2026-07-06

生きたまま届くから新鮮なおいしさ。「泳ぐホタテ®」を味わいつくす 26年8月号

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岩手三陸から届いたトロ箱から聞こえるガサゴソ音。水温や環境の変化に弱いホタテが、100%生きたまま届くから「ホタテってこんなにおいしかったんだ!」と感動が生まれる。秋田の会員制料理店たかむらが手がける「たかむら別邸やまじん」の髙村宏樹シェフに、新鮮なホタテの最高の活かし方を学ぶ。

ワカメ販売業者だったヤマキイチ商店がホタテを扱い始めたのは1990年代のこと。三陸の新鮮なホタテに慣れ親しんでいた創業者の君ケ洞幸輝さんは、関東の市場で活きのよいホタテが売られていないことに衝撃を受け、「本当においしいホタテを全国に」と試行錯誤の結果、たどり着いたのが「泳ぐホタテ®」だ。

泳ぐホタテ®とは?
三陸のヤマキイチ商店の看板商品であり、浜値日本一のホタテのなかでも大きさ・活き・重さの優れたものだけを厳選、生きたまま食卓へ届ける。貝柱が大きく育つ2年目のホタテを扱うため殻が薄く、身が厚いのが特長。ホタテの元気な姿に、子供から一流店まで全国にファン多数!

水揚げされたホタテを専用生け簀で管理しており、綺麗な海水を吸わせ内臓までリフレッシュしたホタテを1年中出荷できる。さらに貝の大きさ、鮮度、歩留まり(貝全体の重さに対する貝柱の割合)という三大要素が揃った浜値日本一のホタテだけを厳選、生きたまま発送する。動くホタテはSNS時代にもマッチし、ホタテのイメージ底上げや食育にも貢献していると言って過言ではない。

この日、「泳ぐホタテ」を活かす調理法を教えてくれたのは、江戸料理の髙村宏樹シェフ。華美でも派手でもない料理をモットーとするシェフは、「本当に良い素材は、焼く、煮る、揚げる、炊くの基本で十分なんですよ」と、「ホタテのバター焼き」「ホタテとアスパラのしんじょう磯辺揚げ」「ホタテめし ひもの吸い物」の三品を献立てくださった。

新鮮でなければできない「ホタテの卵巣の刺身」はごま油と塩で食べるとレバ刺しのようなとろける食感と甘味。

ホタテの掃除と仕分けを済ませ、ご飯と吸い物に使うだしをとる。貝ヒモをサッと茹でたら、酒とヒモを沸騰させる。このとき「醤油で色をつけ塩で味を整えると失敗しない」という。白米、雑穀米、ヒモを釜にセットし、だし汁で炊く。

貝殻の平らな側にヘラなどを入れ中身を取り出す。キモに指を掛けて、グルッとはがすと簡単に貝柱とヒモに分かれる。ヒモは食べられない部分だけ捨て、残りは塩水で洗い、ヌメリを取っておく。「ウロ」と呼ばれる黒い肝も食べられるのは新鮮だからこそ。
吸い物はまず酒とヒモだけを鍋に入れ火にかける。そして醤油で色をつけ塩で整えることで澄んだ出汁ができる。「分量ではなく身体で決めるのが大切」と高村シェフ。
「ホタテめし ひもの吸い物」。炊いたホタテと生の貝柱、ふたつの歯ごたえのコントラストに思わず「その手があったか!」と感動する参加者も。

「しんじょう」は、高村シェフおすすめの「マルキンのすりみ」、山芋、昆布だし、ホタテをフードプロセッサーにかけ、アスパラを小さく切って混ぜ合わせる。一口サイズに海苔で巻き、カリッと揚げたら完成だ。

しんじょうはすり身140g、すりおろし山芋50g、昆布だし約15mlにホタテを加えフードプロセッサーにかける。
「ホタテとアスパラのしんじょう磯辺揚げ」。山芋が両端からぷくりと膨らむさまが可愛らしく、すり身とホタテの甘みの掛け算にうなる一品。

