越前・若狭 食の國ふくい商談会 ~食の歳時記~ 2017秋

2017年10月10日、福井県の食材を紹介する「越前・若狭 食の國ふくい商談会」を、2017年2月に続き開催。
商談会では、2016年11月と2017年5月に福井県を訪れて、生産者と交流を重ねてきた「ピエール・ガニェール」赤坂洋介さんと「乃木坂しん」石田伸二さんが、福井県食材を使った料理を披露した。


食材のストーリーではなく、味で選び生産者と信頼関係を築く

ピエール・ガニェール 赤坂洋介さん

初めて訪れた福井県で赤坂さんは、越前がにや越前がれいなど、日本海の冬の産物を知り、2度目の来訪時には、とみつ金時や上庄さといもなどの野菜の生産者に出会った。
「生産者さんから多くの食材を学び、そこに込められた思いを知りました。だからといって、それが『ピエール・ガニェール』で使う理由ではなく、大切なのは味。そこから生産者さんとの信頼が生まれると思います」。世界のグランシェフ、ピエール・ガニェール氏の店を預かる赤坂さんの信念は強い。
そんな赤坂さんは、現地で食べたとみつ金時の焼き芋の味に魅せられた。「甘さの中にある繊細さ。デザートではなく料理に使いたい」。とみつ金時のクリームスープに存在感があるムール貝の出汁を加えたのは、とみつ金時の旨味を引き出すため。チョコレートの苦味をアクセントに、素材の甘味を引き立てる。黒毛和牛のメイン料理は、福井県の伝統的な保存食、鯖のへしこをソースに。へしこの独特な風味を消さないよう、牛肉はグリルでなくポワレにした。
そして、5皿で一品のピエール・ガニェール独自のスタイル「季節の風」では、「野菜畑」と題し、福井県の野菜をふんだんに。「季節とともに移り変わる福井の食材の味を、多くの料理人の皆さんに使ってもらいたいですね」

貝の出汁を効かせたとみつ金時のヴルーテ、帆立貝のポワレと苦味あるチョコートのアクセント

「ピエール・ガニェール」Yosuke Akasaka 赤坂 洋介
ピエール・ガニェール エグゼクティブシェフ
1979年、千葉県出身。武蔵野調理師専門学校を卒業後、20歳で渡仏。フランス各地で修業した後、23歳でパリの三ツ星「ピエール・ガニェール」へ。2005年、東京・青山の「ピエール・ガニェール・ア・東京」の開業を機に帰国。10年の現店オープン時、アシスタント・シェフとして活躍。11年6月からエグゼクティブシェフに就任し、現在に至る。


酸味を加えて食材の新しい魅力を。自由な発想で日本料理を考えたい

乃木坂しん 石田伸二さん

「乃木坂しん」では、料理とワインのペアリングを提案していることもあり、「最近は、うまく酸味を加え、ワインにも合わせられる日本料理を考えています」と、石田さん。今回も、酸味を巧みに使いながら福井県の食材の良さを伝える。
越前漁港で神経締めした越前がれいは、翌日東京に届く。「輸送中に熟成が進み、旨味がちょうどよくのってくるので、その日に使える」と石田さん。そのまま造りにしても十分おいしいが、「醤油を使うと、すべてがその味になってしまう」と、石田さんは越前がれいに仕事を施す。昆布とシイタケを越前がれいの切り身に片面ずつ貼り付け、ひと晩重ね締めに。「コースの最初に出すには、少し強いので」と、福井県産の中玉トマト「越のルビー」に、福井県産の梅果汁で作ったゼリーを合わせる。途端に旨味と酸味のコントラストが鮮やかなひと皿が生まれる。
「福井の食材をいろいろな火入れで」は、福井県産の野菜を煮る、焼く、蒸すで調理。白ワインと福井県産の梅干しを煮詰めながら、カツオと昆布を加えてとった出汁をゼリーにして越前漆器の椀に盛りつけた。福井ポークは角煮にし、とみつ金時を使った福井県産の米粉の蒸しパンでサンド。遊び心も忘れない。「福井には、海と山の幸があり、酒蔵も多い。永平寺などの精進文化にも興味がつきません」

越前がれいと長井しいたけの昆布かさね〆 越のルビーとともに

「乃木坂しん」Shinji Ishida 石田 伸二
乃木坂しん シェフ
1976年、徳島県出身。調理師専門学校を卒業後、徳島の日本料理店で15年かけて腕を磨く。その後、銀座の星付き店で5年間。同店がパリに進出した際には、その立ち上げのため渡仏。パリの店でソムリエだった飛田泰秀氏ととともに帰国後2016年6月に「乃木坂しん」をオープンした。