KEIICHI SHINOHARA|何度でも行きたくなる、地元で愛される店を目指して。


コンコルド広場そばの老舗高級レストランMaxim’sのシェフを約7年務めた篠原啓一さんが、2020年7月、9区にレストランAlleudiumをオープンした。「みんなが気軽に食べに来てくれる店にしたい」との思いから、南仏リゾートを思わせる、カジュアルシックな店になっている。

Carpaccio de Poulpe aux condiments

意外にも、キャリアのスタートは大学時代のバーマンとしての経験。「カクテルって、レシピは同じでも、作る人によって味が全く変わって面白いんです。料理と似てますね」。その後は、東京のイタリアンやフレンチで、料理人として働いた。30歳を目前にして、「このまま日本で何となく過ごすのではなく、自分にどこでも生きていく力があるかを知りたい」と、2003年に渡仏した。

Aile de Raie cuite au bouillon fermenté

パリでは、クリスチャン・コンスタンを経て、1区のGoumardへ入店、スー・シェフまで務めた。その後、Maxim’sへ。「30年以上働いているスタッフもけっこういて、新参者には厳しい雰囲気がありました」。努力の甲斐あり、2011年の11月にシェフに任命された。地元パリの顧客もいたが、旅行客の需要が高く、テロ事件などが起こると、来客数は極端に減る。地元客の重要さを知った。

Rhubarbe confite au jus d’hibiscus et fraises fraîches, émulsion meringue

Maxim’sを離れてから、1年ほどの休息期間を経て、自身の店を開くことを決意。「高級な食材を使っても、食べてくれる人がいないと意味がない。だから、味の良いものを手軽な価格で楽しめる、地元のお客さんに頻繁に来てもらえる店にしたかったんです」。前の店ではクラシック寄りのフランス料理と方針が決められており、アジアや日本食材は使えなかった。「今は自分がおいしいと思う材料は、何でも使います」。これまでの技術をベースに、自由な発想で、価格に見合った厳選食材で料理を作る。篠原さんの新しいステージは、今始まったばかりだ。(恵)

Boules neiges d’amande grillée au romarin, coulis d’abricot
 
Rhubarbe confite au jus d’hibiscus et fraises fraîches, émulsion meringue

Alleudium
Adresse : 24 rue Rodier, 75009 Paris
TEL : 01.4526.8626
アクセス : M. Cadet / Anvers
URL :https://www.alleudium.com/
日月休 12h-14h15 / 20h-22h30
昼のメニュー:火〜金 19€ / 土 24€ おまかせ: 昼(4皿)37€/夜(5皿)49€

取材・文=吉田 恵理子ワイン&フードライター。コピーライター。
1975年生まれ、フランス・パリ在住。お茶の水女子大学博士前期課程修了、人文学修士(西洋哲学)。都内の広告制作会社を経て、コピーライター、ライターとして独立。フランス国立ランス大学HEG(美食に関する最先端研究機関)に留学。英国ワイン&スピリッツ教育財団(WSET)アドヴァンスト資格所持、英国酒ソムリエ・アソシエーション(SSA)認定酒ソムリエ。著書に『ランチタイムが楽しみなフランス人たち』(産業編集センター)、『ワインを飲めばすべてうまくいく 仕事から恋愛まで起こる10のいいこと』(インプレスICE新書)がある。ワイン専門誌、パリの日本語新聞「オヴニー」に寄稿。Twitter:@erikomri_wine


本記事はOvni navi 2020年の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

【記事提供】

フランスをもっと楽しむ
le media franco-japonais
https://ovninavi.com/


SNSでフォローする