ピクルスや生のカラフルな蕪、焼いた熊野牛のフィレの上にたっぷりと自家製柚子胡椒をのせ、赤ワインソースをかけて仕上げる、ギョームシェフのシグネチャー。今回は柚子胡椒が一層まろやかでフルーティに。
5年ほど前から独学で作り始めたという柚子胡椒、この度梅原シェフから、大分の柚子胡椒作り名人の神谷禎恵さんを紹介してもらい、10月に実際に訪問。苦味を出さず、香りの良い柚子胡椒の作り方を伝授してもらうことに。木で完熟した柚子を使い、時間が経つにつれて苦味の元になる柚子果汁をあまり使わないこと、皮をすり下ろす前の段階で、一度50度位のお湯にくぐらせて香りを立てるなど、様々な技法を教えてもらったそう。自家製だからこそ、塩分調節もでき、通常14%の塩分量のところを12%に抑え、赤ワインソースとの相性抜群の、えぐみが少なくとてもフルーティな柚子胡椒が完成。
こだわりの赤ワインソースは、南仏のオーガニックのピノ・ノワールを使って。合わせる赤もピノノワール。ジュヴレイ シャンベルタン ラ ジュスティス、ルネ ブーヴィエ。ティーペアリングは、枝付きレーズンを漬け込んだプーアル茶で、さっぱりとしつつも、ほんのりと果実味を増し、少しマディラ酒のようなニュアンスを持つお茶に。
土鍋ご飯に、菜の花と細切りの昆布を混ぜ込んで。
菜の花は、軸は旨味があるので昆布締め、辛みのある花は辛子和え、葉は素揚げにするなど、仕立てを変えてそれぞれの部分の個性を生かしている。
留椀の味噌汁の中のあおさの海の旨味と菜の花の山の旨味が重なる組み合わせ。ティーペアリングは、温かい番茶。摘んでから3年熟成した静岡の3年熟成番茶。
また、今回もう一つ興味深かったのが、エストのミケーレ・アッバテマルコシェフと、八雲茶寮の和菓子職人、岩田大二郎さんとのデザートのコラボレーション。
なかなか目にすることのない和菓子作りの工程を知ってもらいたいと、あんこを目の前できんとんにする。中心は粒あんで、周りには、上質な白小豆100%で、精製した砂糖ではなく、含蜜糖のみを使った白餡に、酒粕を練り込み、大島桜の葉を刻んで作った桜餡を纏わせる。そんな手捌きも見どころの一つ、そして目の前で作られた出来立てのふんわりとエアリーな食感は特筆ものだ。
一方、ミケーレシェフは三つ巴の形の求肥に千葉産のサフランのホイップクリーム、かりんとグレープフルーツのゼリー、ー、レモンクリームを閉じ込め、玄米のパフ、グレープフルーツの皮のコンフィ、ディルとカカオニブを散らし、発酵ライスミルクのクリームのドットで、きんとんの余韻にリンクさせる。
サイドには、エルダーフラワーアイスに日本の高知のベルガモットの皮を散らした。
京都を訪れ、餅とも違う求肥の食感に魅せられたというミケーレシェフは、八つ橋を発想の源に、クリームと求肥を一度に食べられるこの形を生み出したという。
食後の小菓子はミケーレシェフによるもので、今回のコラボレーションのために作られた、抹茶とチョコレート、栗のクリームのタルトと、カモミールのクリームとかりん、アカシア蜂蜜、エルダーフラワーのムースにビーポレン、マリーゴールドとアリッサムの花を飾ったもの。