食の未来が見えるウェブマガジン「料理王国」

10人のカウンターシェフ達がお客さんとの会話で気を付けていること


話し足りないお客さまと料理の話を楽しむこともあれば、面と向かって厳しい言葉を掛けられることもある。シェフたちが日々の仕事の中で見つけた、お客さまと心を通わせるコツとは?

何気ない日常の一片のような あたたかみのある会話

料理の説明は、素材について興味をもっていただけるように、産地のことなども交えてお話しています。ほかには、気に入ったお店や、面白かったお店の話とか。おいしいものが好きなお客さまが多いので、次に来た時に「行ってきた、面白かったよ」と言ってくれることもあります。常連さんは大抵ご近所さんで、紫陽花をたくさん店に持って来てくれるなんてことも。温かい場所だなと思います。
福田祐三さん フランツ

お客さん同士のやりとりが店に活気をもたらしてくれる

僕自身が話すことというより、狭い店なので、お客さん同士で融通し合って、メニューを隣に渡してくれたり、「今満席だよ」と外に声を掛けてくれたり。やりとりが自然に発生して、会話が弾んでいることが多いです。予約を取るのは通常3名までと決めています。大人数で料理を取り分けるとおいしいと思ってもらえる量を食べていただけないし、一人のお客さんにも時間を楽しんでほしいので。
山田武志さん ペタンク

全員の会話を聞きながら、料理しながら飲みながら(笑)

僕はしゃべりながら手を動かせるタイプなので、カウンターに向いてるんです。耳もいいし、皆さんの話を聞きながら、作りながら飲みながら(笑)、次どうしようかなって。顔を覚えるのだけは苦手なんですけど、料理のオーダー内容で思い出せるから大丈夫(笑)。それと常連さんを大切にするのは当然ですが、ご新規さんにこそなるべく話しかけて、疎外感を与えないように気を配っています。
鈴木浩治さん ラ ルッチョラ

ハイレベルな会話はマネージャーの専門分野

実は口下手で、会話が得意じゃないんです。だから接客は専らマネージャーの仕事。祗園のお客さんって素材や料理のことをよくご存知で、積んである野菜を「これどこの?」と、産地じゃなく生産者名で聞くレベルなんですよ。僕の方が教えられることも多々ありますね。ただそういう空気になると若いカップルが萎縮してしまうので、そこは僕が緊張をほぐしてあげる役目かなと思っています。
谷口晶紀さん 祗園びとら、

あえて見せない部分を作るのもおもてなしの極意

遅い時間帯は、サパータイムも取り入れているので、ドリンクや軽食だけのお客様もいらっしゃいますし、料理にペアリングをご用意しているので、キッチンスタッフもワインの産地や味わいについてお話しできるようにしています。料理の提供の際には目の前でソースをかけたり、液体窒素を使ったメニューをご用意し、滞在される時間の中に自然な緩急を付けるおもてなしを心がけています。
田淵 拓さん サッカパウ

素材の魅力を真摯に伝える料理人でありたい

一番お伝えしているのは、素材の話ですね。どこでとれたもので、どんな人が作っているかをお話しするようにしています。例えば、ゴマサバの仕上げに乗せているフィンガーライムについて聞かれれば、冷蔵庫から出して、鞘を割って「こんなものなんですよ」とお見せする。僕も実際に生産者の人に会いに行って、どんなこだわりがあるか尋ねて、その時の感動をお客様に伝えるようにしています。
相原 薫さん サンプリシテ

ささやかな変化でも 省かずに伝える努力をする

春巻きであっても、餡は、春は金目鯛と黄ニラですが、秋は松茸にしたりと、季節によって変えています。日々少しずつ変化を付けるように工夫しているので、料理はひと品ずつ説明するようにします。料理中は手が離せず、お話もなかなか出来ないですが、全てのお皿を出し終わって「ありがとうございました」と言って、少しお話できるくらい。そのスタイルを喜んでくださるお客さまがいるのは、光栄なことです。
山本 雅さん 虎峰

話しかける頻度など個々の見極めが大事

元から社交的な性格であまり緊張しないし、楽しく会話するのは大得意。各席に気を配りつつ、コースの進み具合を見つつ、料理する器用さも持ち合わせているつもりです。でも、接客においてはむしろ"放っておいて欲しい人"を見極める方が大事かもしれません。水やワインも僕が注ぎますので、その合間にうまく探るのがコツ。静かに食事を楽しみたい時って、誰にだってありますもんね。
吉岡正和さん 祗園245

プライベートに踏み込んで隣に疎外感を抱かせない

 料理に必死でなかなか話す余裕が出ないんですけど、なるべく声をかけています。問題は端にある炭場からなかなか動けないこと。どうしても反対の端は遠くなるので、パエリアあたりの一旦落ち着くタイミングがチャンスです(笑)
 個人的な話は、隣の人が嫌だと思うのでできるだけしません。横の人が入って来られるような普遍的な話題を振っています。食べ物とか、産地の話とか。
東 鉄雄さん アカ

表面上の反応ではなく再訪してくださるのが答え

 会話はもともと得意じゃなくて……少しでも気の利いた会話ができるようになりたいと思っています。でも、やってみるとカウンターは本当におもしろいですね。黙っている人が喜んでいないわけではないし、派手な歓声が本心とも限らない。答えは二度三度来てくださるかどうかしかないんですよ。
 自分はまだどうしても表面上の反応に左右されてしまうので、揺るがない自分になるべく修業中です。
木山義朗さん 木山

text 東原じゅり(東京)、藤田アキ(関西)
photo 中西一朗(フランツ、サッカパウ、ペタンク)、星野泰孝(サンプリシテ)、依田佳子(虎峰)、畑中勝如(祗園びとら、、祗園245、アカ)、川瀬典子(ラ ルッチョラ)、三國賢一(木山)

本記事は雑誌料理王国2018年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2018年9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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