イタリアンの神髄を受け継ぐ注目のシェフ「エル ビスカッティーロ デイ マニャッチョーニ」山﨑夏記さん


銀座で長く続く店を目標に
イタリア人が食べて違和感のない味を

日本とローマでじっくり修業
ローマでは2年でシェフ採用に

「ローマ料理は内臓を使った料理が多い。よい部位は貴族へ回され、庶民は内臓や尻尾を工夫して食べていたという背景があるから」

そう話す山崎さんは、前「カピトリーノ」シェフの吉川敏明さんに師事し、日本でローマ料理を学んだ後、ローマに渡り6年間を過ごした。「修業は一カ所でじっくりするように」という吉川さんの助言もあり、ローマではひとつの店で働き続けた。

「日本へ帰ることが目標ではなかったので、ローマに根を下ろして生活を成立たせることが重要でした。2年目からシェフとして店を任されるようになると、待遇が変わり生活が成り立つようになったんです」

そんな中、当時イタリアから世界へ店舗を拡大していた「イータリー」の日本店舗の総料理長として山崎さんに白羽の矢が立った。

「吉川さんから電話をいただいて、一度はお断りしようと思ったんですよ。でも、ローマにオープンした『イータリー』を訪れると、料理はおいしい、店は格好いい。こんな店が日本にできるなら総料理長をやってみたいと、帰国を決めました」

満を持してオーナーシェフへ気負わず、自身の感性に従う

帰国後は「イータリージャパン」の総料理長として1年、その後レストランのプロデュースを経験し、昨年「エル ビステッカーロ デイ マニャッチョーニ」を銀座に開店。ここでは、自身の料理人としてのルーツでもあるローマの伝統料理と、ビステッカを主軸に提供している。

「メニューには自分が食べたい物を出しています。ビステッカはイタリアでよく食べていましたが、日本では食べられる店が少ないし、あっても値段が高いでしょう。それなら自分で作ればいいと考えたんです」

日本人の好みには寄せず、イタリア人が食べて違和感のない味付けを心がけている。「日本人としてイタリアでおいしいと感じた味なのだから、日本でも受け入れられるはず」という考えだ。

仔羊のカッチャトーラ風
ワインビネガー、アンチョビ、ニンニク、ローズマリーを用いた酸味のあるソースが特徴。
羊肉はローマ人にとって最も身近な肉で、クリスマスや復活祭などイベント事には欠かせない。

山崎さんに今後の目標を尋ねた。
「簡単ではないけれど、銀座で長く続けることが目標。自分で店をやるようになって他店は気にしなくなりました。一日中店の中にいて、必死で戦っているのはみんな同じだと思うから」

ローマ名物のカルボナーラ、看板メニューのT ボーンステーキなど、
山崎さんが正統ローマ料理とともにステーキ職人としても腕をふるう。
黄色い看板が路地で目に留まる。ロゴに描
かれているのは、狼に育てられた双子の兄
弟ロムルスとレムス。ローマ建国にまつわ
る伝説の人物だ。

エル ビステッカーロ
デイ マニャッチョーニ
Er bisteccaro dei magnaccioni
東京都中央区銀座3-9-5
伊勢半ビルB1F
☎03-6264-0457
● 11:30~14:00 LO
18:00~23:00 LO
●月休
●昼 コース1200円~1500円
夜 平均予算8000円
●30席
bisteccaro.tokyo

田中英代=取材、文 小寺 恵=撮影

本記事は雑誌料理王国262号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は262号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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