ほんまもんだけを取り扱う京都のスーパー「フレンドフーズ」が求める商品とは?


料理王国100選プロデューサーの中村が、食材探しや食品流通の現場からレポートする「料理王国100選日記」。
第二回目は、京都・下鴨で他所では買えない商品で人気のスーパーマーケット「フレンドフーズ」から、商材の選定、販売の思いや店作りなどを取材。メーカー側に求められる商品作りのヒントを得て来ました。

料理王国100選は、本誌で取材してきた食材やシェフたちが自信を持って推薦してくれた食材、熱意ある生産者やメーカーからの公募品など、これまでに累計約1,100商品以上を審査してきた品評会です。品評員には、百貨店や専門店などの名だたるバイヤーたちに加え、料理王国でも何度も掲載してきたトップシェフたちが名を連ねているのが特長です。エントリー商品のレベルも年々高まり、品評員からも「店で使いたい」「取引して仕入れたい」という声がますます挙がっています。つまり、料理王国100選で高く評価されるということは、単に彼らの評価を聞くことが出来るというだけでなく、食品専門店での販売やトップシェフたちのレストランのメニューに並ぶチャンスを得る、ということです!

2024年度は、品評会、ウェブでの入賞商品の速報が終わり、1月6日発売の24年2月号での優秀賞の発表を残すばかり。現在は2025年度に向けた準備に奔走しています。

閑静な住宅街にプレミアム食品が並ぶ

そんな中で今回は、品評員リストの中の一人でもある京都のスーパーマーケット「フレンドフーズ」で、独自の店舗運営とそのために求める商品についてお話を伺ってきました。

場所は左京区、北山駅から10分ほど歩いた場所。京都ノートルダム女子大学(通称:ダム女)の近くで、繁華街や観光地とは別世界の、街路樹が立ち並ぶ閑静な住宅地にあります。

予定よりも早めに着きましたが、早速入店しバイヤー感覚で店内の品揃えを拝見すると、見たことの無い商品が散見されます。それほど広い店ではないのですが、これだけの商品数を管理し販売していることに驚きました。小売では「フレンドフーズ」でしか扱っていないプレミアムな食品もあります。

フレンドフーズ外観

商品は分からんです

これは相当なレベルのバイヤーがいるのだろうな、と思いながら予定時刻を迎え、代表取締役社長の藤田俊さん、専務取締役の藤田郁さん、の2人からお話をうかがいました。

「どのように商品を仕入れているのか?」

単刀直入に社長に聞くと意外なことに
『僕はバイヤーではないので商品は分からんです』
と言われ、「え?」となりました。

『先代は自分でかなり個性的な買い付けをしていたが、今は専門領域を持つそれぞれの担当者に仕入れを任せている。自分は経営に専念し役割分担している』としてお店の営業を中心に話してくださいました。

代表取締役社長の藤田俊さん

万人に好かれる店ではない

「フレンドフーズ」は1977年に開業。4〜5年前に先代より跡を継いだのですが、なんとIT事業の社長も兼務しています。これはかなり意外でしたが、外食が大好きで、料理人と一緒に遊ぶこともよくあるそう。やはり、食通の血が生きているのだと思いました。
『出店してほしいという話はようあります。しかしウチらしさが無くなる。非効率な店だと思うし、そもそも万人に好かれる店ではない。』と語ります。

社長の外食好きルートから仕入れる銀座の会員制バーの調味料。ここでしか買えない。

会話が多い店

『正社員比率は高いです。自分が惚れ込んだものを仕入れ、その熱量のままに自分で売り場を作り、自分でお客様にお薦めするんです。お客さんと濃い付き合いをして、友達になるようなもの。店は【共通の趣味を持っている人の集まるハコ】なんです。』
お客様は神様ですと大昔の言葉はありましたが、全く感覚が異なり、目からウロコでした。

