多様な食材を引き立てるヨーロッパ伝統の滋味 グラナ・パダーノPDOの実力 26年4月号


500種類以上ともいわれる多彩なヨーロッパ・イタリア産チーズのなかで、リストランテから家庭の食卓まで幅広く愛されているのが、グラナ・パダーノPDO。イタリア修業時代からを愛用する「ヴォーロ・コズィ」の西口大輔さんに活用法と魅力を教えていただく。

北イタリアの特定地域が生み出す、料理に奥行きをもたらすヨーロッパの至宝

イタリア北部のロンバルディア州、ヴェネト州、エミリア・ロマーニャ州、ピエモンテ州、トレンティーノ=アルト・アディジェ州の5地域を原産地とするグラナ・パダーノPDOは、厳選された生乳を部分的に脱脂したものを原料とし、伝統的な製法で作られる硬質チーズ。同国でNo.1の生産量を誇り、2024年の生産量は約21万9259トン。輸出量とともに過去最高を記録した。ドイツ、フランスなど欧州市場の人気が高い一方で、日本でも徐々に人気が高まっている。

その高い品質、伝統的な食材としての優位性の保護、生産者と熟成業者の統括などを行うグラナ・パダーノチーズ保護協会は、日本市場での人気拡大を受けて、「Happiness from Europe – ヨーロッパから届く幸せ」キャンペーンを展開している。

今回、料理人を対象に山手調理師専門学校(東京・深沢)で行われたセミナーでは、チーズプロフェッショナル協会顧問の佐藤優子さん、グラナ・パダーノPDO歴30年以上の西口大輔シェフが登壇した。佐藤さんの講義では、10カ月、16カ月、20カ月熟成のグラナ・パダーノPDOの食べ比べをしつつ、歴史、伝統的な製法、味わいの特徴などが紹介された。

「グラナ・パダーノPDOは、マイルドな味わいが特徴ですが、熟成期間によって、風味や食感が変化していくのも楽しみです。9~14カ月は、水分が多めでミルキー、軽やかな味わい。16~18カ月は、穏やかなコクが出てドライフルーツのような香り。名前の由来となったざらっとした質感、粒状の結晶が顕著になるのもこの頃です。20~24カ月熟成のものはリゼルヴァと呼ばれ、より濃厚で豊かな味わいになります」と佐藤さん。

「グラナ・パダーノPDOは主張しすぎず、アレンジがしやすい、料理人に優しいチーズ」という西口さんは、ラヴィオリや、ホタテ貝と合わせた前菜、季節の野菜をグラナ・パダーノPDOのソースで食べるフォンデュを実演で紹介。
「ホタテは、優しい甘みを生かしたかったのでグラナ・パダーノPDOの12カ月熟成を。牛乳に浸けて塩味を抜き、食感を柔らかくすることで、ホタテとより一体感が出ます。チーズを浸けた牛乳は、ラヴィオリ用のポレンタを炊くときに使い、ほのかな風味を加えています。フォンドゥータのソースは、20カ月熟成のしっかりした味わいをそのまま生かしました」

ポレンタとグラナ・パダーノPDOチーズのラヴィオリ
グラナ・パダーノPDO(12カ月熟成)と生クリームで仕立てたガナッシュとポレンタを詰め物にして、マイルドでミルキーなチーズの香りと風味、深みのある味わいを打ち出した。仕上げにグラナ・パダーノPDOとバターを合わせたソースを絡め、スライスしたグラナ・パダーノPDO(16カ月熟成)、黒トリュフも添えて重層感を出している。
グラナ・パダーノPDOチーズのフォンドゥータ
18カ月熟成のグラナ・パダーノPDOを溶かしたソースで、ラディッキオ、アーティーチョーク、セルフィーユの茎など季節の野菜を楽しむチーズフォンデュ。グラナ・パダーノPDOのパウダーを沸騰した生クリームで溶かし、塩、黒コショウ、白トリュフオイルで味を調えたソースは、熟成感と穏やかなコク、ほどよい塩味があり、野菜のフレッシュ感、自然な味わいを引き立てる。
ホタテ貝とグラナ・パダーノPDOチーズのファゴッティーニ
薄くスライスし、牛乳に浸したグラナ・パダーノPDO(12カ月熟成)の軽やかなうま味と、ホタテ貝の甘み、香ばしさとの一体感を味わうひと皿。グラナ・パダーノPDOは、牛乳に浸すことで適度に塩分が抜け、しっとりとやわらかい食感になる。ホタテ貝と重ねてオーブンで短時間焼き、ホタテにチーズをまとわせるような状態に仕上げ、酸味のアクセントとして赤ワインソースを添えた。

コースの場合は、熟成期間が短いものを前菜など軽やかな料理に、熟成期間が長いものはメインに使うなど、緩急をつけるのがポイントだという。「郷土料理の集大成、地中海料理らしさの表現として、同じ地域の食材を合わせることも大切にしている」という西口さん。ヨーロッパ・北イタリアの至宝、グラナ・パダーノPDOの実力が存分に伝わったセミナーとなった。

