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もしも世界に包丁がなかったら。 イル ギオットーネ 笹島保弘さん

イル ギオットーネ笹島保弘さん

もし料理人になっていなかったら、どんな仕事をしていましたか?
放送作家の小山薫堂さんが料理人の「もうひとつの人生」を聞き出します。

笹島保弘さん Yasuhiro Sasajima
1964 年大阪府生まれ。「ラヴィータ宝ヶ池」「イル・パッパラルド」などを経て、2002 年「イルギオットーネ」をオープン。現在、京都と東京に4 店舗を展開。代々木VILLAGE にあるレストランのプロデュースも手がける。

小山 笹島さんが料理人をめざしたきっかけは何ですか?

笹島 高校を卒業して、あるレストランでアルバイトをしました。それが飲食の世界へ入ったスタートですね。ちょっと洒落た店で、初めはサービス係でした。料理やワインをおすすめしながらお客さんと接することが、ものすごく楽しくてね。なんというか、大人の世界に仲間入りできた感じがしたんですよね。

小山 社会に出たんだ、という感じ?

笹島 そうです。世の中と交わっている実感がありました。それまでにもいろんなアルバイトをしましたけど、初めて、やりがいや責任感を感じたんです。それで専門学校に行くのをやめました。

小山 それまでは専門学校に行こうと?

笹島 ファッションデザイナーになりたかったんですよ。

小山 へー、そうなんですか!でも今ではきっぱり諦めたんですね。

笹島 いえ、今でも興味はあります。店やスタッフのユニフォームのデザインなど、全部自分でやります。クリエイトするという意味では、料理もファッションも似ています。些細なことでも気づきや工夫があること、これが新しいものを作っていくうえで大事だと思うんです。だから、僕はスタッフの格好をよく見ていますよ(笑)。

小山 私服をチェックするんですか?

島 忙しくても、限りあるアイテムの中でも、自分なりに毎日おしゃれをして来るスタッフのほうが、料理がうまいし勉強もするし、独立して成功しています。

小山 それはおもしろい!だから笹島さんもいつもおしゃれなんですね。ところで、話は戻りますが、接客係から、なぜイタリアンのシェフに?

笹島 そのアルバイト先でキッチンに異動になって料理のおもしろさに気づきました。そこでもっと専門的な勉強をしようと思ったんですが、フレンチはある程度でき上がった世界がすでにあった。だからイタリアンをと思い、数店で修業しました。そして1996年に「イル・パッパラルド」のシェフになり、2002年に京都で「イルギオットーネ」を開店しました。

小山 京野菜を使ったイタリアンというのは、斬新でした。

笹島 初めは日本の素材を一切使わなかったんです。でも和食の料理人さんたちに、「京都には地の食材と文化がこれだけあるんだから」と言われて考え直したんです。自分が身近に感じている素材を使わないのは、単なる意固地だろうと。

小山 京都の街と、和の料理人さんから学んだのですね。

笹島 僕自身、日本料理が大好きですから。ただし、どんな場合でも日本料理のレシピや技術解説は見ない・聞かないというのが僕のポリシーです。筍や鱧などを使って僕は新しいイタリアンを作りたい。こうした素材には確立された下処理の方法などがあって、それが味を決める。だから、そこから出られなくなってしまわないようにしたいんです。

小山 だからこそ「鮎のバーニャカウダ」が生まれるんですね!

笹島 そう言われるとうれしいですね。これからも新しい発想を大事にしていきたいです。

ファッションデザイナーになりたかった 笹島 保弘

つねに新しさを模索するのが笹島さんの〝スタイル〞小山薫堂

上の写真で笹島さんがはいているデニムは、ご愛用の「Dsquared²」のもの。笹島さんは、服もレストランも、作り手の意識が感じられること、つまり 〝手作り感〞 が大事だと言う。もし「Dsquared²」と笹島さんがタッグを組んでレストランを作ったら……なんて想像すると、とてもわくわくする。(小山薫堂)

MARUNOUCHI ILGHIOTTONE
丸の内 イル ギオットーネ
東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビル1F
● 03-5220-2006
● 11:00~14:00 LO、コース18:00 ~21:00LO
www.ilghiottone.com


小山薫堂
1964年熊本県生まれ。放送作家・脚本家。国際エミー賞に入賞した「料理の鉄人」「トリセツ」など斬新なテレビ番組を数多く企画。初めての映画脚本を担った『おくりびと』でも多数の賞を受賞。そのほかに、絵本の翻訳、小説の執筆、雑誌へのエッセイの寄稿など活躍は多岐にわたる。

井本千佳=構成/文、依田佳子=写真、陶山沙織=スタイリング
衣裳協力/眼鏡:オリバーピープル 東京ギャラリー(03-5485-2361)
撮影協力/JOHN(http://lmnow.blogspot.jp/)

本記事は雑誌料理王国第217号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第217号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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