『お店に1時間いるお客さんはザラにいます』というように実際に滞留時間も長く、これは小売業の売上を最大化する手法の一つであるインストアマーケティングの基本、滞在率と接触率です。
凡百のスーパーマーケットが「こだわり食品」を導入しても売れない理由はここ。セルフレジやパートさん頼りで人件費を圧縮した効率重視では商品説明もできませんし、戦後から始まったセルフサービス式の食品小売の限界と転換点をここに感じました。そして逆にメーカー側に立っていえば、「こだわり食品」をかかげるだけのスーパーマーケットに卸したところで、仮に初回の納品は多かったとしても、長続きはしません。お店で売れないからです。

京都の飲食店によるオリジナル商品も多い

流通素人による仕組み作りと業務改善

経営を引き継いで行ったことは仕組み作りと業務改善。『僕は流通の素人』と言いながら、IT社長ならではの手法で、利益を出すためにはどうするかを実践してきました。

一つは【ノウハウ共有】。

バイヤーは商品を仕入れる際に基準があるはずですが、多くは『こだわり』とか『差別化』など抽象的で言語化されていません。「フレンドフーズ」ではこれを、ナレッジマネジメントの手法で暗黙知ではなく形式知にして行ったのです。
その象徴的な事例が、ブランドブックを作成し、食品それぞれのカテゴリーの取り扱い基準を明文化したことです。また、この規模の小売業では非常に珍しいことに、その中にはカラートーンの指定もありました。
『これは不定期に内容を見直し、変えていきます』と、常にアップデートされるそうです。

もう一つは【伝える事】。

対外的には、コミュニケーション量と来店数増大のためにSNSに注力し、プレスリリースも発信していますが、それ以上に驚いたのがSlack(チャットアプリ)による全スタッフへの情報共有です。口頭による伝言ゲームや紙ベースではなくスマホを活用し、意思決定や部門の垣根を越える情報伝達のスピードアップが為されています。
これは他の一般的な食品流通業ではまず見かけない手法です。
また、社内環境がこのように変化することで有名なITベンチャーなど異業種からの転職者も現れたようです。

ブランドブック

生産者・商品に対しての考え

生産者(メーカー)に対しては『ちゃんと利益をとってほしい』という考えで、価格交渉による仕入れはしていません。あくまでも商品の価値を理解し納得して購入するお客様が対象なので値引き販売もしていませんし、そうした商売のやり方でないと生産も販売も長続きしないから、といいます。製造する目的がしっかりしていない商品はどれだけ提案されても仕入れることはなく、一流バイヤーと全く同じ考え方です。

店内製造のお惣菜は、毎朝の出汁取りから行うという自社製造のものに加え、惜しまれつつも閉店した錦市場の老舗惣菜店「井上佃煮店」の元店主である梅村さんに入ってもらい、その味と作り手を引き継いでの販売もしています。洋惣菜に使うデミグラスソースも店内で牛骨を焼くところから始まるという先代の食への強いこだわりが残っていたことが印象的でした。

井上佃煮店の惣菜

良いものを並べるだけでは売れず、良いものを作るだけでも売れない。
紹介(消費者コミュニケーション)に時間をかける。

『買い物をエンタメにしたい』と語る「フレンドフーズ」に商品を卸す生産者さんはさぞ幸せだろうなと思いながら、社長のユニークなお人柄にも触れ、楽しい取材となりました。

フレンドフーズ
京都市左京区下鴨北園町10-6
TEL:075-722-0451
https://www.friendfood.jp/

料理王国100選では毎年の品評会を通じて、生産者と、トップシェフたちの飲食店や「フレンドフーズ」のような販売店とをつなぎ、優れた食材が適切な流通に乗るきっかけを作ることで、地域の伝統的な食文化や地方経済の発展に貢献したいと考えています。
トップシェフやバイヤーたちに試食、品評してもらうことで、その食材、食品、食文化の価値を認めてほしい、さらに高めていきたい。そんな生産者様やメーカー様、自治体様は、ぜひ下記からお問い合わせください。

「料理王国 100選」事務局
https://cuisine-kingdom.com/100item
担当:中村和久
nakamura@cuisine-kingdom.com

text:中村和久(料理王国100選プロデューサー)

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