最後の「バター焼き」は、片面にコショウ、塩の順で振り、小麦粉をたっぷりはたいて水分はしっかり拭く。卵水にくゆらせ極細のパン粉を使うことで、余計な油を吸わず、胃がもたれない。大量の有塩バターでフライ状に揚げたら完成、外は香ばしくサクッと、なかは半生の甘みに一同うっとり。

「ホタテのバター焼き」はわらびのペースト、すだち、ヤマモモを添えて揚げ物とのバランスを取る。自然な野性味が、あくまでもホタテ本来の旨味を引き出す仕掛け。

髙村シェフはたびたび「分量で考えないこと」と話す。暑い日には体が塩味を求めるように、条件によって正解は変わる。素材の力を信じて大きく構えることと、その日その瞬間の差異を読み取る集中力、ふたつのアプローチをシェフの姿から教わった一日だった。

髙村宏樹 たかむらひろき

1971年生まれ。江戸料理の名店「太古八」で若くして板長を務め、28歳で故郷の秋田市に「たかむら」を開業。2017年農林水産省「料理masters」ブロンズ賞受賞。2024年麻布台に「たかむら別邸やまじん」を開店。

たかむら 別邸やまじん
月に10日程度しか開かない秋田の会員制の日本料理屋「たかむら」が手がける。
東京都港区虎ノ門5-3-3神谷町プレイス1F
TEL03-6809-1608(完全予約制)
一部 17:30-19:30 二部 20:00-22:00

(有)ヤマキイチ商店
TEL0193-26-5749
https://www.yamakiichi.com/

長坂美奈子

日本人なので日本料理は身近でありますが、人にお出しする料理という視点で見ると敷居が高く感じてしまうのも事実。しかし、高村さんの気さくなお人柄のおかげで、緊張することなく楽しく学ぶことができました。ヤマキイチ商店様のホタテも今まで食べたホタテの中で一番立派で驚きました!
日本料理の奥深さも改めて感じた日とりました。

伊藤くみ

まずは、ヤマキイチさまのホタテの立派さに感激です。このタイプは築地で探すのも難しいので、いざという時に使いたいと思いました。そして高村シェフの料理講座は、江戸料理のシンプルさをベースにおもてなしの料理として、学びが多かったです。貝の剥き方から、パン粉のつけ方、揚げ方、出汁の使い方、湯通しのタイミングなど、勉強になりました。惜しみなく優しくご指導くださり、終始心地よく過ごしました。お人柄を含めて、お店のファンが多いのがよく分かりました。

大塚沙耶香

今回​「ヤマキイチ」さんの丁寧にホタテの質を追求する姿と、江戸料理人の高村シェフの丁寧な手仕事に大きな刺激を受けました。
特に​絶妙な火入れによって引き出されるホタテの圧倒的な甘みとうま味の表現には、深く感動いたしました。素材の旨味を最大限に引き出す技法や姿勢がとても学びとなる素晴らしいお時間でした。”

イング百合子

“泳ぐホタテ”は、はじめていただきましたが、大ぶりでぷりっとした食感と、噛むほどに広がる甘みがとても印象的でした。
鮮度管理への強いこだわりについてのお話を伺った後にいただいたことで、そのおいしさにより深く納得できました。今回は、異なる調理法でホタテをいただきましたが、それぞれで違った魅力が引き出されていて、素材の力強さを感じました。
特に、ほたてめしの炊き込みと混ぜを合わせた火入れによる工夫は感動的で、一流料理人の技術によって素材の持ち味がさらに際立つ様子を間近で学ぶことができ、大変勉強になりました。

伯母直美

江戸料理ということで構えていましたが、高村シェフの丁寧でリズミカルな説明で、とても楽しくお話が聞けました。なかなかお会いして簡単にお話をお伺いできる方ではないと思いますが、おかげで(勝手に)距離を近く感じてました。

text : Seoto Hosoguchi photo : Naomi Kawakami

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