おいしい日本再発見 in Fukuoka

美食の宝庫、福岡で多彩な食材を発見

肥沃な平野に、三方を囲む海。豊かな自然に恵まれた福岡は、食材の宝庫だ。
その魅力を再確認するため、日本料理のスター、笠原将弘さんと、中国料理の若き実力派、田村亮介さんが福岡の食材を巡る旅に出た。

博多和牛
博多和牛生産者として登録された農家が、県内産の稲わらや、牛専用のお米など質の良い配合飼料で、約20ヵ月の間県内で丁寧に育てる「博多和牛」。柔らかくてジューシーな肉質で知られ、近年評価が高まっている。

八女伝統本玉露
自然仕立ての茶園、稲わらなどの天然素材で棚被覆、茶葉は手摘みなど、最高品質を誇る「八女伝統本玉露」には細かい条件が決められている。これほどの手間をかけた玉露の栽培は全国でも希少だ。それだけに、立ち上る格調高い香りとコクのある深いうま味は別格。

和牛五輪へ初出場 躍進する「博多和牛」

今年の秋、福岡の畜産界が大いに盛り上がった。和牛のオリンピックともいわれる5年に1度開催の「全国和牛能力共進会」に、大会55年目にして福岡県が初出場したのだ。県代表牛は2頭の「博多和牛」。そのうちの1頭を育てた牧場が、今回訪問をした堀内牧場だ。

「やはり和牛はサシが命。ただし、理想とする脂はしつこくなく、何口でも食べられる脂です。地元の稲わらや米ぬか、麦、大豆などの自家配合飼料を調整し、理想の味を出すようにコントロールしています。特に米ぬかはオレイン酸を含んでいるため、肉の脂がサラッと仕上がります」と、ストレスを与えないよう牛に寄り添い、大切に肥育している3代目の堀内幸浩さんはいう。

笠原さんも、「時代はやはりサラリとした脂を求めている。脂の良さを引き出すためにシンプルに焼いて薬味などを添えて出してみたい」と、「博多和牛」の脂質に興味がわいたようだ。

歴史ある八女茶 その濃厚なうま味に驚愕

八女市を中心とした八女茶の産地の中でも、特に「奥八女」と呼ばれる中山間地域は、清流に恵まれ、昼と夜の寒暖の差が激しく、茶葉の栽培には最適。八女地域での茶栽培の歴史は古く、室町時代まで遡る。
1904年の玉露生産開始以来、稲わらなどの天然素材による棚被や手摘みなど、手間ひまかけた伝統的な製法を頑なに踏襲。「八女伝統玉露」として、品評会でも高い評価を得ている。
星野村にある八女茶の情報発信施設「茶の文化館」では、「八女伝統本玉露」の馥郁たる香りと濃厚なうま味を引き出すべく、じっくり淹れた「しずく茶」が味わえる。さっそくトライする笠原さんと田村さん。ひと口含んだ途端、みるみるうちに二人の表情が驚きに満ちていく。「うま味がすごい。こんなに濃厚な玉露は初めて飲んだ」と、笠原さんも田村さんも口を揃えた。

福岡のキウイフルーツ
福岡県ではいち早く追熟施設を導入。福岡のキウイフルーツとは、甘味と酸味のバランスがよく、熟すにつれて酸味が落ち着くグリーンの「ヘイワード」、果肉の中心が赤い「レインボーレッド」の他に、県が新たに開発した「甘うぃ」などがある。

信州黄金シャモ
長野県の畜産試験場で2007年に開発された新品種の地鶏。歯ごたえがあり、最も食味の良いと称される「シャモ」を父鶏に、母鶏には歯ごたえとコクに定評のある「名古屋種」を掛け合わせる。ジュワッと肉汁が溢れる旨みは噛むほどに増し、脂肪分が控えめのため後味の良さが特徴。

玄界灘産天然魚
温かで流れの速い対馬海流が流れ込み、なだらかな地形をした玄界灘は、脂のりがよく、身が締まった魚が棲みつく豊かな漁場。玄界灘漁師会では、漁獲から出荷まで丁寧な扱いにこだわった魚を届けている。

産地に足を運んで実感する 食材それぞれの魅力

さらに、福岡の食材を探るべく農産物の産地へ。そこで笠原さんと田村さんの心をとらえたのは福岡キウイフルーツ。通常、追熟して市場に流通するが、熟する前の硬い実を試食した二人は、この硬さが料理に使いやすいと指摘。料理人らしい発想に担当の職員の方とも意見交換が弾む。

また、福岡県の食材を語る上で外せないのが、新鮮な魚介類。恵まれた漁場、玄界灘に抱かれた全国でも屈指の福岡市鮮魚市場では、二人とも眼を輝かせて旬の魚を発注した。

発想を刺激する福岡食材が新たな一皿を生み出す

現地に足を運んで触れた福岡食材を使い、ふたりのシェフが新しいメニューを考案。それぞれのレストランにて期間限定で提供されました。福岡の豊かな恵みが生かされた一皿を紹介します。

賛否両論 メンズ館

麻布長江 香福筵


(左)「賛否両論」
Masahiro Kasahara
笠原 将弘

賛否両論 オーナーシェフ
1972年、東京都生まれ。「正月屋吉兆」で9年間修業後、実家の焼鳥店を経て、2004年恵比寿に「賛否両論」を開店。2013年「賛否両論名古屋」、2014年「賛否両論メンズ館」を開店。和食の魅力を伝える著書も多数。

(右)「麻布長江 香福筵」
Ryousuke Tamura
田村 亮介
麻布長江 香福筵 オーナーシェフ
1977年、東京都生まれ。調理専門学校卒業後、数店を経て、「麻布長江」長坂松夫氏に約10年間師事。2009年より「麻布長江 香福筵」のオーナーシェフ。化学調味料を一切使用せず、素材を活かし、日本人だからこそ表現できる中国料理を心がけている。