汝らは、この世界で許され、良いものを食べなさい
コーラン第2章 アル・バカラ章 第168節
ハラールとは「許されたもの」という意味。神であるアッラーが、コーラン(教典)の中で禁じているものを避けることは、ムスリムにとって厳格な務めだ。食においてもこの義務があり、イスラム法で合法と認められた食物だけが、ハラール・フードと呼ばれる。
マレーシアやインドネシアの東南アジア、そしてドバイなど中東のムスリム圏で、日本食の人気が安定して高まっている。「本場の日本で、おいしいものが食べたい」と願望するムスリムが増えているのも自然のことだ。しかし、アッラーの教えを厳格に守るムスリムは、イスラム法(シャリーア法)に認められた「ハラール・フード」しか口にできない。お金と時間をかけ、期待して訪れた日本で、わくわくするほど食の選択肢がないのが現状だ。
ハラールとはアラビア語で「許されたもの」という意味。服装から医薬品、金融などまで、生活全般にわたってハラールが定められている。食生活においても、豚肉やアルコールなどを含む食材や加工食品は御法度。それらを製造したり調理する工程にまで、ハラールの考えに従い寄り沿うことが義務づけられている。
ハラールの基本1
自身の喜びのためだけに飲食することは許されない
→ 飲酒の禁止など
ハラールの基本2
不純・危険なものを食べてはいけない
→ 豚、犬および、それらの子孫の食肉の禁止など
ハラールの基本3
動物を苦しめてはいけない
→ ハラール法による屠殺など
もっとも苦しまない方法で屠殺する
可能な限り血(ナジス)を抜くことが重要という考え方から、生きた家畜の声門(喉仏)の真下の、気管・食道・頸動脈・頸静脈の4つが交わる箇所を一気に切り、血液は自然に落下させる。食肉処理はムスリムしか行えない。非ムスリムの場合はハラールとは認められない点に注意。
すぐに役立つハラール用語集
【ハラール】許されたものや行為のこと。合法的な屠殺、食材、調理プロセスが対象となる。
【ハラーム】 違法なもの。ハラームの食を口にすることはすべてのイスラム教徒に禁止されている。
【シェブハ】 アラビア語で「疑わしいもの」。ハラールかハラームか不明なので、忌避される。
【ムスリム】 アラビア語で「神に帰依する者」。アッラーを神とするイスラム教徒のこと。
【シャリーア法】 国王または州の統治者が承認したイスラム法のこと。イスラム法と同義と考えてよい。
【トイバーン】 清潔でクオリティの高い「物」や「事柄」をさす。ハラールのコンセプトのひとつ。
【ナジス】 犬や豚、汚染されたハラール食品、血液、アルコールが混入している飲料などを指す。
横田典子=取材、文 星野泰孝=撮影
本記事は雑誌料理王国第251号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第251号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。