本記事は、5月7日(木)発売の料理王国6・7月合併号緊急特集「コロナ時代の食の世界で新しい「ものさし」を探しに。」に掲載中の記事から、現在の状況を鑑みて特別に公開するものです。
約1,500軒。恵比寿駅から半径2km圏内にある飲食店の数だ。都内有数の飲食密集地にして住宅地。そこに住み、働き、つなぎ役となってきた人がいる。地域応援型ローカルウェブマガジン「恵比寿新聞」を運営する髙橋ケンジさんだ。
「もう、じっとしていられなくて」。そう語る髙橋さんの動きは早かった。新型コロナウイルスの影響で売上が低迷する飲食店と商店に向けて「恵比寿新聞のSNSアカウントを解放。どうぞ宣伝に使ってください」と告知したのは3月11日のこと。16日にはテイクアウトを始めた飲食店のマップを作り始め、今は代官山商店会とも連携して「恵比寿・代官山・広尾テイクアウトマップ」を人力でアップデートし続けている。ちなみにこの「恵比寿新聞」、広告はない。あるのは語り手・髙橋さんの存在と取材先への想い。人情肌のお兄さんがそこにいてくれる安心感だ。
そんな髙橋さんだから、みんなに頼られる。そして試行錯誤の中、新たなビジネスモデルの萌芽「TOKYO FOOD OUT」が生まれた。ひと言でいうと、料理番組とテイクアウトが一緒になったYouTubeライブ配信である。「恵比寿ガーデンプレイスで「AALAAP LENE WAALA(アーラープ・レーネー・ワーラー)」をやっている田島大地さんから「いろいろ相談したい」と話があって。夜中に「コロナどうしようねー。どうせ人来ないよね」って。じゃあ料理を教えて、そこで作ったものを売ればいいじゃん、と」。
発案から準備まで5日間。テイクアウトチケットはイベント管理・チケット販売サイト「PEATIX」で発売し、日曜午後にYouTubeライブ配信に漕ぎ着けた。この日のランチボックスは、ラタトゥイユマサラとマッサマンチキンカレー、キャベツのコールスロー、スパイス卵などがセットになって1食1,500円。配布は予約購入者にのみ場所を伝え、時間をずらして取りに来る《脱三密》方式だ。
また、ライブ配信では田島さんの料理風景とレシピを紹介しつつ、食の分野のベテラン編集者をゲストに招き、ツッコミや解説をつけてもらった。やってみれば「次回はLIVE配信を見てから予約する方がもっと売れるんじゃないか?とか、事前決済にしようとか、引き渡し場所をレストランにすれば、シェフの瓶詰や他の御惣菜も売れるなとか、デリバリーを店のスタッフの子がやってもいいねとか」内外からアイデアが続々。著作権問題がクリアできれば、活躍の場が失われたDJも絡ませ、音楽とともに届けたいという強い想いも持っている。
髙橋さんの取り組みはすべてオープンソース。今後、新たなビジネスモデルとして、その街・その場所で活用されることが本望だ。
たかはし・けんじ
DJを目指して上京し、2009年、自らが住む町・恵比寿の地域応援型ウェブマガジン『恵比寿新聞』を立ち上げる。2014年、恵比寿ガーデンプレイスに、知識を共有するパブリックスペース「COMMON EBISU」や未来型図書館「感想文庫」をプロデュース。 2016年、渋谷区初の地域子育てコーディネーターとして渋谷区非常勤職員に。NPO法人アーバンファーマーズクラブ理事、「シブヤのラジオ」ナビゲーターなど編集者・発信者として活動は多岐にわたる。
恵比寿新聞
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YouTube『TOKYO FOOD OUT』
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text 佐藤貴子
本記事は料理王国2020年6・7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2020年6・7月号当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。