「美食都市アワード2024」受賞5都市、発表!

帯広市

「食の王国」とも呼ばれる十勝エリアの中心都市。冷涼な気候、広い土地を生かした農業、畜産業、酪農、そこから生まれるベーカリー、豚丼、チーズ、スイーツなどの特徴的な食品は地域内外の多くの人を魅了する。オビヒロホコテン、北の屋台といった食べ歩き地区も充実。食と音楽のイベント「とかちマルシェ」も、毎年多くの人で賑わう。

帯広市が位置する十勝平野はジャガイモや小麦などの畑作や酪農・畜産が盛ん。大規模な畑や牧草地が連なる美しい風景も魅力。

鶴岡市

2014年に日本で初めて「ユネスコ食文化創造都市」に選定された鶴岡。出羽三山で育まれた精進料理、篤農家が引き継いできた多種多彩な在来作物など、長い歴史を持つ土地固有の食を保有する。「アル・ケッチァーノ」の奥田政行シェフを中心とする、産官学を巻き込んで地域の食を盛り立てるモデルは全国から注目の的。

鶴岡市の郷土料理の一つ、孟宗汁。掘りたての筍を味噌と酒粕で煮込む。孟宗竹は湯田川地区・谷定地区・早田地区などが産地。

金沢市

片町や三ヶ所の茶屋街など、景観も魅力的な個性ある食べ歩き地区を有する。加賀料理や料亭文化など伝統と格式のある食から、金沢カレー、おでんなど近年の名物まで、幅広い食を楽しむことができる。日本海の海産物も言わずもがなの名物。加賀野菜や魚介類が揃う近江町市場は地元の人々の台所であると同時に、大人気観光スポット。

市中に散在していた市を加賀藩が一ヶ所に集めて以来、300年以上の歴史を誇る近江町市場。加賀野菜や日本海で揚がる魚介が並ぶ。

京丹後市

「このしろ寿し」「へしこ」など魚の伝統発酵食品が豊富で、健康長寿(100歳以上の人口比率が全国平均の約3倍)との関わりが注目される。松葉ガニをはじめとする魚介類が豊富で。米、古代米、有機野菜の栽培や酪農も盛ん。地元の素材を独創的に仕立てる日本料理店「魚菜料理 縄屋」など、観光の最大の目的となり得る実力店も光る。

日本海に突き出す丹後半島に位置し、美しい海岸線が続く。間人(たいざ)ガニをはじめとする海産物が豊富な地域だ。

雲仙市

明治時代から外国人の避暑観光で知られる雲仙温泉の洋食メニューや、日本随一の高温を誇る小浜温泉のシンプルな蒸し料理が人気。40年以上、自然な農法、自家採取で農業を続ける岩崎政利氏に惹かれ、志を同じくする農家、野菜料理を追求するレストランが集まる。在来種野菜が豊富に揃う「オーガニック直売所タネト」も大人気スポット。

雲仙・普賢岳を取り囲むように広がる島原半島の雲仙市。雲仙温泉街では、温泉の蒸気で野菜や卵を調理する地獄蒸しが楽しめる。

観光客が楽しみ、市民が誇る「新しい美食」を生み出す都市を表彰

美食都市アワードは2024年3月、第1回目の受賞都市を発表。帯広市、鶴岡市、金沢市、京丹後市、雲仙市の5都市を顕彰した。

このアワードは、美食都市の定義づけと評価のあり方を研究してきた「美食都市研究会」と『料理王国』が共同で設立。委員長は、都市研究が専門で観光政策の立案にも多く携わる橋爪紳也教授(大阪公立大学)、副委員長は、観光学、特にガストロノミーツーリズムを専門とする尾家建生教授 (平安女学院大学)が務める。

橋爪氏はアワードの設立に際してこう語る。
「『美食』の領域で、地域という広い視野で魅力向上に尽力し、成果を出している都市を顕彰する独自の制度が、スペインなど諸外国にはあります。日本でも同種の表彰が必要だとかねて考えていました」。また「優れた食材がある、あるいは郷土食を継承しているだけでは『美食都市』としては充分ではありません」とも。では、何が求められるのだろうか。「風土を意識した新たな名物が常に創造され、世界中の観光客が憧れる料理店やレストランがあることが重要です」(橋爪氏)。地域の食を現代の感覚で突き詰めた、クリエイティビティが鍵となる。

そして「美食都市には美食街や話題となる店があり、魅力的な食のフェスティバルも開催されています。さらに、生産者や料理人への支援など、食に関する産業振興も自治体などが継続的に実施しています。こうした取り組みの結果、食文化に関する創意工夫が常になされ、新たな食のスタイルが提唱されるという好循環が生まれるのです」と語る。

尾家氏は「海外では美食は、観光都市間競争の中で存在感を示す上で欠かせない要素」と話す。しかし日本はまだそこまで美食と観光が融合しておらず、戦略作りに長けているとは言えない状況。「B級グルメで成功した街が美食都市、というイメージから進歩が必要です」。

そのために、このアワードでは、意図的に新しい食文化を作り、特徴的な政策をする行政がある都市などを積極的に評価していきたいと話す。「そういう都市が横連携して、世界に対して日本の美食は素晴らしいとアピールするところまで持っていきたいですね」と、橋爪氏。尾家氏は「最終的に大事なのは、市民の皆さんの食に対する誇りだと思っています。自分の住む地域の食が好き、誇れるという意識は素晴らしいもの。そこにつながるアワードでもあると思っています」と話す。

なお今回の美食都市アワード受賞5都市の審査にあたっては、美食都市に求められる10項目(食べ歩き地区の充実、その土地特有の食に対して意欲的なシェフやレストランの存在、生産者と特産品、フードフェスティバル、DMO・自治体の食への取り組みなど)を策定し、それをもとに作成した審査基準をベースに協議を重ねた。今年は審査委員から推薦された51都市の採点を行い、最終的に5都市がアワードを受賞。2025年からは公募を通じ応募された都市から同様の審査プロセスを経て、数都市〜10都市程度がアワードを受ける予定である。

「『美食』の提供に尽力している全国の生産者や料理関係者、『美食』を地域の魅力として訴求している行政や観光や商工業の関係者、そしてなによりも『美食』をわが郷土の誇りとするすべての市民の皆さまに、ぜひこの賞の意義を認識していただき、一緒に価値を高めていきたいと考えています」(橋爪氏)。

「2025美食都市アワード」推薦都市の募集を開始しました。
推薦はこちらのフォームからどうぞ。

text: Izumi Shibata