to our READERS 読者の皆様へ 23年6月号

なぜ今、地中海料理の特集? 僕が本誌に関わって2年。フレンチ、イタリアン、日本料理、中国料理とジャンル別に名店の今をご紹介してきました。そこで登場いただいた料理人の方たちのお話で、基礎がいかに大切かということを改めて感じ、料理の歴史に興味が向き始めたのです。何事もルーツを知ればそこから派生する未来を展望できるのではないか。前号で日本フレンチ110年史を取り上げて、フランス料理の過去と、これからを展望しました。すると今度は、現代のフランス料理のもとになったとされるイタリア料理のルーツにも思いが向き、一気に紀元前のギリシアやエジプト、メソポタミアといった文明にまで遡って行ったのです。どこまでも話が大きくなりそうだったので、まずはフランス、イタリア、ギリシアあたりに限ることに。そこで共通項として出てきたキーワードが地中海だったのです。

地中海料理のルーツはどこにあるのか? まずは各国の料理に共通する食材、オリーブ、小麦、ワインはどこからきたのだろう? という疑問。そこで出会ったのが植物考古学を専門とされる龍谷大学文学部の丹野研一准教授でした。文字が記録として残っているから四大文明と言われてきましたが、西アジアでは、それよりはるかに古い時代の耕作の跡が発見されている。現在のトルコやシリアを含む西アジアの肥沃な三角地帯で、小麦を育てた跡や、家畜を飼育していた痕跡が見つかっているそうです。残念ながら、それらをどのように料理していたかはまだ発見されていないので、想像をするしかないとのこと。西アジアで発生した穀物料理は地中海にもたらされ、海路で広がっていった。その後、数千年かけて今の豊かな各国を代表する地中海料理になったのです。それぞれの国の美味しい地中海料理はぜひ、名店の料理人のお話とともに誌面で。

料理人の方たちの取材で出合う自家製の調味アイデア。料理の味の幅を大きく左右することも。もう一つの特集では、5名店のシェフたちに、とっておきの手作り調味アイデアのレシピを教えていただきました。

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料理王国編集長 野々山豊純