2024-02-24

熟成期間でここまで変わる。パルミジャーノ・レッジャーノの使い分けを学ぶテイスティングセミナー

料理講習会

2026年2月20日、パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会主催による料理家向けテイスティングセミナーが開催された。参加者22名は、熟成期間の異なるパルミジャーノ・レッジャーノを食べ比べながら、香りや食感、旨味の変化を体感。料理デモンストレーションでは、それぞれの特性を生かした活用法が紹介され、熟成による個性と用途に応じた使い分けの理解を深めた。

パルミジャーノ・レッジャーノの基礎と熟成の違いを学ぶ

冒頭で挨拶したパルミジャーノ・レッジャーノ チーズ協会日本広報事務局の田中賢吉さん

本セミナーは、パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会が日本で展開する取り組みの一環として開催された。同協会では、千年にわたり受け継がれてきた伝統や職人技の精神を、日本の武道や茶道に通じるものとして捉え、「パルミジャーノレッジャーノ道」をコンセプトに情報発信や教育活動を行っている。

左上から時計回りに12カ月、24カ月、36カ月熟成のパルミジャーノ・レッジャーノ

パルミジャーノ・レッジャーノは、イタリア北部の限られた地域で伝統製法により作られるDOPチーズで、最低12カ月以上の熟成が義務づけられている。

市場に流通する多くは24カ月または36カ月熟成のもので、約40kgのチーズ1玉を作るのに必要なミルクは約520リットル。長い時間と手間をかけて生み出されることから、“チーズの王様”とも称される熟成ハードチーズである。

チーズプロフェッショナル協会理事、「インフィニット酒ラボ」プロデューサーの圓子千春さん

圓子千春さんが講義を担当し、パルミジャーノ・レッジャーノの産地や歴史、製法、トレーサビリティなど、品質とブランドを守るための取り組みについて基礎から解説した。

熟成期間によって色合いや香り、食感は大きく変化する。こうした違いを体感するため、会場では12カ月、24カ月、36カ月熟成の食べ比べテイスティングが行われた。

12カ月熟成は削り、スライス、ブロックの3種で用意(左)。24カ月(右・皿)36カ月(右・ココット)はブロックで試食。

まずは12カ月熟成の香りを確認する。「フルーティーな香りの中にミルクやりんごのニュアンス。さらにヨーグルトのような軽い酸や、アイスクリーム、ホワイトチョコを思わせる甘い香りも感じられます」という説明に、目を閉じて香りを確かめる参加者の姿も見られた。

続いて、削り、スライス、ブロックと形状を変えながら試食。細かく削ると香りが立ち、スライスは舌の前方で溶けるため甘味を感じやすいという。ブロック状では自然と噛む回数が増えるため、旨味やコクをより強く感じられる。

「12カ月は水分が多く柔らかいので、口どけのよさが特徴。噛むとほろりと崩れ、わずかな酸味を伴う。若々しい味わいです」

24カ月になると、うま味とコクがいっそう増し、香りはより複雑に変化する。パイナップルを思わせる熟成香に加え、ナッツやビスケットのような香ばしさも現れる。甘味、うま味、酸味がバランスよく重なり、12カ月に比べて余韻も長くなる。

その豊かな旨味とバランスのよい食感から、料理への使用はもちろん、そのままおつまみとしても楽しめるなど、最も幅広く活用できる熟成段階といえる。

一方、さらに熟成を重ねた36カ月では水分感はほとんどなく、風味はより凝縮される。チューインガムのような発酵由来の香りに、スパイスやブイヨン、ロースト肉を思わせるニュアンスが重なり、バタースコッチのような濃厚な甘い香りも立ち上がる。

奥歯で噛むとジャリジャリとした食感があり、これはアミノ酸の一種であるチロシンの結晶によるもの。ほろりと崩れる口どけと濃厚な味わい、長く続く余韻が特徴で、ワインはもちろん、吟醸酒のような香り高い日本酒とも好相性だ。

熟成によって変わる、料理での役割

小枝絵麻さん。ナパヴァレー・ヴィントナーズ駐日代表、Culinary Institute of America 日本事務局代表、アメリカ大使館ATO専任シェフを務める。

