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なぜカウンターに立つシェフに惹かれるのか?(関西編)


シェフ自らゲストをもてなし、目の前で料理を披露して、会話で店の雰囲気を作りだす。カウンターというステージで、一人三役も四役もこなすシェフは、最高のエンタテイナーといえるだろう。

グランメゾンにはないライブ感、家に招かれたような親密感、ワクワク感とある種の緊張感。非日常と日常の垣根を巧みに飛び越えるシェフに、その秘密を聞いた。

1:【ラルッチョラ 大阪】鈴木浩治さん

Koji Suzuki
1974年滋賀県生まれ。スイスで経験を積み、帰国後は大阪のイタリアン「コロッセオ」など数軒で修業。中央市場の鮮魚店「文亀」で魚を学び、2006年「ラ ルッチョラ」オープン。

ーなぜカウンターなのか?

お客さまを感じながら料理したい

福島は昔からよく飲みに来ていた町。人の空気感が合うというか、割烹みたいにお客さまを感じながら料理ができる町だと思って開業しました。だからコースでもかなり融通を利かせてますよ。深夜帯は2軒目使いの方も増えますし、量を減らしたり酒に合うものを即興で提案したり。ボトルワインを「これ、あちらにも一杯」って隣に勧めてくれる方がいるような、まぁ福島らしい酒場ですよね。

そんな気楽な店で旨いアテが出てきたら最高でしょ。「適当に」なんてオーダーも全然OK。好みを相談して、味の加減もしています。時代に逆行したスタイルなのは承知ですが、だからこそ廃れずに続けていられるんじゃないかな。いずれ移転をと考えているんですが、次も絶対カウンター中心ですね。

大阪市福島区福島6-9-17
☎06-6458-0199
● 12:00〜13:30、18:00〜24:00
昼・夜ともに要予約
●不定休
www.lucciola.net

2:【祗園びとら 京都】谷口晶紀さん

Akinori Taniguchi
1974年京都府生まれ。京都のレストランを経て3年間オーストラリア等で修業。「レストランヴィトラ」の料理長を経て、16年に「祗園びとら 、 」シェフに就任した。

なぜカウンターなのか?

個々に特別感を演出できる

以前は厨房に籠って料理をしていましたが、今は料理人もお客さんと接するべき時代。前店の「レストラン VITRA」でシェフズカウンターを設けたところ、テーブル席よりもカウンターを指定される方が結構いらっしゃいました。目の前に素材を積んでいるんですが、野菜の話になったらそのまま少し切って食べていただいたりと、個々に対応できるのがいいですね。

やはり特別感がある。それも皆さんそれぞれに合った、ちょっとしたおまけを提供できるのはカウンターの醍醐味だと思います。うちの基本的なテーマは"非日常"。ですからプラスチックのタッパーやラップなど、生活感のある道具は絶対にお客さまには見せません。盛り付け用の野菜もホーローのバットに並べて運びます。

京都市東山区祗園末吉町82-7
☎075-532-0701
●17:30〜要予約
●日、祝休
www.vitra.jp

3:【祗園245 京都】吉岡正和さん

【祗園245 京都】吉岡正和さん
Masakazu Yoshioka
1977年大阪府枚方市生まれ。ホテルフレンチを経て2003年に「カノビアーノ京都」に入店。1年間ヨーロッパで過ごし、各国で研鑽を積んだ後、11年9月に「祗園245」独立オープン。

ーなぜカウンターなのか?

やりたい料理ありきの店舗設計

よく独創的だと言われる構成要素の多い皿が10 皿も続くので、やりとりする回数が多いんです。でも信頼して説明を任せられるスタッフに巡り合うのは難しい。じゃあ自分で全部説明しよう、と思ったのがカウンターを選んだ理由。やりたい料理が決まっていたからカウンターになった、という順番ですね。それと温度変化が少ないまま提供できる距離なのもポイント。運んでいるうちに構成が崩れては台無しですから。

お客さま側からいえば、例えばカップルで会話に困ったとき、調理風景が見えれば間が持つというのも実は大きいと思います。あれ何かな、どうなるのかなって暇潰しになるし、共通の体験が生まれるでしょう。あ、もちろん僕との会話も楽
しんでもらいますよ(笑)。

京都市東山区新門前通花見小路東入ル
中之町245-1
☎075-533-8245
●12:00〜14:00LO、18:00〜21:00LO
●火休
www.gion-245.com

4:【アカ 京都】東 鉄雄さん

【アカ 京都】東 鉄雄さん
Tetsuo Azuma
1978年京都出身。輸入車の営業職から25歳で料 理人に転向。京都「ラ・マーサ」でスペイン家庭料理や郷土料理を学び、スペイン研修でモダンスパニッシュも経験。2013年独立。年内は満席、来年の予約は10月受付開始。

ーなぜカウンターなのか?

料理人として最大限に気遣うため

オープン1 年目はバルだったんです。だから居抜きのハイカウンターでも問題なかったんですが、コースを出すのにこの高さはどうなのか、と悩みました。ただカウンターでコースをやる意義はあると思っていて、それは例えばお客さまの様子を見て料理の内容や提供スピードを変えられること。

予約の名前じゃわからなくても、お連れさまの顔を見たら先週来た人だったりするんですよ。じゃあ先週とは違うものを作ろう、とかね。内容はその場でどんどん変えますし、隣の人と違う料理が出てもいいんです。

「次はあれが食べたいな」と思ってもらえれば。そりゃバタバタしますけど、客席も全体的にガチャガチャしてるから別にいい(笑)。ほら、ノリがいい方がいい仕事ができることってあるでしょ?

京都市中京区桝屋町55 白鳥ビル2F
☎075-223-3002
●12:00〜13:00入店、18:00〜21:00入店(要予約)
●日休(月が祝日、大型連休の場合は最終日休)
http://aca-kyoto.jp/

5:【木山 京都】木山義朗さん

【木山 京都】木山義朗さん
Yoshirou Kiyama
1981年岐阜県生まれ。19歳で京都の「和久傳」に入社。「高台寺和久傳」を経て、京都駅ビル「はしたて」の立ち上げ、「京都和久傳」の料理長などを経験。17年4月「木山」で独立。

ーなぜカウンターなのか?

所作=文化を見ていただきたい

一番の理由は、お客さまの顔が見たいという思い。感想が欲しいというよりは、長年裏方に徹してきて、料理の味だけではなく所作も見ていただきたいと思うようになったんです。所作を意識することも修業のひとつでしたので。個室でも目の前に立ちたいという思いから、メインカウンターと別にカウンター個室も設けました。

空間作りで気をつけているのは、自然ではないもの、例えばステンレスなどの材質をお客さまの目に入れないこと。唯一蛇口が出ていますが、これは井戸水なのであえてお見せしています。カウンターの内部も手元が目隠しになっていて、器具や材料は一切お客さまの目に触れません。こうしてほどよい緊張感の中でお客さまと対峙していると、自分と毎日向き合えている感じがするんですよ。

京都市中京区堺町竹屋町通下ル西側
ヴェルドール御所1F
☎075-256-4460
●12:00〜、18:00〜(要予約)
●不定休
●24席


藤田アキ=取材、文
畑中勝如(祗園びとら、、祗園245、アカ)、三國賢一(木山)=撮影

本記事は雑誌料理王国第289号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第289号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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