東京・文京区の隠れ家レストラン ヴォーロ・コズィの西口大輔シェフに聞く

「グラナ・パダーノPDOは僕の料理に欠かせない“食材”」

食材の個性と寄り添い一体感のある味わいを生み出す

僕がグラナ・パダーノPDOの存在を初めて知ったのは、30年以上前のこと。修業のために訪れたヴェネツィアのレストランで、魚介のリゾットにグラナ・パダーノPDOを合わせているのを見て、驚きました。

というのも、その当時はまだ、魚介とチーズを合わせるのは邪道とされており、僕自身も、個性の強いチーズは繊細な魚介の風味を生かすのに適していないと思い込んでいたからです。

ところが、リゾットを食べて認識が180度変わりました。グラナ・パダーノPDOの優しい風味と穏やかな塩味が加わることで、食材それぞれの味わいが際立ちつつ、一体感のある一品になっていたから。他のチーズでは生み出せない魅力を感じました。

それ以来、料理に使うチーズは100%グラナ・パダーノPDO。賄いも、ポレンタの上にグラナ・パダーノPDOを削ってオリーブオイルをかけたものを食べていたくらい、グラナ漬けの日々でした(笑)。そんな経験からグラナ・パダーノPDOの魅力に引き込まれ、それ以降、僕の料理に欠かせないものになったのです。お店で提供するコース料理も、ストゥッツキーノ(小皿料理)からドルチェまで、さまざまな形で取り入れています。

グラナ・パダーノPDOは、風味がまろやかで個性が強すぎないので、魚介、野菜など、繊細な味わいを大切にしたい食材ともよく合う。いわゆるテーブルチーズではなく、〝食材として〟使うことで実力を発揮するのが最大の特徴だと思います。

10カ月から24カ月まで、熟成度によって味わいや深みが変化するので、食材や料理に合わせて使い分けることで、バラエティに富んだ一品が生み出せます。

「リストランテ ヴォーロ・コズィ」 オーナーシェフ
西口大輔 にしぐちだいすけ

「カピトリーノ」吉川敏明氏のもとで修業を始め、’93年渡伊。ミラノの「サドレル」ではパスタシェフに。’96年帰国後、「ブォナ・ヴィータ」のシェフを務めた後、2000年に再び渡伊。ロンバルディア州の「ロカンダ・ヴェッキア・パヴィーア」にて5年間シェフを務めて帰国後、2006年に現店を開業。

Volo Cosi ヴォーロ コズィ
東京都文京区白山4-37-22
TEL 03-5319-3351
12:00~13:00(L.O.) Close 15:00
18:00~20:00(L.O.) Close 22:00
月・火休

プロの料理人が学ぶグラナ・パダーノPDOの基礎知識

北イタリアのパダーノ平原地域で12世紀に生まれた
「粒状(グラナ)」のチーズはPDO(原産地名称保護)が目印。

グラナ・パダーノチーズ保護協会は、欧州連合(EU)の協力のもと2025年より3年間にわたり、日本市場を対象として「Happiness from Europe – ヨーロッパから届く幸せ」と銘打った大規模プロモーションキャンペーンを展開している。

その一環として、1月19日(月)にプロの料理人に向けた「グラナ・パダーノPDOチーズセミナー」が山手調理師専門学校(東京・深沢)で開催された。セミナーでは、チーズプロフェッショナル協会顧問の佐藤優子さんによる、グラナ・パダーノPDOの歴史と基礎知識の講義、熟成度の異なるグラナ・パダーノPDOの食べ比べ、西口大輔さんによるグラナ・パダーノPDOを使った料理の実演と試食が行われた。

グラナ・パダーノPDOは、ヨーロッパ・北イタリア原産の牛乳を原料としたハードチーズで、円筒型(ホイール)で熟成される。1135年頃にポー川流域にある修道院で作られて以来、約9世紀の歴史を持つ。ポー川流域のパダーノ平野で作られていたこと、表面がザラザラして粒状の質感があることから、パダーノのグラナ(粒状の)チーズという意味で「グラナ・パダーノ」と呼ばれるようになった。

現在、ヨーロッパ・イタリアでNo. 1の生産量を誇るグラナ・パダーノPDO。厳選されたイタリア産の生乳を半脱脂したものを使い、伝統的な製法で作られ、9カ月~24カ月熟成されることで豊かな風味が生まれる。長い歴史を持つ伝統のグラナ・パダーノの品質や個性を維持し、保護するため1996年にはPDO(原産地名称保護)の認証を受けた(下が認証マーク)。

佐藤優子さん
チーズプロフェッショナル協会 顧問

日本初のチーズのウェブサイト「ゆうこチーズNET」を開設。ヨーロッパ、各地のチーズ生産現場を訪ねるほか、チーズプロフェッショナル協会設立時より理事を務める(2021年より顧問)。著書に『日本のナチュラルチーズ』(虹有社)がある。

本プロモーションは欧州連合の共同出資により運営されています。しかし、記載された見解および意見は著者個人のものです。必ずしも欧州連合または交付機関の見解を反映するものではなく、欧州連合および交付機関はそれらにいかなる責任も負いません。

text : Nobuko Minagawa photo : Hiroyuki Takeda

3,000記事以上 会員限定記事が読み放題 無料会員登録

SNSでフォローする