では、それぞれの熟成は、料理の中でどのように生かされるのか。小枝絵麻さんによるデモンストレーションでは、熟成ごとの特性に応じた使い方と、料理の中での役割の違いが紹介された。

一品目は、12カ月熟成を使った前菜「パルミジャーノ レッジャーノとジャガイモの白和え」。

水分量が多く、ミルクの風味とやわらかな酸味を持つ12カ月は、素材となじませる使い方に適している。主張しすぎず、食材の味を引き立てながら全体にコクを加えることができるのが特徴だ。

シンプルな構成とすることで、ソースの中で感じるパルミジャーノ・レッジャーノの風味を際立たせた一品だ。

パルミジャーノ レッジャーノとジャガイモの白和え
新ジャガはシャキシャキ感を残すため、マッチ棒より細く刻み、塩と酢を加えた湯で30秒茹でて氷水に取る。水切りした絹ごし豆腐にオリーブオイルを加えてペースト状にし、パルミジャーノ・レッジャーノをたっぷりと合わせる。仕上げにホワイトペッパーを振り、白ワインとよりマッチする味わいに。

豆腐にパルミジャーノ・レッジャーノを合わせたソースで新ジャガを和え、チーズを“旨味調味料”のように活用する一皿。

「白和えのソースの中で、パルミジャーノ・レッジャーノの風味を感じてください」と小枝さん。

さらに、料理とワインの関係についても解説があった。ペアリングでは、食材の味の強さや調理法に合わせてワインの力強さを考えることが重要で、熟成が進むほど力強いタイプが適するという。

「試しに水と合わせてみると、パルミジャーノ・レッジャーノの風味をほとんど感じられません」。こうしたペアリングの考え方は、チーズの味わいをより引き立てるポイントにもなる。

パルミジャーノ・レッジャーノの外皮に加え、キャベツの外葉やニンジンのヘタ、セロリの根元など、通常は廃棄されがちな部分を活用。出汁はざるで濾して使用する。

二品目の「春野菜のパルミジャーノ出汁スープ」では、外皮を活用した出汁の取り方が紹介された。通常は廃棄されることも多い外皮だが、30分ほど煮出すことで旨味が溶け出し、穏やかなコクと奥行きのある味わいのベースとなる。

「外皮は熟成期間を問わず使えます。私は捨てずに貯めておき、まとめて使います。長時間煮出すと苦味が出るので、30分程度がベストです」と小枝さん。

春野菜のパルミジャーノ出汁スープ
みじん切りのニンニクと季節の野菜を炒め、軽く焼き色を付けて甘味を引き出す。パルミジャーノ出汁を加え、野菜がやわらかくなるまでゆっくり煮込む。仕上げにパルミジャーノ・レッジャーノを削って加える。24カ月熟成は水分と旨味のバランスに優れ、スープに溶け込みすぎず、香りと余韻を加えることができる。

仕上げには、旨味と香りのバランスに優れた24カ月熟成を削る。肉を使わないスープでは、24カ月のしっかりとしたコクを加えることで、満足感のある深い味わいに仕上がるという。

「出汁はチーズの色や香りがきれいに保てるので、事前に仕込んでおくことも可能です。工程もシンプルで、野菜もチーズも無駄なく使えるサステナブルなレシピです」

三品目は、メイン料理「クリスピーパルミジャーノチキン」。豊かなコクと香ばしさを持つ24カ月熟成は、加熱調理においても存在感を発揮する。

鶏肉は、旨味の強いモモ肉ではなく、チーズの風味を引き立てるために胸肉を使用。さらに隠し味にあんずジャムを加えることで甘味と酸味のバランスを整え、ワインとの相乗効果によってパルミジャーノ・レッジャーノの風味をより際立たせている。

クリスピーパルミジャーノチキン
鶏胸肉はカツレツ風に薄く開き、切れ目を入れる。隠し味にあんずジャムを塗ってアーモンド粉をまぶす。仕上げにパルミジャーノ・レッジャーノをたっぷりとのせて焼き上げる。パルミジャーノ・レッジャーノとベストマッチな甘めの白ワインとのペアリングを想定し、ソースはあんずジャムに生姜の千切りと白ワインビネガーを合わせた。

