日本海から強い北西の風が吹き付ける。
その風も、食文化を形成する要素のひとつだという。
奥深い食文化を持つ村上市を、盟友シェフふたりが訪ねた。
村上伝統の鮭料理
鮭料理としてまず名前が挙がるのは「鮭の塩引き」。粗塩を引いて漬けた鮭を3~4週間干すことで発酵が進み、独特の旨味が引き出される。これをさらに1年かけて完熟させたものが「鮭の酒びたし」となる。どちらも原材料は鮭と粗塩のみ。
村上茶
江戸時代から続く村上茶は、商業的な生産では日本最北限。他の産地と比べて年間日照時間が短いため、タンニンの含有量が抑えられ、味わいはまろやか。冨士美園では、六代目の飯島剛志さんが100年ぶりに和紅茶を復活させ「雪国紅茶」として販売している。
日本海の魚介
セリが夕方5時から始まる岩船港。北前船の寄港地だった岩船港では、種類の豊富な魚介が水揚げされている。日本海側では珍しく、カレイやヒラメの板曳き網漁も行われている。
新潟県の最も北に位置する村上市。その食文化を語るうえで外せないものに、鮭の存在がある。平安時代にはすでに、京都の王朝へ鮭を献上したという文献が残されており、鮭に回帰性があることを突き止めた村上藩の青砥武平治という侍の名を、地元で知らない人はいない。武平治の提言により、世界で初めて鮭の人工増殖に成功したことで、三面川を遡上する鮭は村上藩の財源を支え、冬の飢えから人々を救ったという。
そんな鮭を村上の人々は「天からの恵み」と考え、決して粗末にせず、調理法を駆使してあらゆる部位をおいしく食べる100種類もの鮭料理を生み出した。鮭を守り、感謝し、味わい尽くすその精神は今も脈々と人々の心に根付き、受け継がれ、食文化の中心となっている。
今回、村上市を訪れたふたりのシェフのうち、「リューズ」の飯塚隆太さんは新潟県十日町出身。
南北に長い新潟県は、地域ごとに異なる食文化を持つ。村上の食文化の奥深さに、深い感銘を受けたという。それは、「ナベノ-イズム」渡辺雄一郎さんも同じだ。20代で出会い、互いに切磋琢磨し合いながら腕を磨いてきた両シェフが、じっくり2日間かけてともに産地を訪れるのは今回が初めてのこと。ふたりが訪れた先々で、生産者の言葉ひとつひとつに真剣に耳を傾ける姿は印象的だった。「村上の生産者の方たちが、真摯に食材と向き合う生き様そのものに感動を覚えました」と渡辺さん。ここで出合った食材は、シェフたちにどのようなインスピレーションを与え、どのような表現が生み出されるのか。期待が膨らむ旅となった。
焼畑赤かぶ
村上市の北部に位置する山北(さんぽく)地域で行われている、昔ながらの焼畑農法によって栽培されている赤かぶ。木を伐採して山焼きを行い、灰が残った急斜面に種を蒔く。水分が多く、えぐみのない甘さが特徴で、「赤かぶ漬け」等に使われている。
放し飼いの鶏の卵
ストレスを最小限にする工夫が施された清潔な鶏舎で、自由に動き回る鶏たちの卵。
株式会社オークリッチではそれらを「野芳卵」「素王卵」などのネーミングで販売している。
日本海の海水を汲み上げてつくる天然塩
「いつも使わせていただいている塩の工房にお邪魔して、直接お話を聞けたのが嬉しいですね。」と飯塚さん。
このたび、新潟県村上市へ産地見学で訪れたふたりのシェフのレストランにて、2018年2月1日~28日の間、村上食材を使った料理を提供するキャンペーンの実施が決定しました。
レストラン リューズ
ナベノ‐イズム
「レストラン リューズ」
Ryuta Iizuka
飯塚 隆太
レストラン リューズ オーナーシェフ
1968年新潟県出身。「タイユバン・ロブション」の部門シェフを経て渡仏。帰国後「タイユバン・ロブションカフェフランセ」スーシェフ等を務め、2011年に「レストランリューズ」をオープン。
「ナベノイズム」
Yuichiro Watanabe
渡辺 雄一郎
ナベノイズム オーナーシェフ
1967年千葉県出身。91年に渡仏し、帰国後「タイユバン・ロブションカフェフランセ」シェフ、「ジョエル・ロブション」エグゼクティブ・シェフを務め、2016年に「ナベノ-イズム」をオープン。