プロが伝授!乾燥パスタのアルデンテの持続性を長くするテクニック


タイプの違う乾麺はこう扱う

工業製品として品質の安定した乾麺を皿上でよりおいしくさせるゆで方、手作りに近い乾麺の魅力を引き出すゆで方、タイプのまったく異なる乾麺の扱い方を公開します。

SPAGETTELLI スパゲッテリ

● 製造者:ディ・チェコ社
● 原材料:タンパク成分の多い硬質小麦を、一部契約栽培。イタリア、ヨーロッパ諸国、米国から調達する。
● 製造方法:自社製粉で粗めのセモリナに挽き、良質なグルテンを形成する。マイエラ山の清水を使い低温で生地を練ることで、デンプン質の変化を抑える。「フィリッポ」シリーズは、より表面のザラツキを強くし、小麦粉の風味を重視している。

アルデンテの持続力を長くするテクニック

「リストランテ山﨑」高塚良さんが乾麺を選ぶときに着目するのは、粉の風味の立ち方、パスタそのものの味、スパゲッティの場合はアルデンテの持続力、ショートパスタなら噛み応え、といった点だ。「メーカーによって、ロングがいい、ショートは旨い、など得手不得手があると思います」。

スパゲッティは、ランチ時のみ提供しているが、麺を選ぶにあたって、各社製品について、ゆで時間の違い、時間の経過でアルデンテの持続力を調べた。求める機能と費用対効果とのバランスで選んだのが、ディ・チェコ社の「ディ・フィリッポ スパゲッテリ」だ。ソースと和えるパスタの場合、高塚さんは表示にあるゆで時間の約半分で麺を引き揚げる。そして、別の鍋に用意したソースを温めてここに麺を投入する。パスタの吸水具合を見て、水分が足りない場合は、パスタのゆで汁でなく温めた野菜のブロードを足して味と食感を調整していく。この間、温度を下げないことが皿の上でアルデンテを長く持続させるポイントとなる。「手はかかるけれど、こちらのほうがパスタは断然おいしく仕上がります」。

日本人は、イタリア人に比べると食べるスピードが遅く、スパゲッティものびがちだ。しかし素材の選び方とゆで方の工夫で、打つ手はあることを証明してくれた。

ゆで方のポイント

①調理前のスパゲッティ。表面は真っ白に粉をふき強いザラツキ。標準ゆで時間は10分間。太さ1.8㎜。

②湯温は約100℃。つねに沸騰した状態をキープしてゆでる。塩加減は、海水よりやや弱いぐらい。イタリア産岩塩を使って塩味をしっかり入れる。

③標準ゆで時間の約半分(5分)で麺を引き上げ、温めておいたソースに入れる。

④ソースの温度を下げず、水分がなくなったら野菜のブロードを足す。泡が少し立つくらいの温度でパスタをかき混ぜながらソースを吸わせる。

⑤ソースが乳化し全体が白 っぽくなったらほぼ完成。味見をして、芯が残るぐらいで火を止める。

グアンチャーレとタマネギとスクランブル・エッグのスパゲッティ
高塚さんは、タマネギソースのスパゲッティが大好き。まかない飯だったが、リストランテで出せるように工夫したのがこちら。甘いタマネギソースの染みたスパゲッティの下に、ゆるいスクランブル・エッグを敷き、上からグアンチャーレで包んだ。カルボナーラの構成を変えたようなユニークなレシピ。スパゲッティの熱で溶けかけたグアンチャーレに麺をからめながら食べる。

リストランテ山﨑
高塚 良さん Ryo Takatsuka

1979年富山県生まれ。19歳でイタリアに渡り、ヴェネト州の二ツ星リストランテ「ベルベッリーニ」を中心に約10年間イタリアで修業。複雑な要素を構造的に組み立てる料理が得意

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