岐阜の食材の魅力に迫る「岐阜県産地訪問 食材見学会」を開催


東海地方でも屈指の食材宝庫として知られる岐阜県。飛騨牛にはじまり、長良川の鮎や伝統野菜など、太陽と水の恩恵をたっぷりと受けて育った素材が多く揃います。
そんな岐阜県で、岐阜グルメフェア「飛騨牛&鮎 2024」に向けての「食材見学会」が開催されました。関西から名店のシェフたちが参加し、地元の産地や生産者を訪ね、岐阜の豊かな食材の魅力を再発見。地域性と食文化を支える生産者たちの情熱に触れたシェフたちの体験をレポートします。

岐阜の代表食材・飛騨牛専門店へ

一行がまずやってきたのは、岐阜県可児市にある精肉店「肉のひぐち」。株式会社ネオプライムヒグチの営業統括本部長、吉田知泰さんから、飛騨牛についての説明を受けました。

飛騨牛とは、岐阜県内で14ヶ月以上肥育された黒毛和種で、日本食肉格付協会の基準で等級A・Bで5等級、4等級、3等級のものを指します。ほどよい脂肪と柔らかな肉質、鮮やかな色合いが特徴の飛騨牛は、全国の食通たちの舌を唸らせる食材でもあります。

「肉のひぐち」では厳しい目線で管理された体制のもと、最上級ランクの飛騨牛を取り扱っており、常に上質な肉を提供しています。

シェフたちは、実際に飛騨牛の各部位を見て肉質を確認しながら、肉の特徴や枝肉から出荷までの管理状態の説明を受け、飛騨牛に対する理解を深めました。

ここでもシェフたちは、各部位、タレをつけずにそのまま試食したり、じっくり焼くことでメイラード反応が起こった際の肉の味の変化を確かめるなど、自店で使用するところをイメージしながら状態を確かめつつ、甘く滴る脂と口溶けのいい肉質に舌鼓を打ちました。

清流・長良川で天然鮎のこだわりを知る

続いて、長良川沿いにある「郡上漁業協同組合」を訪れました。ここでは、伊藤康宏さんから長良川で育った天然の鮎についての説明を受けました。長良川は川の流れが速く、鮎の餌となる苔に泥が付きにくい環境です。そのため、鮎は新鮮で汚れていない苔だけを食べることができ、泥臭さのないみずみずしい個体に育つのだそうです。

シェフからの「鮎のコース料理に使うならいつの時期がいいでしょうか?」という質問に対しては、「どんな料理にしたいかで選ぶのがいい」という回答が。
「7月の鮎は香りが際立ち、8月には香りと味のバランスが良くなり、9月には味が濃厚になります。特に9月の鮎は味がしっかりとしているので、炊き込みご飯などに使用すると、ご飯の甘みに負けずに美味しい仕上がりになります」と伊藤さん。

その後は、実際に長良川の清流へと足を運び、鮎が育つ環境をその目で確かめました。都会ではなかなか味わえない清々しい環境に、身も心も癒されたようです。

飛騨ほうれんそうの畑で魅力を深掘り

次なる目的地は、標高1000mの高地で栽培している飛騨ほうれんそうの畑へ。
「ホウレンソウといえば冬のイメージがありますが、このあたりは夏でも気温が下がるので、夏でも安定して栽培ができます」と、飛騨蔬菜出荷組合ほうれんそう部会長の中谷賢栄さん。

4月中旬から11月中旬にかけて、1年間で4回収穫する飛騨ほうれんそう。谷からの水をポンプで汲み上げ、上からたっぷりと散布して育てています。
冬の間は休耕し、しっかりと土を休めます。高山は冬になるととても寒さが厳しい土地ですが、その時期を乗り越えることで夏に向けておいしい野菜が育つのだそうです。

夏は朝4時から収穫が始まるのだとか。日光でしおれてしまわないよう、黒いシートで覆いながら作業します。

飛騨ほうれんそうは、軸が太く、葉が肉厚なのが特徴。土の中にしっかりと根を張れば張るほど栄養たっぷりのホウレンソウができあがるのだそうです。

実際に手で触れながら、シェフは「炒め物などで食感を残したいときにはいいですね」「味がしっかりしているのでサラダにもいいですね」と話し、懇親を深めました。

採れたてのスナップエンドウを青空の下で実食!

この日最後に訪れたのは、スナップエンドウやトマト、伝統野菜の飛騨一本ねぎなどを栽培している「東農園」。代表を務める東信吾さんに、農法のこだわりを聞きました。

飛騨一本ねぎは、その育て方の難しさから、今では作り手がほとんどいないという幻の野菜。収穫までになんと14ヶ月かかるのだそうです。

冬の土の中で霜にあたることで一段と柔らかくなり、粘り気や甘みも増す飛騨一本ねぎ。すきやきなどの煮物や鍋物の具材にしたり、シンプルに焼いて食べたりと、味わい方はいろいろ。

希少価値も高いことと、「一年をねぎらう」ことから、お歳暮など贈答用にも好まれている食材です。

とにかく土作りにこだわっているという東さん。微生物や有機アミノ酸がたっぷりと含まれた土は、柔らかくて甘い香りがしました。

続いて、スナップエンドウのハウスへ。ここでは、市場では出回らないほど大きなサイズのスナップエンドウを見せていただきました。

「野菜に負担をかけずに、健康的に育てることを大切にしています」と話すように、東農園の野菜はどれも元気いっぱい。贅沢にも採れたてのスナップエンドウを生のまま味わってみると、噛むほどに甘みとみずみずしさが口の中に広がっていきます。これにはシェフのみなさんも驚きの声を漏らしていました。

さらに、東さんの計らいで、焼いて食べさせていただけることに。軽く火を入れたものと、少し火を入れて塩をふったもの、スナップエンドウの新芽を加えたものの3種類で、味わいの違いを体感しました。

「スナップエンドウが主役になる料理ができそう」「健康的な野菜だから、シンプルな味付けで十分ですね」と思い思いに感想を述べ合う様子が見られました。

一日を通して岐阜の食材に触れたシェフたちに、感想を伺いました。

「普段は奈良の食材を使っていたけれど、少し足を伸ばした岐阜にもこんなに魅力的な食材があったことは発見でした。生産者さんの思いを受け止めながら、料理に反映していけたらいいですね」(「ラ・テラス・イリゼ」鷦鷯 進シェフ)

「生産者さんの情熱を感じることができました。こういう機会があると食材との向き合い方も変わりますし、料理人としてそれをしっかりお客様へ伝えていかなくてはいけないなと感じました」(「オルタンシア ビストロ」川端和波シェフ)

生産者のもとを訪れ、そのこだわりに触れることで、自身の料理への新たなインスピレーションとなったようです。
今回岐阜県を訪れたシェフたちはもちろん、他にも関西、関東から30店舗以上が参加する予定の岐阜グルメフェア「飛騨牛&鮎 2024」は、8月1日から開催です。

text: Sayaka Mitsuda, photo: Tetsuo Ogino

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