生まれ故郷、新潟県の食材を使うにあたって、飯塚隆太シェフは調理をどう工夫するのだろうか。
「新潟県産だからといって、食材に対するアプローチを変えるようなことはありません」。つまり、自分が目指す料理を崩してまで、地元産だからという理由だけでの食材を使ったりはしない、と考えているのだ。
一方で故郷に対する想いもある。「18歳で故郷を出ました。その後、こうやって食の仕事に携わるようになり、雪国の山奥で一生懸命に生産している人を改めて知ったんです」
厳しい環境の中で農業を営んでいる人たちを助けたい。そんな想いが飯塚シェフの中には強くあるのだ。「同じ質の食材であれば、僕は地元のものを使う。それが評価されれば、生産者さんを助けることにもなる」
妻有ポークも八色しいたけも、以前から使っていた食材だ。今回、雪室貯蔵野菜や山菜のうるいは初めて使う。シンプルながらも香りや食感を活かし、調和を崩さず表現するひと皿を、飯塚シェフの技と知恵のアプローチが支えているのだ。
「雪国の暮らしの厳しさ。そこから生まれる食材のおいしさを多くの方に知っていただきたい。ご利用しやすい昼のコースの3皿に組み込んでみました」
故郷の食材を使いながらも、決してリューズの料理から外れない。飯塚流の皿をぜひ堪能してほしい。
妻有ポークのロースを使用。できる限りやさしい火入れで、肉質はしっとりとし、芳醇な豚の味わいを引き出している。付け合せの野菜はシンプルな調理。それぞれの食材の個性が尊重されながら、互いに響きあうひと皿のバランスは、助け合いながら生きる雪国の暮らしを連想させる。
豚ロース肉(妻有ポーク)…500g
付け合せ
ジャガイモ(雪室貯蔵じゃがいも)…2個/ニンニク…1片/ニンジン(雪室貯蔵にんじん)…2本/ゴボウ(雪室貯蔵ゴボウ)…1/2本/ブイヨン…120㏄/ブロッコリーニ…4茎/インゲンマメ…8本/塩、オリーブオイル、バター…各適量/ジュ・ド・ポー…適量/フルール・ド・セル、黒コショウ…各適量
さっと火を入れた豚肉を鋳物鍋のなかで蒸し焼きにする
脂の面をしっかりと焼いて余分な脂を落とした後、鋳物鍋にアルミホイルの台を置き、その上に豚肉をのせ蓋をして蒸し焼き状態にする。ごくごく弱火でゆっくりと。
Ryuta Iizuka
1968年新潟県十日町市生まれ。1994年に「タイユバン・ロブション」のオープニングスタッフとして働く。その後渡仏し、二ツ星、三ツ星レストランで修業し帰国。2005年から5年間「ラトリエドゥジョエル・ロブション」のシェフを務め、2011年「レストランリューズ」を開く。
江六前一郎=取材、文 依田佳子=撮影
本記事は雑誌料理王国248号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は248号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。