネラル豊富なモンゴルの岩塩を使用。ほかに希少部位のふりそで(手羽先の付け根)、さえずり(食道)、背肝(腎臓)などもあるが、早い者勝ちだ。

店主 小澤俊正さん
Toshimasa Ozawa
1977年東京都生まれ。大学卒業後、飲食業界に就職し、うどん店、和食店などで経験を積む。ある日訪ねた老舗の焼き鳥のおいしさに感動し、大塚「蒼天」で修業。2009年、湯島に「鳥恵」を独立開店。11年7月に2店舗目の同店を開店。

鳥恵
東京都文京区湯島3-40-8栗田ビル1F
03-3836-0211
● 17:30~22:00LO
● 日休(祝日の場合、月休)

東京・目黒 笹や

鶏も酒も、お客主体で楽しめる

「平日は勤め人や外国人の方が、週末は家族連れの方が比較的多いです」と話す店主の笹谷政文さん。扱う鶏は福島県の伊達鶏のみで、1羽丸ごとで仕入れる。肉質を熟知している鶏だから、唐揚げなどのサイドメニューを考えるのも楽しく、冬場は水炊きなどの用意もある。「焼き鳥から始まって、酒がメインになる方、サイドメニュー重視の方など、お客さまが自分流で鶏を楽しめる場にしたい」。最近では常連のお客の要望で、ゴッセ、テタンジェなどのシャンパーニュをボトルで提供。お客が個々に楽しみ方を見いだせる店だ。

定番人気の串より。左から、つくね、かしわ、ぼんじり、ししとう、レバー、ちょうちん(レバーと卵管、生まれる前の卵)。鶏肉はいずれも福島県の伊達鶏を使用し、やわらかい肉質と味のよさが特長。このほか、切って串に刺さずに一枚でそのまま焼き、皿で出す「食道焼き」600円や「ハラミ焼き」600円なども。「切って串に刺して焼くより、脂の味わいが残るんです」。

店主 笹谷政文さん
Masafumi Sasaya
1968年北海道生まれ。会社員を経験後、客として当時通っていた都内の焼き鳥店に入り、修業をスタート。その後も中目黒「鳥よし」などで修業。2006年、以前より土地勘のある目黒で「笹や」を独立開店。

笹や
東京都目黒区目黒1-24-6
03-5719-7627
● 17:30~23:00LO
● 日休(祝日の場合、月休)
● 串200円~。おまかせの場合は、満腹になったらストップ。食べた分の値段を払う。

東京・入谷 鳥昭

コースで定番部位のおいしさを再発見

炭火と串をにらみつつ、雑味の原因になる焦げは直ちにハサミでカット。焼き上がった串は整然と美しく、女性でも串ごとそのままでかぶりつきやすい大きさだ。メニューは本のコースのみ。店主の前嶋昭良さんは「追加で希少部位の用意はありますが、まずは定番の部位を味わってほしいんです。砂肝でも、うちは砂肝ガワを使って食感がおもしろいし、ハツも管まで付いたハツモトだから、今までのとは違う、と驚く方も多い」と話す。鶏を知り尽くした前嶋さんの串で、定番部位のおいしさを再確認したい。

鳥昭

串焼きコース9本。左から、ささみ、砂肝、れば、首肉、玉子、はつ、ねぎま、手羽先、つくね。鶏の銘柄は固定せず、おすすめの国産鶏を使用している。コースには、つきだし、サラダ、箸休めの大根おろし、お新香、スープが合間に出る。たれは、ればと玉子、ねぎまに使用。玉子のたれには鷹の爪を隠し味に利かせるなど、味の微妙なバランスも計算。

店主 前嶋昭良さん
Akiyoshi Maejima
1974年静岡県生まれ。都内居酒屋、焼き鳥店、鶏肉卸店などで修業し、食鳥処理資格も取得した鶏のエキスパート。2008年、入谷に「鳥昭」を独立開店。

鳥昭
東京都台東区入谷1-26-7
03-6325-8631
● 17:30~22:00LO
● 月、祝日休
● 串焼きコース9本3200円~、追加串250円~、グラスワイン800円~


本記事は雑誌料理王国第209号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第209号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


SNSでフォローする