日本の飲食店を救え!今こそ日本にチップ制度を(鴨頭嘉人さんの取組み)


「炎の講演家」やYouTuberとして活躍する鴨頭嘉人氏が2021年1月、「一般社団法人日本チップ普及協会」を設立。
コロナ禍で苦しむ飲食店をサポートし、飲食店で働く人たちのモチベーションを上げるための手段としてチップ文化を広げたいという。その思いを語ってもらった。


――コロナ禍になって1年以上、飲食店にとって苦しい状況が続いています。

鴨頭さん:私は日本マクドナルドで25年働いていたこともあり、飲食店のあり方は常に気になっています。
それまでも人材不足などが言われていた飲食業界は、コロナ禍になって、さらに厳しい状況にさらされています。何かできないか、私ならでのサポートできることがあるのではと考え、それがチップ制度でした。

――チップは欧米では一般的ですよね。

鴨頭さん:海外ではレストランで食事をした際に、飲食代とは別に、素晴らしいサービスや料理に対して、感謝の気持ちをチップという形で渡すのがごく当たり前です。
日本でもないわけではありません。旅館での心づけを渡したり、タクシーで重い荷物を運んでもらったときなどに多めに支払ったりすることがありますよね。
いずれも根底にあるのは、感謝を伝えたい思い。それをチップという目に見える形で表現しているのです。

――チャレンジングな取り組みに思えます。

鴨頭さん:日本で飲食店のチップ文化が根づいていないのは、慣れの問題もさることながら、断られたときのショックも背景にあるのではと感じています。お店がどう対応していいのかわからないがゆえに、チップを断った。すると渡す方は、次からハードルが高くなり、「また断られたらどうしよう、やめておこう」という心理が働く。
せっかく気持ちがあるのに、もったいないことです。その垣根を取り払うのが大事だと気づきました。

――具体的にはどういう活動をなさっているのですか。

鴨頭さん:チップは文化です。まずはそれをわかりやすく知らせるためにも2021年1月、「一般社団法人日本チップ普及協会」を立ち上げました。
そして、慣れていないお店、チップを渡したいのに踏み切れなかった人のために、チップを渡しやすく、かつ受け取りやすい仕組みを作りました。それが「チップキット」です。

――「チップキット」の内容を教えてください。

鴨頭さん:ステッカー、卓上三角ポップ、チップカードをご用意しています。
エントランスなどにステッカーを貼ってもらい、チップ制度の加盟店であることをアピールします。そして各テーブルに、内側にチップカードを入れた卓上三角ポップをおきます。卓上三角ポップにはチップカードの使い方を説明。スタッフが一から説明しなくてもスムーズに使えるようにしています。

――チップカードがチップとなるわけですね。

鴨頭さん:そうです。チップカードにチップを渡したい相手、サービススタッフだったり料理長だったりの名前、自分の名前、渡したい金額を書きます。そして会計のときにチップカードを渡し、飲食代と一緒に払う仕組みです。そして法律で定められた源泉徴収を差し引いて、スタッフの給料に反映されるようにしています。
また、前払いシステムのお店のためのチップカードもご用意しています。

――自分が頑張った対価としての支払いがあるのはモチベーションにつながりますね。

鴨頭さん:おっしゃる通りです。実はここには私の反省もあるんです。飲食店スタッフのモチベーションを上げたいと、10年ほどに始めたプロジェクトに「ハッピーマイレージ」があります。サービスが素晴らしいと思う飲食店スタッフに、「ハッピーマイレージ」というカードを渡して「ありがとう」を伝えよう、という取り組みで、100万枚以上のカードを発行しました。


ところが、2年前に意識が変わりました。きっかけは、アメリカ・ロサンゼルスでレストランを視察したときのこと。どのお店でもホスピタリティに感動し、アテンドしてくださった方に伝えると、理由は「チップ」とのこと。「受け取るチップの金額は接客次第。給料以上のチップを受け取る人もいる」と。
衝撃でした。「ハッピーマイレージ」は精神的満足は得られても、経済にはつながらない。お金はわかりやすいモチベーションです。とりわけコロナ禍では、経済に直結していることがより重要です。

――では、お店がチップ制度を導入するにはどうすればいいですか。

「一般社団法人日本チップ普及協会」のサイトからお申し込みください。「チップキット」をお送りします。
https://tip.inc/
「チップキット」の購入は初期費用2万円(標準価格)、管理費として月額500円で加盟店になりますが、今回のコロナ禍では、初期費用の2万円も苦しいお店もあると察します。
そこで、この2万円を補助するために、クラウドファンティングも実施しています。200万円が集まるごとに100店舗が加盟できる仕組みです。
コロナで大変な今だからこそ、チップを通じて飲食店をサポートし、チップ文化が根づくことで、継続的に飲食店を応援できれば、これほどうれしいことはありません。

(協会データ)
一般社団法人日本チップ普及協会
https://tip.inc/

鴨頭嘉人(かもがしら よしひと)
講演家、YouTuber。日本マクドナルドでの勤務を経て、2010年独立。人材育成やマネジメント、リーダーシップについての講演・研修を熱い想いで行う「炎の講演家」として活躍。これらを記した著書も多数。YouTubeチャンネル登録者数100万人以上、再生回数2億回以上を数える。「一般社団法人日本チップ普及協会」を立ち上げたほか、2021年は25の新規事業をリリース予定。

取材・文=羽根則子  写真=小沼祐介


SNSでフォローする