2001年に南青山の「リストランテ濱崎」を開店した濱崎龍一シェフは、トスカーナやロンバルディアで修業したのち「リストランテ山﨑」を経て、今に至る。シェフのこだわりは、全国の生産者から選りすぐった旬の素材。仕立てる一皿一皿から食材と真摯に向き合う姿が垣間見えるが、なかでもパスタ料理は特別なものなのだそう。
「パスタは一番、自分のやりたいことが表現しやすい料理。調理法や使う素材まで、選択肢が無限にあるところも魅力ですね。流れがあるコースのなかでは、特に大事な存在。旬の食材から深く掘り下げることで、コースにも奥行きが出ます。今ならポルチーニや松茸かな」
パスタは自ら手打ちすることも多いが、一度食べてからすっかり虜になったのが「Pastificio dei Campi(カンピパスタ)」だ。
「今まで食べたパスタのなかで、圧倒的においしいかった」。食感や形などパスタを選ぶ基準は様々だが、徹底的に“おいしさ”を追求したのがこちら。パスタ発祥の地・グラニャーノで生産され、原料は100%イタリア産。効率が求められる時代に中世の製法に立ち返り、小麦から手間ひまをかけて作られている。ほかにない香りと弾力を出すためには、ミネラルが豊富なグラニャーノの水も重要な役割を持つ。こうして完成した品は、その希少性とクオリティから卸先を厳選し、世界の一流シェフのみが愛用できる特別なものとして知られるようになった。
「小麦からこだわるから、香りもいい。グラニャーノの人々が信念を持って作っていることにも惹かれましたね」
カンピパスタは、パスタ分野で世界初となるトレーサビリティシステムを導入したことでも知られる。公式サイトから製造の全行程を追える、いわば“生産者の顔が見えるパスタ”。おのずと濱崎シェフがカンピパスタに出合ったのもうなずけた。
さらにもう一つの特徴は、一般的なものよりも2%ほど水分量が少ないこと。「この乾燥具合を生かすために、メニューを考える際は食材のうま味を吸わせるレシピがほとんど。麺を茹で上げてから和えるのではなく、硬い状態で上げ、素材と煮込みながら仕上げる。ほかのパスタでは絶対出ない奥深い味わいになります」。
今回はコース料理に、ニョケッティと幅広タイプのリングイネを使う2品が仲間入りした。ニョケッティは「白薩摩長茄子とバッカラ(塩干し鱈)のニョケッティ和え」に、リングイネで仕立てたのは「黒毛和牛のイチボとポルチーニ茸のラグー」だ。
「ニョケッティはバッカラとブイヨン、しじみの出汁を足しながら煮込みます。ソースと絡みのいいリングイネは、鹿児島産黒毛和牛とポルチーニ、マッシュルームなどとラグーに」
作りながら思うのは、グラニャーノの作り手たちのこと。「いつかこのパスタを作っている人たちにも、僕の料理を食べてほしい。いっしょに何かできたら嬉しいですね」。
The Best Pasta
Pastificio dei Campi(カンピパスタ)
かつてナポリ王宮に納めていたパスタの製法を踏襲し、自社の畑で育てる原種イタリア産デュラム小麦から作られている。栽培は中世と同じ3年周期で、農薬も使用しない。通気性のいい布製サイロで保管された小麦を伝統のグラニャーノ製法でパスタに成形したのち24 ~72時間じっくり低温で乾燥。そのクオリティから卸し先も厳選し、世界の最高級レストランや販売店などにのみ流通する。IGP認定も取得。
問い合わせ先/株式会社ニップンインターナショナル
TEL 03-3350-4510
http://www.nippninter.net/
リストランテ 濱崎
東京都港区南青山4-11-13
TEL 03-5772-8520
◎ ランチ(木・金・土のみ)12:00 ~14:00 LO、ディナー18:00 ~21:30 LO
◎ 日曜、祝日の月曜、年末年始
http://ristorantehamasaki.com/
次は、Melograno 後藤祐司シェフのパスタを紹介します