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パルミジャーノ・レッジャーノの魅力と酒肴ビアペアリング

パルミジャーノ・レッジャーノの魅力と酒肴ビアペアリング

パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会は6月2日、ジャパンビアソムリエ協会会長の山上昌弘氏を講師に招き、「パルミジャーノ・レッジャーノの魅力と酒肴ビアペアリング」というセミナーを行った。
様々な熟成期間のパルミジャーノ・レッジャーノにそれぞれ異なるスタイルのビールを合わせることで、その多様性や懐の深さを掘り下げる。

パルミジャーノ・レッジャーノとは?

「イタリアチーズの王様」と称されるパルミジャーノ・レッジャーノは、北イタリアの限られた地域のみで作られる。その名の通りパルマとレッジョが中心だが、その範囲はロンバルディア州にまでおよび、ポー川とアペニン山脈に挟まれた共通の土壌や気候、微生物相を持っている。この地域では乳酸菌に富んだ風味豊かな牧草が自然と育まれる。牛たちは限定生産地域内の牧草を乾燥させた干し草を食べ、サイレージなど発酵飼料を与えることは禁止されている。それによって生乳に含まれる、この土地特有の微生物の働きを活かすために加熱殺菌は行わず、新鮮な生乳、塩、天然の凝乳酵素だけで添加物や保存料などは一切使わずに作られるのがパルミジャーノ・レッジャーノだ。

このように地域固有のもので、「パルメザン」というパルミジャーノの英語読みが日本では一般名称化してしまっているが、この名で呼ばれる米国製や日本製の粉チーズは全くの別物だ。

左上から反時計回りに、パルミジャーノ・レッジャーノの皮を加熱してポップコーンのようにしたもの、12カ月熟成、24カ月熟成、36かk月熟成、枝豆とパルミジャーノ・レッジャーノ、そして「パさんぼん」!?
左上から反時計回りに、パルミジャーノ・レッジャーノの皮を加熱してポップコーンのようにしたもの、12カ月熟成、24カ月熟成、36か月熟成、枝豆とパルミジャーノ・レッジャーノ、そして「パさんぼん」!?

今回の「パルミジャーノ・レッジャーノの魅力と酒肴ビアペアリング」セミナー、最初に登場したのは、パルミジャーノ・レッジャーノの皮を電子レンジで加熱してポップコーンのようにしたスナックと、ドイツのノンアルコール・ビール、「エルディンガー・アルコールフリー」だ。

皮は硬くて食べにくいが、旨味をたっぷりと含んでいるのでスープに入れてその旨味を抽出するというのは、フードロスへの意識の高まりに伴って、パルミジャーノ・レッジャーノを余すことなく使い切るための方法としてだいぶ見られるようになってきた。しかし、電子レンジで加熱するだけでこんなにサクッとした軽い食感になるというのは、ほとんど知られていないのではないか。

ノンアルコール・ビールとの組み合わせは「軽さのペアリング」。ビールの軽さにチーズの皮の食感が同調し、余韻の短いビールの旨味をチーズが後から追いかけてくる。ノンアルコール・ビールの、ある種の物足りなさを、パルミジャーノ・レッジャーノが見事に補ってくれる形となっていた。

「エルディンガー・アルコールフリー」
「エルディンガー・アルコールフリー」

続いては12カ月熟成のチーズにベルジャンホワイトスタイルのイタリアのクラフトビール「バラデン イザック」を合わせる。

12カ月という、規定上もっとも短い熟成期間のパルミジャーノ・レッジャーノは、芳醇さよりもミルクのフレッシュ感やなめらかで弾力のある食感が特徴。このようなチーズには、オレンジピールやコリアンダーのような爽快感のある香りを持ったビールがよく合う。苦みが穏やかでフルーティーな味わいが同じような特徴を持つ若いパルミジャーノ・レッジャーノによく相乗していた。

「バラデン イザック」のみ、彼らが開発したTEKUグラスで提供された。
「バラデン イザック」のみ、彼らが開発したTEKUグラスで提供された。

3つ目は一番標準的な熟成期間といえる24カ月のパルミジャーノ・レッジャーノ。順に食べていくとわかりやすいが、フルーティーさもオレンジなど柑橘のようなフレッシュ感からバナナやパイナップルなどトロピカルフルーツの要素が増し、バターのようなコク、ナッツやスパイスのような香りの複雑さも帯びてくる。アミノ酸が結晶化した白い斑点のシャリッとした食感もこの辺りから出て来る。

