フランスミシュラン初の日本人三つ星シェフ 小林圭氏が御殿場にレストランを開店


2020年1月28日。フランスから飛び込んできた歴史的な快挙を、今も鮮明に覚えている人も少なくないだろう。「Restaurant KEI」の小林圭シェフが、フランスでアジア人として初のミシュラン三つ星を受賞した。あれから約1年。今年1月30日、御殿場の地に、小林氏のDNAを受け継ぐ新しいレストランが誕生した。創業500年の和菓子店、虎屋の18代目、黒川光晴社長と温めてきた10年来のプロジェクトが形になった「MaisonKEI」だ。

小林圭シェフ×「とらや」
DNAを受け継ぎ、芽吹く種

大切にしているのは、こんな世界観の共有だ。「料理とは、食材の命をいただき、人の命につなげていく『命を預かる仕事』」。長野出身で子供の頃から祖父母の畑を手伝い、実感を持って自然と向き合ってきたことが、「食材を尊重し、おいしいものを作る」という小林氏の考え方の根幹にある。ここ御殿場の地に開業することの目的の一つは、パリや東京とも違い、食材の生産地が近いことを活かした地産地消、そして地域の活性化だ。昼は3500円〜と少し贅沢な日常使いができる価格帯で、RestaurantKEIのシグネチャーメニューである庭園風季節のサラダや、焼津の「サスエ前田魚店」から届く金目鯛のうろこ焼きなど、料理で使われる食材のほとんどは地元静岡県産。またデザートには「とらや」の餡が使われている。「開店するのは簡単ですが、ここからが長いマラソンです。自分の目標は、この店も、パリも、世界一のレストランにすること。それは、三つ星やランキングという外的要因ではなく、お客様が『ここが私にとっての世界一のレストランだ』と言ってくださることです。三つ星も、私は『守る』のではなく、毎年『獲り』に行こうという気持ちでいます。そんな多くの人の挑戦が、何百年もの歴史を刻む街並みの中でも、パリをいつも新しく、魅力的にしてきたのだと思います。この御殿場に、挑戦を続けるための、最高の舞台を用意していただきました。そういう意味でも、御殿場もパリも、世界一を目指す同じチームなのです」。

庭園風季節のサラダ

挑戦は革新を生み出し、それが積み重なれば、伝統になる。革新的なスタイルの裏に伝統がある、と現地でも評されるRestaurant KEI、伝統という500年の革新を積み重ねてきた、とらや。一見、正反対のように見えて本質は等しい。MaisonKEIはそのDNAを受け継ぎ、ここから芽吹く種と言えるだろう。店を出ると、外は突然の雨。ふわりと雨に濡れた土の香りがした。

御殿場駅から車で10分ほど、広々とした敷地に、虎屋の建築を多く手がけてきた内藤廣氏の手による、木目を基調とした建物。客席からは富士山を望み、ガラス張りの厨房を見渡す明るい雰囲気だ。

Maison KEI
静岡県御殿場市東山527-1
TEL 0550-81-2231
11:30~13:00LO、17:30~20:00LO(火水休)

text 仲山今日子

本記事は雑誌料理王国2021年4月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2021年4月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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