2026-07-06

夏が旬のブータン産松茸。香り豊かで旨味が濃厚な松茸で調理を学ぶ 26年8月号

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生産者・第一線のプロフェッショナル・料理家の三者がたがいに刺激しあい、食を盛り上げようというこの企画。松茸は人工栽培ができず、中国や北米からの輸入に依存する現状。近年、香りが国産に近いとブータン産松茸に注目が集まっている。旬を間近に控えた、ブータン産松茸を使った調理のコツを東京・中目黒の「炎水」店主、伊藤龍亮さんに学ぶ!

世界一松茸を食べる日本人

この日、ブータン産松茸を学ぶべく8名の料理家が集結。日本は、世界の松茸の約七割を消費する“松茸
大国”だが、ピーク時には年1万トンあった収穫量も今や数十トンほどに激減。原因は里山の荒廃や赤松の減少、近年はクマ被害も深刻だ。

そうした問題を解消するのがブータン産松茸。7月末~9月一杯が旬で、金子コード(株)では収穫直後の新
鮮な松茸をマイナス60℃に冷凍し、一年中届けることができる。「松茸は秋の味覚というイメージを変えていけたら」とフードビジネスチーフマネージャーの米山千秋さん。

金子コード(株)の米山千秋さん。
金子コード㈱が輸入するブータン産松茸は、ヒマラヤ高地に自生するため虫害がほぼなく、また収穫地から国際空港まで近いために日本への即日空輸、2日後納品を可能にしている。トレーサビリティな体制がブータンには整っている。

「炎水」の伊藤龍亮さんもブータン産松茸に魅せられたひとり。国内外問わず、通常営業ではすべてフレッシュの松茸を提供している。今回はこの講習会のため冷凍を使って「ブータン松茸のお椀」「ブータン松茸のすき焼き」を作ってもらった。

約3年前からブータン産を使い始め、国産松茸と使い分ける伊藤さん。「海外から松茸を目当てに来訪されるお客さまも多く、とくに8月からの夏のメニュー、フレッシュ松茸の千切りぶっかけそばは絶品ですよ」と話す。
ヒマラヤ山脈の標高3000m付近に生えるブータン産松茸は虫喰いがほとんどなく、豊富な光を浴びて育つため品質が高く、その香りは国産に勝るとも劣らない。

まずは「お椀」のベースだしを、利尻昆布と鰹節でとる。「香りが穏やかなブータン産松茸を消さないように」少し鰹節を抑えるのがポイント。その間に冷凍庫から出して2時間ほどの松茸を水洗いして土を落とすが、このとき、温度上昇に伴って細胞が破壊され、だしが流出してしまうため「この魔の温度帯を短くするのが勝負」だという。薄めにスライスしてそのままだしへ、塩や醤油は入れず素材の相乗効果に任せよう。

研いだカンナで鰹節を削ると、羽毛のように軽くツヤのある削り節ができ、成分が溶け出しにくく繊細な香りに。「香りが強いので松茸に勝たないように」と伊藤さん。

続いて皮を剥いた蓮根をすり下ろし、ザルで水を切る。その後は鍋で加熱して粘り気が出るまでよく混ぜる。冷めてから形を作って揚げると蓮根餅に。焼いた白甘鯛と盛り付けてだしを張ればお椀の完成だ。

松茸と鰹だしの澄んだ旨味の「ブータン松茸のお椀」。蓮根餅、白甘鯛、青柚子とともに。

二品目「すき焼き」は割り下(濃口80g 、再仕込醤油80g 、上白糖90g )を合わせて火にかける。長ネギ、牛脂を入れればコクが出る。香ばしくなったら砂糖でキャラメリゼ。「割り下を多めに作れば、ブリの照焼、鶏の鍬焼き、何にでも重宝しますよ」と伊藤さん。松茸を割り下で炊き、冷めたら細切りにして牛肉で巻く。焼き豆などの食材と、調整した割り下を沸かして完成。伊藤さんにとって松茸は、主役としても名脇役としても光る食材。
「日本人のDNAに刻まれている風味だと思います。松茸なしでも成立する料理が劇的に良くなるからです。夏はブータン産、秋は国産と、使い比べを楽しみます」

「ブータン松茸のすき焼き」は北海道産アスパラと卵の相性が抜群。ゴボウの千切り、松茸を牛肉で巻いて食べるとさまざまな歯応えが楽しい一品。割り下に再仕込み醤油がない場合はたまり醤油でもよい。

伊藤龍亮 いとうりょうすけ

1982年、札幌市生まれ。武蔵野調理師専門学校を卒業後、20歳から東京の料亭や料理屋で計18年修行を積んだのち2020年12月、日本料理の基礎技術を大切にしたい想いを込めて炭火の「炎」とだしの「水」を組み合わせた「炎水」をオーナシェフとして開店。2026年度「ミシュランガイド東京版」二つ星掲載。

炎水
東京都目黒区中目黒1-5-12 ASTRO 1F
TEL 03-5860-7530
17:00-20:00(入店)、23:00(LO)
https://nihonryori-ensui.com/

金子コード(株) 事業統括本部Food&Beverage事業部
TEL 03-3777-3414
https://www.signature-ginza.com/pages/bhutan-premium-7-kin-no-matsutake