これに合わせたのは、濁りのあるヘイジーIPAスタイルの日本のクラフトビール、伊勢角屋麦酒の「ねこにひき」だ。果実味のある柔らかな口当たりから切れていく余韻の苦みに重なってくるチーズのコク、そしてチーズのフルーティーさに次の一口のビールが重なってさらに相乗する。

そんなループが起こるのも、様々な要素をバランスよく内包する24カ月熟成のパルミジャーノ・レッジャーノならではだ。

伊勢角屋麦酒「ねこにひき」
伊勢角屋麦酒「ねこにひき」

ここでもう一つ、小さめに砕いたパルミジャーノ・レッジャーノ24カ月熟成と枝豆を、山椒とオリーブオイルで和えた一口前菜が。洋のチーズに和の枝豆、と思いがちだが、イタリアでは空豆などをチーズと一緒に食べるのが普通に見られることを思うと、何ら不思議な組み合わせではない。さらにチーズに合う食材としてキュウリが提案されていたが、これもズッキーニの近縁と思えば相性が悪いはずがないものだ。

「いやいや、枝豆じゃなく空豆でなければ」「キュウリなんて代替でなくズッキーニを」という「本物志向」の声もあるかもしれないが、そんな細かい差異も受け止めるのがパルミジャーノ・レッジャーノの懐の深さであり、「イタリアチーズの王様」と称される由縁だ。さらに、フードフレンドリーなビールがあれば間違いない。

パルミジャーノ・レッジャーノの魅力と酒肴ビアペアリング

4番目のペアリングは、36カ月熟成のパルミジャーノ・レッジャーノと、芳醇で麦芽感の強いドッペルボック「アインガー・セレブレーター」。

熟成による旨味や出汁感、ナツメグなどのスパイシーな香り、ピリッとした辛みや塩味、結晶のシャリ感・・・そうした複雑に絡み合うたくさんの要素すべてを、コーヒーのようなロースト感、食後的な甘さと重さが包み込んでくれるようなペアリングだった。

「アインガー・セレブレーター」
「アインガー・セレブレーター」

さらに最後にデザートとして提供され、受講者たちの間でも特に反響の大きかったのが「パさんぼん」と、上質な抹茶を水で溶き一般的なピルスナースタイルのビールで割った抹茶ビールを合わせたペアリングだ。

「パさんぼん」は12カ月熟成のパルミジャーノ・レッジャーノに和三盆を振りかけたもので、今回のセミナーの資料では「パサンボン」や「PASANBON」と表記されていたが、ここではあえて「パさんぼん」と書きたい。

味わいは上品な和三盆の甘さにチーズのミルキーさや塩味が加わり、どこか塩キャラメルのよう。甘み、塩味、そして抹茶ビールの苦みがリレーする楽しさがある。

ここで大事なのは、パルミジャーノ・レッジャーノをきちんと常温に戻すこと。これは、このチーズを普通に割って食べる場合でも重要なポイントだが、冷え冷え、カチカチのままでは和三盆の柔らかな甘さと調和せず、デザートとして求められるなめらかさ、クリーミーさとも乖離してしまうだろう。

「パさんぼん」と抹茶ビール
「パさんぼん」と抹茶ビール

パルミジャーノ・レッジャーノは、北イタリアのごく限られた地域のみで、1000年にも及ぶ伝統に則した作り方で作られ、パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会の厳しい審査に合格したものしかその名を名乗れないように、非常に厳格に規定されたチーズである。ともすればこの味、この食べ方、のように細かく制限されてレンジが狭くなりかねないが、実際にはその真逆で、イタリアチーズの王様と呼ばれるように文字通り王道的な味わいで、食材やドリンクを問わず何にでも合わせることができる。

さらに熟成期間の違いや、今回のセミナーでは触れられなかったが、赤牛や白牛など牛の品種の違い、狭い生産地域の中でも山側なのか川側なのかといったテロワールの違いでその味わいは多様に広がり、同様に多様性とフードフレンドリーで気づいたら杯が進んでしまうようなドリンカビリティを持つクラフトビールとなら、様々な楽しみ方が自由自在に交差する。そんなことが確認できたセミナーだった。

パルミジャーノ・レッジャーノの魅力と酒肴ビアペアリング

text:小林 乙彦(料理王国編集部)

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