「ポレンタ」のキャッチフレーズは「イタリア料理で気軽に一杯」。
イタリアでの修業を経験し、ソムリエ資格ももつ石川英司さんが、現地の味にこだわって6年前オープンした。繁華街に近い寺町通、客単価は3500円。内外装や厨房設備、ワインセラーなどにしっかり投資して、後悔しない店舗設計を行った。
ただし、営業を始めてからも、次々にスタイルを変更した。まずランチ営業を3カ月でやめた。入り口すぐの立ち飲みスペースは撤去し、席数を20から30に増やした。思いついたことはどんどん実行した。その甲斐あってか常連客は着実に増え、経営は軌道に乗ったかに見えた。
しかし開業から半年で、元電気屋街である寺町通はどんどんさびれていった。ついに両隣の電気店とレンタルビデオ店が閉店。静まり返った町で、石川さんは「本格的にやばいかも」と不安を抱えていたという。次々にアイデアを実行し続け次の目標に向かって進む。
幸いにもその後スーパーや飲食店が建ち、町は活気を取り戻した。それと平行して、オープン3~5年で変更してきたことがある。
まずスタッフをひとり増やし、社員3人とアルバイトひとりの4人体制に。人が増えたことで、手の込んだ料理を作る余裕ができた。イタリアにない素材は使わないという縛りも外し、地元の食材や季節感を取り入れた。今では丹後の猪を一頭買いするなどして、京都の素材が堪能できる店に。13年には、シニアソムリエの資格を取得。ワインコンクール「Jet cup」東京本選に出場するなど、石川さんの努力が実を結んだ。開店当初5000円ベースで揃えていたワインは、現在5万円までを備えるラインナップになり、料理のランクアップと合わせて、客単価は5000円にまで上がった。
ここ2年は、ケータリングや他店のコンサルティング業務なども受けるようになった。石川さんは、最初から多店舗化を視野に入れて、セントラルキッチン機能を備えた厨房設計を行っていたのだ。経営の多角化に対応できる上、内装の経年劣化も最小限に。思い切った初期投資が、今になって効いているのだ。
石川さんが考えている次の一手。酒販免許を取得して、元立ち飲みスペースでワインを販売する。飲食店の人材派遣システムを構築する。産地にもっと足を運ぶ。そして2号店を出す。場所はもちろん寺町通の近くでと決めている。妥協せず、じっくり物件を見定めるつもりだ。
生の海鮮とエシャロットなどのあんををイカ墨入りのラビオリで包み、オマールやアサリのだし、トマト、サフランなどのスープとともにフィルムごと加熱。卓上で開き、立ち上る香りも楽しむ、手の込んだひと皿。
1978年 三重県に生まれる。
1998年 京都で計6年、アメリカで2年、
イタリアで1年、札幌などでも修業。
2008年 ソムリエ資格取得。
2010年 独立 「オステリア エ バール ポレンタ」開店。
ランチと立ち飲みスペース廃止。
秋頃、席数を20席から30席に増やす。
2012年 カウンターに棚を設置。
料理の縛りを緩める(日本の素材も使用するようになる)。
2013年 シニアソムリエ資格取得。スタッフ増員。
2014年 開業から続けている「ポレンタ新聞」を本にまとめる。
2015年 ワイン勉強会開始。
2016年 酒販免許申請。酒販免許取得でき次第、ワイン売り場設置予定。
1978年三重県出身。京都の「リストランテdivo-diva」に3年勤務した後、アメリカLAで2年を過ごす。北海道のホテルとイタリア料理店を経て渡伊、ピエモンテ州とヴェネト州で計1年修業を積
む。2010年5月独立。
オステリア エ バール ポレンタ
OSTERIA E BAR POLENTA
京都市下京区寺町通仏光寺下ル
恵美須之町546-1
☎075-352-3227
● 18:00~翌2:00(翌1:30LO)
● 水休
●ア ラカルト350円~、パスタ900円~、
グラスワイン550円~
● 30席
http://polenta.jp
藤田アキ=取材、文 三國賢一=撮影
本記事は雑誌料理王国261号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は261号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。