カウンター越しにシェフがいるお店(東京編)


シェフ自らゲストをもてなし、目の前で料理を披露して、会話で店の雰囲気を作りだす。カウンターというステージで、一人三役も四役もこなすシェフは、最高のエンタテイナーといえるだろう。

グランメゾンにはないライブ感、家に招かれたような親密感、ワクワク感とある種の緊張感。非日常と日常の垣根を巧みに飛び越える東京のシェフに、その秘密を聞いた。

1:【FRANZ Tokyo】福田祐三さん

【FRANZ Tokyo】福田祐三さん
Yuzo Fukuda
1977年、東京都生まれ。「オーベルジュ オー・ミラドー」(箱根)、「レストラン・パッション」(代官山)、「イートリップ」(渋谷)を経て2017年2月に「FRANZ」を開店。

ーなぜカウンターなのか?

好きなものに囲まれていられる。

僕よりおいしいものを作る人はいくらでもいるし、もっといい材料を使って、コスパよくやっているお店もあります。でも、僕たちが考えるレストランは「総合力」だと思うんです。料理だけが良くてもダメだし、皿だけ良くてもダメだし、店の設え、飾ってある絵、空間の雰囲気も大事にしていきたい。

アンティークや絵が好きなので、自分たちの好きなもので、もてなせたらいいかなぁって。それがカウンターにした一番の理由です。メニューを置かずに、料理を出す時に、どこから来た野菜で、誰が作ったのか、ひとつずつ説明していく。そういったコミュニケーションがすごく好きなので、ご飯食べに来て、プライベートな空間を楽しんでもらいたいと思っています。

東京都港区白金6-2-17
☎03-6874-1230
●18:00〜21:00LO
●日・祝休
https://ja-jp.facebook.com/restaurant.franz/

2:【ペタンク 東京】山田武志さん

【ペタンク 東京】山田武志さん
Takeshi Yamada
1976年、東京都生まれ。「グレープ・ガンボ」(銀座)「ワインショップ&ダイナー フジマル浅草橋店」で料理長を務めた後、2017年4月「マイクロビストロ ペタンク」で独立。

ーなぜカウンターなのか?

これまで働いた店の理想形

最初に料理長をしていた「グレープ・ガンボ」(銀座)には、調理場の脇に常連さんしか座らないカウンターがあったんです。そこで、お客さんの顔を見ながら料理をするのが楽しかった。

僕は、ワインが好きなので、「サービスから料理まで一人で回せる10 坪以内の店」にしようと思いました。そのためには設計段階から店をち密に作り上げる必要があるので、物件より先に内装屋さん探しから始め、条件の下どこまで作りこめるか綿密に打ち合わせていきました。

独立前に料理長を務めた「フジマル」のカウンターは、水場の関係でカウンターと調理場に段差があって、お客さんを見下ろす感じでした。自分が店を作る時はフラットにしよう、というのは決めていましたね。

Pétanque, Tokyo
東京都台東区浅草3-23-3 上野ビル101
☎03-6886-9488
●17:00〜24:00(土日祝15:00〜22:00)
●不定休
www.facebook.com/petanqueasakusa/?locale2=ja_JP

3:【サッカパウ 東京】田淵 拓さん

【サッカパウ 東京】田淵 拓さん
Taku Tabuchi
1978年、徳島県生まれ。イタリアで料理修業を積んだ後、ドイツ・ハンブルグにて「I vigneri」「Caffe I vigneri」をプロデュース。2016年「サッカパウ」のエグゼクティブシェフに。

ーなぜカウンターなのか?

ゆったりとした時間を楽しむ空間

このカウンターの広さなら10 席設けることもできたのですが、あえて9席に絞りました。ゲストにちょっとしたサプライズを演出する空間を作り上げたくて、90㎝のカウンターの上には何も置かず、料理を出すときにカウンターの引き出しを開けて「お好きなもので召し上がって下さい」とカトラリーが入っている場所をお知らせします。

料理を作っているときも、「見えるようで見えない」距離感を保ちます。お渡しするメニューに書いてあるのは、メインの素材だけ。炭焼きなのか、冷製なのか、どんな形で出てくるのか、ドキドキしますよね。日本では劇場型のレストランがまだ少ないので、サッカパウでしか過ごせない非日常を感じて頂きたいと思っています。

東京都港区西麻布1-12-4 nishiazabu 1124ビルB1
☎03-6721-0935
● 18:00〜21:00LO
アラカルト 18:00〜22:00LO
バータイム 18:00〜25:00LO
●日休 http://saccapau.jp/

4:【サンプリシテ 東京】相原 薫さん

【サンプリシテ 東京】相原 薫さん
Kaoru Aihara
1974年、神奈川県生まれ。25歳で渡仏し一ツ星、二ツ星のレストランを経験。帰国後、「銀座レカン」「ヴァリノール」(荻窪)などを経て、2017年に「サンプリシテ」をオープン。

ーなぜカウンターなのか?

素材の息遣いが届く距離

ゴマサバに炭で焼き目を付けると、一気に香りがフワッと出て、香ばしい香りがカウンターまで漂ってくる。それがカウンターの面白さです。前菜の魚を切る時も、お客様の目の前で。「これは5日寝かせた明石のサバで、源治という船が釣った魚です」と言えばお客さまも食材に興味を持ってくださいます。

近くにお客さまがいらっしゃるので、カウンターや手を清潔に見せるように気を付けていますね。味見のスプーンを使ったらすぐに洗う。調理台のカウンターで洗剤のボトルだけ見せているのも、「あそこで洗っているんだな」と安心していただくため。見られる方は気を使いますが、お客さまがゆったりと楽しめるようにくつろげる広さを優先しました。

東京都渋谷区猿楽町3-9
アヴェニューサイド代官山1 2F
☎03-6759-1096
●12:00〜13:30LO、18:00〜20:30LO
●月、第1火休(祝日の場合翌日休)
●18席
www.simplicite123.com


東原じゅり=取材、文
中西一朗(フランツ、サッカパウ、ペタンク)川瀬典子(ラ ルッチョラ)=撮影

本記事は雑誌料理王国第280号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第280号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


SNSでフォローする