古代文明が栄え、シルクロード交易の要となり、世界で最も古いワイン産地とも言われるコーカサスの国、ジョージア。昔ながらのナチュラルな調理法やワイン製法が今、ロンドンで、世界で注目されている。
ジョージア料理といえば、日本では昨年熱望に応えて復刻された松屋の「シュクメルリ鍋定食」で意外と知っている人もいるかもしれない。このジョージア料理が今、ロンドンでは密かなブームだ。イギリスでは2000年代から確立されている人気のあるジャンルだが、いずれのレストランも伝統の味を異国で食べたいジョージア、そしてロシアの人々に向けて創業され、愛されてきた歴史がある。
東欧と中東の間に位置するコーカサスの国、ジョージアの食文化といえば、チーズをたっぷりとのせて焼くパン「ハチャプリ」や、ご当地風水餃子「ヒンカリ」など、放牧やモンゴル地域のカルチャーにも影響を受けた地に足のついたキュイジーヌでもあり、筆者も大好物だ。ワイン醸造では世界最古との呼声もあり、古い歴史が横たわっている。
ロンドンではヒンカリを再解釈するコンセプトで2年前に創業した現代風ジョージア料理レストラン「Kinkally キンカリー」が火付け役となった後、今年1月半ば、レストランの強豪が集まる一画にナチュラル・ワイン・バーを兼ねた「DakaDaka ダカダカ」がオープン。ロンドンにおけるジョージア料理が、新たな時代に突入したことを印象づけた。

なぜジョージア料理が注目されているのか。いくつもの理由が挙げられる。筆者なりに分析すると、まずイギリスにおけるベーキング熱にもつながる中東風「フラットブレッド文化」の盛り上がり。これはロンドンにおけるレストランで近年もてはやされている「直火調理」への希求もあると思うが、直火で調理することへの人類としての純粋な喜びがあると見ている。
またダンプリングの素朴な美味しさにも、ロンドナーたちは魅了されている。最近流行りの中国のモダン点心しかり。東欧や旧ソ連諸国の郷土ダンプリングへの注目度も上がり、屋台などではすでに人気商品となっている。さらには前述した通り、ジョージアのワイン文化は8000年の歴史があると言われ、素焼きの壺で醸造する自然派ワインは、ロンドンだけでなく世界の好事家から注目を集めている。
これらの要素が絡みあい、ジョージア料理はロンドンのマーケットで最適解であるとみなされたのかもしれない。もっとも創業デュオの一人がジョージア出身であることは大きな創業要因でもあるのだが。先日訪れたDakaDakaは、そんなジョージア料理の勢いを十分に感じさせてくれるレストランだった。



ジョージアの首都トビリシは、古代シルクロードの要衝だった。おかげでサフランやコリアンダー、ブルーフェヌグリーク、マリーゴールドなど、伝統の食にはあらゆるスパイスが取り入れられている。その歴史が万能ハーブ・スパイス「フメリ・スネリ」や、独特のトマト・ペースト「サツェベリ」を生み出してきた。DakaDakaではそれらを現代風にアレンジし、メニューに取り入れている。
現在のところ、ジョージアの人々にもDakaDakaの料理は評判も上々。英国産の季節の食材を使った炭火や薪の料理は、トレンドと伝統がうまく組み合わさり、まさに今のロンドンを象徴していると言えそうだ。
ちなみに日本でも認知度があると思われる煮込み料理、シュクメルリ(ニンニクのコンフィ・ソースで煮込んだロースト・チキン)もメニューにあるのだが、今回は逃してしまい残念だった。煮込み料理(カルチョ)はジョージア料理の中核を成すもので、DakaDakaでは肉・魚・野菜をバランスよく取り入れている。


ジョージアといえば、世界最古参とも言われるワインの歴史や、新たなナチュラル・ワインへの取り組みも無視できない。DakaDakaでは著名なソムリエであるワイン・ディレクターが100種類以上のボトルを揃え、フェザンツ・ティアーズやアルチル・グニアヴァといった著名生産者のナチュラル・ワインも賞味できる。
ジョージアの伝統的なワイン醸造は独特で、「クヴェヴリ」と呼ばれる素焼きの巨大な卵形の土器を地中に埋めてワインの発酵・熟成に使う。この方法だとワインが自然に呼吸できるのだという。さらにワイン製造後の搾りかすでグラッパのような蒸留酒「チャチャ」が製造されるのだが、これも当店で取り扱っている。(筆者はお茶と間違えて注文しそうになって急ぎ取り替えてもらったが、次回は賞味してみたい。)
元々コーカサス地方にはそこはかとない憧れがあっが、DakaDakaを訪れ、ますますその思いが強くなった。ジョージアの歴史や味わいを知るにつけ、今まさに掘り下げる価値のある食文化だと確信した。
DakaDaka
https://www.instagram.com/dakadaka.london/
