2023-06-22

カリナリーセミナー vol.1 クリマ ディ トスカーナ 佐藤真一シェフ

イベント・セミナー料理講習会

2023年3月29日に開催された「料理王国ACADEMY料理講習会」。今回のテーマ食材は、昨年9月に日本へ上陸したばかりの“幻の黄金トマト”こと「TIARLUM(ティアラム)」。講師には、tぃアラムをお店でも使っているイタリアンレストランの人気店「クリマ ディ トスカーナ(東京都文京区)」の佐藤真一シェフを迎え、ティアラムの味わいや特徴を存分に活かした全5品を披露した。

この日、会場に集まったのは約30名の料理家の皆さん。今回初めてティアラムを口にする人が大多数ということもあり、佐藤シェフの解説に熱心に耳を傾け、完成した料理とその味わいに興味津々の様子。「料理教室の生徒さんたちにぜひ紹介したい」と、入手方法や販売場所の詳細を問い合わせる姿も見受けられた。

幻の黄金トマト「TIARLUM(ティアラム)」とは?

南イタリア産で夏の間にしか収穫されない希少性から、市場に出回ることのなかった幻のトマト。高級ダッテリーノ(オレンジ種)の小粒トマトで、三井物産株式会社のアグリサイエンス事業部が日本人好みの美味しさを追求して開発し、2022年9月にトマト缶として日本デビュー。料理映えする鮮やかな黄色と、酸味が少なく濃厚な甘みと芳醇な香りが特徴だ。「本場の味を再現しやすい」と、イタリア料理のシェフたちからも好評を得ている。

なぜおいしい? 他のトマト缶との違いは?

通常のトマト缶は、コストを下げるため機械による収穫を前提に、硬めで果汁の少ない加工用に開発された品種が用いられている。それに対してティアラムは生食用の品種をハウスで栽培し、良い果実のみを手詰みで収穫している点も大きな違いとなっている。しかも、夏の時期に収穫された最も美味しい果実だけを収穫後3日以内に加工することで風味を残すことに成功。様々な料理に使いやすい添加物・塩分不使用のトマト缶だ。

冷製 バジル香るトスカーナ風パッパとトマトソルベット

まずは、ティアラムの黄色がそのまま生きたトマトソルベット作りからスタート。
材料はティアラム、水、ブラウンシュガー、トレハロース、水飴、レモン汁とシンプル。トマト以外の材料を合わせた後に、裏ごししたトマトを加えることで「よりフレッシュさが感じられるようになります」と佐藤シェフ。ジェラートマシーンに入れて固めれば完成だ。

「ソルベットのアレンジ方法として、スパイスやハーブを入れて香りを付けても良いですね。例えばバジルで香りを付けたソルベットにモッツァレラチーズを合わせて、オリーブオイルをたっぷりかけてカプレーゼ風にするのも面白いと思います」と佐藤シェフ。

ソルベットを固めている間に、乾燥パンを使ってパッパ作りを開始。パッパとは「トスカーナ風パンがゆ」のことで、トスカーナ地方のトマトを使った伝統料理。今回はバジルを入れることで、グリーンのパッパにトッピングされたティアラムの黄色いソルベットがよく映える仕上がりとなった。

黄金のトロフィエ 九条ネギとスルメイカ

次にティアラムを練り込んだ生パスタ、トロフィエの登場だ。まずは、2種類の強力粉をブレンドして塩、裏ごしティアラム、エクストラバージンオイルを混ぜて生地を作る。一度寝かせてパスタマシンにかけ、細長く切ったものを3cm程度の長さによじる。生パスタを得意とする佐藤シェフは、慣れた手つきで実際のトロフィエ作りを披露した。

この日の具材は九条ネギとスルメイカ。「当初は菜の花とコウイカの組み合わせを考えていました。トロフィエは魚介類やハーブと相性が良く、バジルペーストとよく合わせますね。シンプルなクリームソース、チーズソースもおすすめです」と佐藤シェフ。

サルシッチャのトマトスパゲティ

続いては、トスカーナ風トマトソース「ポマローラ」を使ったスパゲティだ。まずは、基本となるトマトソースのレクチャーからスタートした。

優しく火を入れながらニンニクとペペロンチーノの香りを引き出し、ニンジン、タマネギ、セロリを加えてよく炒めたら、ティアラムをホールのまま鍋に投入。バジルとタイムの香りも加えて、最後はジュースミキサーでなめらかにして完成だ。

今回は、具材に自家製サルシッチャをセレクト。仕上げにはグラナパダーノの粉チーズを使用した。「パルミジャーノ・レッジャーノだと野菜の味が持っていかれるので、ここではグラナパダーノを選んでいます」と佐藤シェフ。

高野豆腐とポマローラソース

続いては、同じくポマローラソースを用いたメイン料理。ここではポモローラにオリーブとケッパーを加えてさわやかな酸味も感じられるソースにアレンジ。肉ではなく高野豆腐を使うことで、ヴィーガンコースのメインとしても対応可能な一皿だ。

野菜出汁でやわらかく戻した高野豆腐は、表面に小麦粉をまぶして香ばしく焼き上げる。付け合わせにはスナップエンドウとタケノコで季節感を演出。ヘルシーでありながら、しっかりボリュームも感じられる一品が完成した。

ポモドーロの昔風パンナコッタ

デザートはティアラムを使った鮮やかな黄色のパンナコッタ。ゼラチンではなくコーンスターチを使って固める点が昔ながらのスタイルだ。生クリームと全卵でまろやかさとコクがありつつ、ティアラムのトマト風味もしっかり感じられる。レモンバームとバジルのソースを添えてフレッシュさが際立つ仕上がりに。

同じティアラム×バジルの組み合わせでも、1品目の「トスカーナ風パッパ」とはまた違った味わい。そのバリエーションの幅広さに、受講者は大いに刺激を受けた様子だった。

自身の経験による知識や実践的な技術を惜しみなく披露しながら、約2時間で5品を完成したさせた佐藤シェフ。
「ティアラムは冷やしても美味しく、煮込んでも美味しい」と、食材としての使い勝手の良さを高く評価しつつ、「味と香りも強いので、濾した後の皮から出汁をとり、乾燥させて粉末状にしたものを料理に振りかけるなどして使い切っています」と、余すことなく使い切る方法も惜しみなく伝授した。

コロナ禍を経て、この規模での開催がようやく実現した「第1回 料理王国ACADEMY」。今後も講師役のシェフを迎えながら、テーマ食材を深堀りした内容で開催される予定だ。

佐藤 真一(さとう しんいち)

「クリマ ディ トスカーナ」オーナーシェフ兼ソムリエ。1978年、青森県生まれ。1998年に20歳でイタリアに渡り、マントヴァの「ダル ペスカトーレ」や、フィレンツェの「エノテーカピンキオーリ」などで5年半修業を積み帰国。帰国後、南青山「リストランテ イルデジデリオ」の料理長を9年間勤めた後、2017年に独立。

クリマ ディ トスカーナ公式サイト
https://www.clima-di-toscana.jp

ティアラムについての詳細はこちら
https://www.tiarlum.com

text:田中 はなよ, photo:川上 尚見

タイトルとURLをコピーしました