岡嶋美香

ブータン産の松茸はこれまでにも何度かお店でいただいたことがありましたが、今回のセミナーを通じてその美味しさの理由がブータンの気候や現地で採れてからわずか2日で空輸される鮮度の高さにあることを知りました。
また、冷凍品であっても香りや食感が損なわれず、美味しくいただけることにも驚きました。そこには、伊藤シェフの豊富な知識に基づいた下処理や調理の工夫が施されており、大変勉強になりました。
本日学んだことを取り入れながら、今後のレシピ考案に活かしていきたいと思います。

後藤初美

予想を大幅に上回る素晴らしい講習会でした。伊藤シェフが教えてくださる惜しみない技と工夫、ご自身が研鑽を重ねて獲得したことをさらっと教えてくださる懐の深さに感動しました。そしてお出しくださるお料理のボリューム感、せっかくだからと追加までしてくださるお心遣いとそのお人柄が、一流のお味がぴたりと重なりました。
今回は旬前ということで、特例的に冷凍松茸の扱いについて詳しく細かく教えていただき、向いている調理法などもアドバイスくださったおかげで自身の料理レシピを考案する上で大きなヒントとなりました。うま味を逃さないよう工夫したお料理になるよう試作を重ねたいと思います。素材がどのような状態であっても最善の美味しさを引き出すコツを学ばせていただきました。ご紹介いただいた水分を取るシートなども早速注文いたします。今回、国産松茸に負けない味わいのブータン産松茸のご紹介にも感謝いたします。使わせていただくのがとても楽しみです。国を挙げてのプロジェクトにご協力されている金子コード様の活動もまた素晴らしいです。こういった食材が広まるお手伝いになればと思います。

大橋ひろ美

ブータン産松茸を活かすための下ごしらえや出汁などの工夫による料理の味のハーモニーが素晴らしかったです。下ごしらえのコツ・出汁の取り方・道具のメンテナンスなど細部にもご指導いただき普段の料理にも活かせると、とても勉強になりました。「松茸は秋のもの」というイメージがありましたがブータン産であればあえて夏の食材と合わせるのも意外性があって面白いのではないかと思いました。また、料理の見せ方や食器選びまですごく計算されていて食事を楽しむ演出にも感心しました。そして何よりも食材をいかに活かすか常に研究されているシェフの料理に対する姿勢や温かくおもいやりのあるおもてなしにも感動しました。素晴らしい機会をいただきありがとうございました。

大前麗

収穫されてから日本のお店で提供されるまでわずか3日という、ブータン産の良質な松茸を新鮮な状態で輸入することに尽力されている金子コード様のお話しに感銘を受けました。伊藤シェフのデモでは、素材を最大限に生かす日本料理の調理技術を惜しみなく教えてくださり、凝縮した学びの時間でした。どのお料理も美しくやさしく上品。松茸料理の洗練されたおいしさを堪能させていただきました。

石松利佳子

ブータン産松茸が国産松茸に近いクオリティで香り高く、歯応えがあり、美味しいということに驚きました。今回はシーズン前なので、冷凍の松茸の処理の仕方など伊藤様に詳しく教えていただきました。冷凍の松茸は完全に解凍してしまうと香りがなくなってしまうので、2時間冷蔵庫で解凍し、手早く料理することが重要。今回いただいたお椀は松茸の芳醇な香りで、冷凍だとは思えない美味しさでした。すき焼きは松茸の歯応えによって松茸の美味しさを存分に味わえ、大変勉強になりました。この学びをレシピに活かしたいと思います。

小林一惠

今回は素材の面白さに惹かれて参加させていただきましたが、炎水の伊藤シェフの素材に対する深い思いや、その取り扱い方、味の引き出し方に至るまで、大変勉強になりました。さらに、細かな調理道具の扱い一つひとつが味に影響することも知ることができ、とても貴重な経験となりました。実際に生のブータン産松茸が入る時期にも、またそれ以外の季節の素材をいただきに、ぜひお店に伺いたいと思っております。

児玉ゆきこ

龍吟で修行され独立起業された伊藤龍亮オーナーシェフの洗練されたお仕事を拝見できる機会は貴重でした。ブータン産の松茸は、本当に香りが良く、うま味もあり、それを引き出す調理法を学ぶことができ光栄です。以前、松茸が高くなり、国産の松茸を冷凍して、美味しく調理できないか?と考えたことがありましたが、なかなかうまくできなかったことがあります。金子コード様の冷凍技術も凄いのだと思います。冷凍松茸を半解凍で調理することや風味豊かなお椀やすき焼きの美味しさの余韻がものすごくあり、感動致しました。ありがとうございました。

伯母直美

伊藤シェフの調理の素晴らしさ、ブータン産松茸を最大限に活かす素晴らしい調理法を学べました。もちろんお料理も美味しいく感動しました。またぜひお店に伺いたいと思います。ブータン産松茸は初めて知りました。空輸で最短に届き、鮮度が良く美味しく日本でもいただけるのは、嬉しいものです。冷凍松茸が届き、レシピ開発に取り組めることを楽しみにしております。

text : Seoto Hosoguchi photo : Naomi Kawakami

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