「任せない」という選択が人を育てることもある
「カンテサンス」岸田周三さん
日本からも続々とスターシェフが登場した。これも平成の特徴のひとつだろう。その中には「カンテサンス」の卒業生も多い。岸田さんはその理由をどう考えているのだろうか。「分析は難しいのですが、『カンテサンス』では、一つひとつの作業にも、ちょっとしたオリジナリティーがあるんです。それに気づき、理解した人が成功しているように思います」。そこからチーム力も育まれていくと言う。
また、店のシェフである自分が「模範的な料理人になろう」とすることも大切と考える。「ビジネス書には、よく『仕事を任せることで人は育つ』と書かれていますが︑僕は逆です︒肝心な部分は任せない︒それがシェフとしての誠意であり、責任だと考えるからです」。安易に任せるのではなく、責任感を示し、やって見せることが、岸田イズムの原点なのだ。
シェフの役割はほかにもある。
「北欧の例から、料理が生み出す経済効果の大きさが証明されましたし、料理人は自らの発信力の大きさを自覚して、フードロスやサステナブルなどの環境問題とも向き合うべきだと思います」。現在、岸田さんは水産資源保護に向けて活動中だ。「平成は、『食』に関する問題が露呈した時代でもあったが、それを解決しようと活動する人も増えた。こうした活動は平成から次代へとつなげていきたいことのひとつです」
「カンテサンス」のおもな卒業生
川手寛康さん
「フロリレージュ」(2009年~)
小笠原圭介さん
「エクイリブリオ」(2010年~、現「オガサワラレストラン」)
本城昂結稀さん
「レストラン エス」(パリで2012年~)
辻 信太郎さん
「フレンチ サクラ」(2013年~)
加山順平さん
「マルゴット・エ・バッチャーレ」(2014年~)
目黒浩太郎さん
「アビス」(2015年~)
葛原将季さん
「レストラン レミニセンス」(2015年~)
加瀬史也さん
「オルグイユ」(2016年~)
春田理宏さん
「クローニー」(2016年~)
深谷博輝さん
「アルゴリズム」(2017年~)
上村久留美=取材、文 富貴塚悠太=撮影
本記事は雑誌料理王国295号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は295号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。