2023年12月14日
油の中で小気味よい音を立てながら香ばしい香りを放つ天ぷら。
「もっとも相性が良いのはシャンパーニュ」とソムリエの市村暢央さんは熱く語る。料理担当の石井宏道さんと三浦幸喜さんもまたぺアリングの研究と検証に余念がない。
ペアリングの成功には、スタッフの「息の合ったペアリング」が欠かせないのだ。
天ぷらとのペアリングといえばビールや日本酒を選ぶ人が多いが、日本を代表するソムリエのひとりである市村暢央さんは、シャンパーニュを推す。シャンパーニュと天ぷらを合わせて、「シャンぷら」なる新語も発信中だ。
「シャンパーニュは、天ぷらの衣のさっくりとしたクリスピーさそのままに、全体に軽やかとキレを与えます。ゲストを飽きさせることなく何種類もの天ぷらへとつないでくれる。天ぷらが鍋の中で発する泡とグラスの中ではじけるシャンパーニュの泡―― 実はこうしたことも共通項として挙げられるんです」と語る。(市村さん、以下同)
長年の知識と経験からペアリングのルールも確立された。「第一段階としては、視覚、香り、味わいを合わせることです。視覚的には料理の色合いとシャンパーニュの色が引き立て合ったり、馴染んだりするような演出を心掛けること。香りについては天ぷらの風味を軽やかにする組み合わせにすること。味わいは臭みを立てたりせず、料理の風味とシャンパーニュの複雑さが響き合うようにすることが大切です」
香箱ガニはボイルしてほぐした身を甲羅に詰めて天ぷらに。天つゆづけにした外子と一緒にいただく。組み合わせたのは見た目にも美しいロゼ・シャンパーニュ。「シャルドネのエレガントな酸味による引き締め効果を感じながら、ピノ・ノワールのやさしさや消臭効果が生み出す雑味のないカニのうま味を味わってほしい」と市村さん。