イタリア料理の花形であるパスタ。スパゲッティをはじめペンネやリングイネなど、その種類は豊富で、製造するメーカーも多数存在する。各メーカーが厳選した原料を用いて丁寧に製造されているが、個性は様々。今回は編集部が推すシェフたちが、どんなパスタメーカーを推しているのか徹底取材。パスタメーカーの特徴とシェフたちのパスタにかける想いを紹介する。
イタリアの風土とメーカーの情熱を肌で感じた視察ツアー
日本におけるイタリア料理の先駆けとして知られる「リストランテ・ヒロ」。青山店を皮切りに、東京で4店舗、そして大阪1店舗を展開している。丸の内店で料理長を務めるのが、柴田拓(ひろむ)シェフだ。幼少期から食への探究心が強く、料理専門学校に進学し、都内のイタリア料理店で修業を積み、「リストランテ・ヒロ」へ。2017年に料理長に就任した。
今回、柴田シェフが「ルスティケーラ・ダブルッツォ」主催の視察ツアーに参加。本拠地であるイタリア・アブルッツォを訪れ、工場見学をはじめアブルッツォの風土に触れた。アブルッツォ州は、イタリア中部に位置し、イタリア半島を縦走するアペニン山脈とアドリア海の豊かな自然に囲まれている。山からの澄んだ冷たい風、カルシウム分が少ない純粋な水、そして海からの湿った空気と、パスタ造りに最適な要素が揃い、古くからパスタ造りが盛んな地域だ。「景色が本当にキレイで感動しました。ビルとかお店は何にもなくて、住宅の間に小麦畑が広がっていて。こういうところで作られているから、美味しいパスタが出来上がるんだと思いました」と目を輝かせて語る柴田シェフ。
現地では小麦の収穫と脱穀も見学させてもらったようだ。「大きな機械で小麦を刈り取るところ、そして脱穀した小麦を見せてもらったのですが、大粒だなと感じました。なかなか見ることができないものなので、貴重な体験でしたね」原材料の小麦の収穫を見学を経て、いよいよ「ルスティケーラ・ダブルッツォ」の工場を視察。「1からパスタを作るところを全部見せてもらい、こだわりと情熱を感じることができました。作っているところを見ると、こうやって使おうかなとインスピレーションも湧いてきます」イタリアの風土を感じ、そして「ルスティケーラ・ダブルッツォ」をより理解した、充実の現地視察ツアーだったようだ。
厳選した良質で新鮮な小麦を使うことで生まれる香りと味わい
「ルスティケーラ・ダブルッツォ」の工場視察を経て、柴田シェフが作ったのが「フレゴラ」を使ったパスタ。「フレゴラ」は魚卵という意味のサルデーニャの伝統的なパスタで、クスクスに似た粒々の形状が特徴だ。「『フレゴラ』ということで、サルデーニャで定番のアサリのソースに合わせています。アサリのソースにしっかりと魚介のうま味を引き出し、それを『フレゴラ』に含ませます。そしてうちのお店らしく、グリルしたスカンピをトッピング。仕上げにはサルディーニャのオイルをかけています。ザ・イタリア料理という感じのパスタですね」セモリナ粉を小さい不揃いのボール状にして、ローストしてから乾燥させる「フレゴラ」は大きさやローストの具合により食感の違いが生まれるという。「ローストが深いものは茹で上がりが早く、味もしっかりと入ります。そしてローストが浅いものはアルデンテのようになり、自然と手打ちパスタのような食感の差が生まれます。さらにローストが深いものは香ばしくて、食べていて楽しいパスタです」。
柴田シェフは、現地を視察した際に「ルスティケーラ・ダブルッツォ」は「太麺が多く、小麦の味がしっかりするパスタ」と感じたという。まさにこの「フレゴラ」もそうだ。「ルスティケーラ・ダブルッツォ」は、デュラム小麦のセモリナ粉だけを選び、質の良いタンパク質が集まる中心の部分のみを使用している。これにより、より深い味わいと良質なグルテンが引き出されるという。さらに、「ルスティケーラ・ダブルッツォ」のこだわりは、新鮮な小麦を使うこと。新鮮な小麦で作られたパスタは、小麦に含まれるグルテンが強く結合する為、もちもちとして、コシのある歯ごたえになるのだ。
text 竹内せいじ photo よねくらりょう
記事は雑誌料理王国2019年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2019年11月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。