マッキー牧元の名店の逸品!ゲリドンサービス 銀座レカン


「もうワゴンデセールも小菓子もいりません。この味わいの余韻を消したくないのです」クレープ・シュゼットを食べたお客さんが、以前こんなことを言ったという。「レカン」に魅かれるのは、いくつか理由があるが、なによりもまずは、高良康之シェフの料理である。

食感はやわらかながら、まだ息をしている躍動があり、うま味の余韻が驚くほど長い、鮑。しなやかで、水の如く清らかで、いたいけな気配を漂わせる、小鳩のヴェッシー包み。生命の目覚めを切り取った味は、どこまでも妖艶で、陶然とさせる。

伝統料理も創作料理も、高良シェフは、その感性と技で深め、類まれなき美味を生み出す。次は、空間とサービスである。ベルエポック調に設えられた空間は、時間がゆるりと流れ、その中をプロの給仕人が滑るように動いて、サービスする。

その非日常という贅沢は、レストランに出かけることが、食事だけではなく、かけがえのない時間を過ごすことにあるという真理を、感じさせてくれる。
そしてもうひとつが、デセールの時間である。フランス料理は、料理が終わっってからの時間を、たっぷりと楽しむ。多くのデセールや食後酒を楽しみながら、
おしゃべりして時間を過ごす。「レカン」に訪れる人は、皆自然に、食後1時間以上を楽しむという。

そのきっかけが、ゲリドンサービスによるデセールの提供である。クレープ・シュゼットや季節の果物のフランベを、給仕人が鮮やかな手つきで仕上げていく。
実はこのゲリドン(移動式テーブル)にも、ファインプレーが隠されている。客がよく見えるように食卓の高さに合わせ、通常より10センチ低い特製なのだ。
またチーズのゲリドンは、食卓にせり出して、より近くで見えるように造り、食後酒のテーブルは階段状にして、瓶のラベルが見えやすいように造られている。

その全てが何気ない。だがあらゆることを、客本位で考え抜き、準備をし、さりげなく提供する。これこそが、グランメゾンの品格なのであろう。
クレープ・シュゼット自体も、他とは異なる。生地は、卵の量と練り方で、この料理用の硬さを調整する。砂糖の焦がしを止める時も、酸味が苦みに変わるレモン果汁ではなく、オレンジ果汁を使う。グランマルニエとコニャックに、コワントローを加えることで、香りが豊かながら、澄んだ味を目指す。

銀座レカン_料理

添えるバニラアイスもクレープにあわせて作り方を変え、骨格のある味わいに仕立てる。オレンジの皮、は渦巻き状に切ってリキュールを垂らして燃やす演出
はしない。果肉を使い、よりフレッシュ感を出す。こうして出来上がったソースは、ジャムのようなコクがあるが、酸味があって、後口が軽い。「そのソースの
中で、クレープを炊いてあげるのです」。

伝統ある菓子は、様々な工夫が加えられて、深化を遂げ、我々の心を震わせる。伝統を守るとは、明日を創造すること。この菓子は、そのことを証明している。

銀座レカン_チョコレート
デザート終了後にチョコレートとマカロンのぎっしり詰まったボックスが運ばれ「お好きなものをどうぞ」と一段一段引き出しを開けてくれる。このワゴンも、特注したレカンのオリジナルで、まさにスイーツの宝石箱。
銀座レカン_店舗

銀座レカン
Ginza L’ecrin

東京都中央区銀座4-5-5 ミキモトビル B1F
☎03-3561-9706
● 11:30~14:30LO 17:30~22:00LO
●日休
●コース 昼5600円(税込)~ 夜 16000円(税込)~
●38席
www.lecringinza.co.jp


本記事は雑誌料理王国第241号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第241号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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