衣には粗く削ったパルミジャーノ・レッジャーノを使用。削り器を台に押し付け、力をかけて削ることで存在感のある粒状に仕上がる。端の部分は砕いたり裂いたりして加えることで、焼き上がりに食感のアクセントが生まれる。オーブンで焼き上げると、表面は香ばしくカリッとした仕上がりに。焼成時にできる部分は、チーズのせんべいのような味わいだ。

24カ月熟成のパルミジャーノ・レッジャーノは、料理の骨格となる旨味を与えながら、食欲をそそる香りと満足感をもたらす。調理から仕上げまで幅広く活用できる、最も汎用性の高い熟成段階といえる。

最後は、36カ月熟成を活かしたデザート「パルミジャーノチョコがけ」。

水分が少なく風味が凝縮した36カ月は、少量でも力強い存在感を発揮する。チョコレートの甘味にも負けない旨味と香りが、ワインとの相乗効果によってより一層引き立つ。

パルミジャーノチョコがけ
約50℃の湯煎で溶かしたダークチョコレートで、36カ月熟成のパルミジャーノ・レッジャーノのブロックをコーティング。フレーク状の塩、黒胡椒、クランベリーをトッピングして仕上げる。「レーズンやプルーンなどの濃厚なドライフルーツでは36カ月の印象が弱くなってしまうため、明るい酸味とジューシーさのあるドライクランベリーを合わせるのがポイントです」と小枝さん。

今回ペアリングされたフルボディの赤ワインのほか、バーボンやデザートワインなど、濃厚な食後酒との相性も良い。食事の締めに取り入れることで、コース全体の印象を引き締める役割も果たす。

「36カ月はチーズそのものが“主役”として楽しめる、非常に贅沢なチーズです。食事の最後に、特有の長い余韻を味わいながらグラスを傾けたいですね」

ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージ「カサル・ディ・セッラ」(右)
「クリスピーパルミジャーノチキン」に合わせた一本。引き締まった酸と塩味を思わせるミネラル感、アーモンドの皮のようなほのかな苦味が、24カ月熟成パルミジャーノ・レッジャーノの旨味と調和する。
バルベーラ・ダルバ「マッテオ・コレッジャ」(左)
「パルミジャーノチョコがけ」にペアリング。高い酸と穏やかなタンニンがチーズとチョコレートの脂をすっきりと切り、余韻に36カ月熟成パルミジャーノ・レッジャーノの旨味を引き立てる。

参加者が実感した、熟成ごとの個性

「パルミジャーノ・レッジャーノって粉チーズのように仕上げに使ったり、そのままかじることはありましたが、もっと自由に料理に活用できるのは目からうろこでした」
「実際に食べ比べると、熟成による違いがはっきり分かりますね」
「ワインをおいしく感じるためのチーズだと思っていましたが、チーズをおいしく味わうためのワインでもあると実感しました」
「12カ月を初めて食べました。もっと流通してほしいですね」

会を終え、参加者に感想を聞くと、熟成期間による味わいや香りの違いを想像以上に体感した様子がうかがえた。

熟成期間によって味わいが変化するだけでなく、料理の中で果たす役割も大きく異なるパルミジャーノ・レッジャーノ。

若い熟成は素材に寄り添い、24カ月は料理の骨格となる旨味を支え、36カ月は主役として深い余韻をもたらす。熟成ごとの個性を理解し、使い分けることが、このチーズの魅力を最大限に引き出し、料理の可能性をさらに広げてくれる。

≪パルミジャーノ・レッジャーノ チーズ協会(CFPR)≫
1934年に設立された、生産者291の乳業組合(デイリー)から構成される保護団体。指定地域の酪農家から集めた生乳のみを使用し、すべての生産はPDO(原産地名称保護制度)の規定に則って行われる。同協会は、パルミジャーノ・レッジャーノの品質保護、ブランド価値の向上、そして世界的な理解促進に取り組んでいる。*

*日本におけるすべての≪パルミジャーノ・レッジャーノ チーズ協会(CFPR)≫の活動はEU政府の助成と資金援助で行われています。

欧州連合規則 第1144/2014号に基づくプログラム101194314 ENSO-EU ― 欧州連合の共同出資による。※ EU規則1144/2014に基づくEU 支援の農産物販促事業です。

Photo・text: Yuki Kimishima

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