福本流「今」の極め方
素朴(本質)と変化を一皿に盛り込む
「イタリアの歴史や文化に培われたパスタの“本質”を理解した上で、今私が作りたいのは四季を感じる日本人ならではのパスタです」と福本シェフ。手打ちパスタが豊富な北イタリアで経験を積んだシェフが選んだのは、「スパッツォレ」。
イタリア最北端、ドイツやスイスに隣接するトレンティーノ・アルト・アディジェ州で作られている素朴な郷土料理だ。現地ではチーズをたっぷり使い、脂肪分が濃厚、濃い目の味付けだったという。「今回、イメージしたのは“温かいサラダ”。郷土料理のパスタとの差別化を図り、コースに組み込むメリハリのある一皿に仕上げたいと考えました」
北イタリアで出合った郷土の味をサラダ感覚で味わう
コースの一品に昇華。
現地では、ホウレンソウなどを練り込むことが多いが、シェフが使ったのは初夏に出回るやわらかい若ニラ。合わせる素材はグニャグニャとした食感がスパッツォレと似ているホルモン。パスタの食感を生かすために麺より硬いものは入れない。パスタと具材をほぼ同じ大きさに切り、食感の一体化を図るのも福本流だ。「香りや味が飛ばないように」ソースとパスタ、ホルモンを合わせ、皿に盛り付けてから黒コショウやシェリービネガー、焦がしバターで味付けし、クレソンを添える。「ホルモン=焼肉のイメージ。ホルモンを炭火で焼くとパスタにも雑味が入ってしまうので、香り穏やかなジュニパーで炭火のニュアンスをほんのり添える程度にしています」素朴な北イタリアのパスタは季節を伸びやかに表現する洗練された一品へと見事に磨き上げられていた。
材料(1人前)
ニラのピューレ(ニラ40g、塩適量)……100g
ニラ(刻んだもの)……20g
ファリーナ00(生パスタ用小麦粉)……125g
全卵…… 60g
センマイ、赤センマイ、ミノ、テッチャン、タケノコ(大動脈)……各8g
E.V.オリーブ油……6ml+適量
トマトのコンソメ……40ml
アンチョビ……1g
シェリービネガー……数滴
焦がしバター……小さじ1/2
パルミジャーノチーズ、黒コショウ、クレソンの若葉、ジュニパー(セイヨウネズ)の葉……適量
作り方
1.湯を沸かし、塩とニラを入れてやわらかくなるまでゆでて取り出し、刻んでミキサーにかけてピューレにする。粉、溶き卵、刻んだニラと合わせて、持ち上げるとぽってりと落ちるぐらいのやわらかさの生地を作る。
2.専用の道具を使い、ゆるく沸いた湯の中に生地を落とす。1度沈んで浮いてきたら、すくい上げて適量のE.V.オリーブ油を軽くからませる。
3.E.V.オリーブ油(6ml)、アンチョビ、トマトのコンソメを鍋に入れ、アンチョビの水分を抜くように炒め、煮詰めてソースを作り、2のパスタを入れて馴染ませる。大きさを揃えて切り、塩をひとつまみ加えて強火で表面が固まる程度に炒めたホルモン(センマイ、赤センマイ、ミノ、テッチャン、タケノコ)も合わせて、パルミジャーノチーズを加える。
4.皿に盛り付けてから、たっぷりの黒コショウ、シェリービネガー、焦がしバターを加え、クレソンの若葉をあしらう。
5.乾燥させたジュニパーの葉を炭火で燻し、その煙を閉じ込めて皿にふたをする。テーブルに運んで、ふたを外して供する。
ピ・グレコ
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text 山田佐和子 photo 東谷幸一
本記事は雑誌料理王国2020年8・9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年8・9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。