AIに勝つ 米田 肇


スタッフから見た肇さん像に意外な姿が見えてくる?

仲本 最後に質疑応答です。どうぞ。

--肇さんに憧れてイノベートを始めた人が多いですが、ほぼおいしくない(笑)。アドバイスをください。

米田 それこそコピーやから。B級の素材で真似するからです。料理に限らず、古典というのは伝統的で安定していて、学べば上達する。でもイノベーションって新しくて自由でルールがないから、よくわからない。表面だけ真似ても無理ですよ。

仲本 やりにくくなったことは?

米田 僕は楽になりました。やりたいことに近づくには、フレンチの枠が窮屈で。塩気が欲しいなと思った時に、味噌を使っていいのは楽ですよ。要は各々が好きな発想で、好きな料理作ったらええんちゃうん(笑)。

--肇さんにとってお客さまってどういう位置づけですか。

米田 僕自身、子どもの頃にレストランに行ってワクワクしました。キラキラして楽しくて「何これ! すっごい好きやわ!」と思いました。毎日その僕が来てると思っています。

--スタッフから見た肇さんってどうですか。弱点も、ぜひ(笑)。

三井葉月さん(ホール) 私たちの知らないことを全部知ってる人。弱点は忘れっぽい(笑)。でも怒られて凹んでも翌日出勤したら忘れてる。長所かも(笑)。

由良拓馬さん(ホール) これも表裏一体なんですけど、とても熱い人、厳しい人です。だから肇さんについて行けない人、わからない人にとってはしんどいだろうと思います。

仲本 元さんもどうぞ(笑)。

前田 最初に思ったのは、コンプレックスの塊かたまりやなあと。料理人のスタートが遅くて、怒られてばっかりで、努力でカバーした人。僕は要領がよすぎて大事な物を掴めてなかったんですが、叩き直された。肇さんって、要領いい人には見えへんもんが見えてるんですよ。世間では天才型やと思われてるけど努力の人です。

米田 その通りやなぁ(苦笑)。

前田 元さん
Motoi Maeda
MOTOI

米田さんは何にでも理由を付けて裏を取る。そんな料理人を初めて目にして「何なんやこの人! 」と前田さんは思ったという。今回は働き方改革の話に感銘を受けた。職人の手仕事を習得するには時間がかかり、そこに付加価値もある。肇さんの完璧な意見は「職人は制度を分けるべき」とする前田さんの持論を補強するもの。「肇さんの意見を業界みんなで支持し、行政まで動かすことができないでしょうか。料理人の未来がかかっています」。

Profile

1976年、京都府生まれ。「リーガロイヤル京都」の中国料理部門を経て、フレンチに転身。渡仏して1年間修業を積む。帰国後はホテルオークラ京都の「ピトレスク」、大阪の「HAJIME」などで経験を重ね、2012年京都市で「MOTOI」開店。ミシュラン一ツ星。
https://kyoto-motoi.com/

仲本章宏さん
Akihiro Nakamoto
リストランテ ナカモト

毎月1回、自店で勉強会を主催中。イタリアンを中心に、フレンチ、スパニッシュ、日本料理など幅広いシェフたちとSNSを通じて親交を深めている。災害時にはチャリティー活動にも参加しており、今回の参加費は参加者の意向からも災害義援金に全額募金を決めた。「初めての企画でしたが、皆さんの熱さに触れて感無量です。つい自分の聞きたいことばかり聞いてしまいました(笑)。料理人の未来について、考えることは山積みですね」。

Profile

1979年、京都府生まれ。調理師学校を卒業後、奈良県のイタリア料理店を経て渡伊。「エノテカ・ピンキオーリ」にて5年の修業を積む。ニューヨーク、東京・南青山「イル デジデリオ」スーシェフなどを経験。2011年、故郷の木津川市に「リストランテ ナカモト」を開店した。
www.ristorantenakamoto.jp

勉強会を終えて

勉強会終了後、参加者たちは自分の店に帰り、勉強会で得たものを、新しい決意に変え、未来に向かって歩み始めた。

藤田アキ=構成 畑中勝如=撮影
text by Aki Fujita photos by Katsuyuki Hatanaka

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