岩手三陸から届いたトロ箱から聞こえるガサゴソ音。水温や環境の変化に弱いホタテが、100%生きたまま届くから「ホタテってこんなにおいしかったんだ!」と感動が生まれる。秋田の会員制料理店たかむらが手がける「たかむら別邸やまじん」の髙村宏樹シェフに、新鮮なホタテの最高の活かし方を学ぶ。
ワカメ販売業者だったヤマキイチ商店がホタテを扱い始めたのは1990年代のこと。三陸の新鮮なホタテに慣れ親しんでいた創業者の君ケ洞幸輝さんは、関東の市場で活きのよいホタテが売られていないことに衝撃を受け、「本当においしいホタテを全国に」と試行錯誤の結果、たどり着いたのが「泳ぐホタテ®」だ。

三陸のヤマキイチ商店の看板商品であり、浜値日本一のホタテのなかでも大きさ・活き・重さの優れたものだけを厳選、生きたまま食卓へ届ける。貝柱が大きく育つ2年目のホタテを扱うため殻が薄く、身が厚いのが特長。ホタテの元気な姿に、子供から一流店まで全国にファン多数!
水揚げされたホタテを専用生け簀で管理しており、綺麗な海水を吸わせ内臓までリフレッシュしたホタテを1年中出荷できる。さらに貝の大きさ、鮮度、歩留まり(貝全体の重さに対する貝柱の割合)という三大要素が揃った浜値日本一のホタテだけを厳選、生きたまま発送する。動くホタテはSNS時代にもマッチし、ホタテのイメージ底上げや食育にも貢献していると言って過言ではない。

この日、「泳ぐホタテ」を活かす調理法を教えてくれたのは、江戸料理の髙村宏樹シェフ。華美でも派手でもない料理をモットーとするシェフは、「本当に良い素材は、焼く、煮る、揚げる、炊くの基本で十分なんですよ」と、「ホタテのバター焼き」「ホタテとアスパラのしんじょう磯辺揚げ」「ホタテめし ひもの吸い物」の三品を献立てくださった。

ホタテの掃除と仕分けを済ませ、ご飯と吸い物に使うだしをとる。貝ヒモをサッと茹でたら、酒とヒモを沸騰させる。このとき「醤油で色をつけ塩で味を整えると失敗しない」という。白米、雑穀米、ヒモを釜にセットし、だし汁で炊く。



「しんじょう」は、高村シェフおすすめの「マルキンのすりみ」、山芋、昆布だし、ホタテをフードプロセッサーにかけ、アスパラを小さく切って混ぜ合わせる。一口サイズに海苔で巻き、カリッと揚げたら完成だ。


最後の「バター焼き」は、片面にコショウ、塩の順で振り、小麦粉をたっぷりはたいて水分はしっかり拭く。卵水にくゆらせ極細のパン粉を使うことで、余計な油を吸わず、胃がもたれない。大量の有塩バターでフライ状に揚げたら完成、外は香ばしくサクッと、なかは半生の甘みに一同うっとり。

髙村シェフはたびたび「分量で考えないこと」と話す。暑い日には体が塩味を求めるように、条件によって正解は変わる。素材の力を信じて大きく構えることと、その日その瞬間の差異を読み取る集中力、ふたつのアプローチをシェフの姿から教わった一日だった。

髙村宏樹 たかむらひろき
1971年生まれ。江戸料理の名店「太古八」で若くして板長を務め、28歳で故郷の秋田市に「たかむら」を開業。2017年農林水産省「料理masters」ブロンズ賞受賞。2024年麻布台に「たかむら別邸やまじん」を開店。
たかむら 別邸やまじん
月に10日程度しか開かない秋田の会員制の日本料理屋「たかむら」が手がける。
東京都港区虎ノ門5-3-3神谷町プレイス1F
TEL03-6809-1608(完全予約制)
一部 17:30-19:30 二部 20:00-22:00
(有)ヤマキイチ商店
TEL0193-26-5749
https://www.yamakiichi.com/
text : Seoto Hosoguchi photo : Naomi Kawakami