「懐石料理」と「会席料理」の違いは? というシンプルな疑問から始まった日本料理の歴史の特集。縄文時代の狩猟生活から弥生時代の水稲栽培へ移行した話は歴史の教科書に出てくるので、周知の事実。日本料理は、その後、神に料理を捧げる神饌(しんせん)と呼ばれる供物がルーツと言われています。奈良時代になると貴族がいただく大だいきょう饗料理と言われる形式の料理が始まりました。平安時代には有職(ゆうそく)料理が登場。鎌倉時代になると、禅宗とともに精進料理が伝来。室町時代には茶道と結びついて茶懐石に。武家社会では本膳料理が登場します。江戸時代になると、日本料理は武士や貴族だけのものではなく、町人達によって、より自由な会席料理に発展しました。明治時代以降には、それらが融合しながら独自に深化して、昭和になると大阪で板前割烹が登場。今ではカウンター会席と呼ばれる日本料理が流行しています。
このように日本料理は、ぞれぞれの時代と密接に関係を持ちながら広がっていきましたが、どのような器で何をどの順番で出すのかなど、それぞれに様式が決まっていました。当時は意味があったことでも、時代とともに食材や料理法などは変化していくので、こうでなければいけないという複雑な儀式、作法は文献に残るだけになってしまっているものもあります。
特集では、まず、現在も様式として残っている日本料理を解説。古の日本料理の様式を今に伝える名店の主人にそれぞれの料理にかける思いを語っていただき、日本料理の歴史と系譜がわかる簡易年表を付けました。日本料理の歴史については諸説あって、簡単にはまとめられないのですが、今の私達が日本料理を作ったり、味わったり、語るときの一助になればと思います。
もう一つの特集はフードテックの最新情報。3Dプリンターやロボットなど、食にまつわるテクノロジーは日々進化しています。中でも食材に特化してSDGsに対応できる技術の実例を取材しました。フードテックで作り出される食材は代替肉を始め、藻類などに期待が持てそうですが、美味しくないと流通しません。つまり、フードテックの課題は、それを作る企業と調理する料理人の美味しく料理する腕にかかっていると言えるようです。
料理王国編集長 野々山豊純